表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第三章、人々の暮らし
89/206

王の帰還

ジェフリーサイドは、あと数話掛かりそうです。

その後は、マルスサイドの予定です。





「困りましたね」

「うむ」


 ジェフリーとアレックスは、魔物の死体の前で話しあっていた。



「まあ、あのまま王にしておくのは出来なかったですし、正直に見せてはどうです? あの議会のあとですし、何とかなるでしょう」


「そうですね」

「うむ、仕方ないか」


 そんなことを言いつつ、アレックスとジェフリーは仁を見詰めた。


「分かりました。 私が斬ったのですし、『勇者』は引き受けますよ。 ですが、顔と名前は出さない様にして下さいね」


 二人の視線を受けて、致し方ないと『勇者』役を渋々と引き受けると、仁は背中を向けた。


「おお! 助かった。 早速、大臣供を集めよう」

「流石ですな、ここぞという時の『勇者』様ですからな。 ハッハッハ」


 ジェフリーは高笑いあげ、アレックスは大臣達の招集をせよと人を奔らせる。



 この日の夜は、上を下への大騒ぎとなり、朝方まで騒動の話で掛かり切りとなった。



 ◇ ◆ ◇



 大臣達との協議の結果、エルトランド王『アルフレッド陛下』の崩御を公表する事となった。


 揉めたのは、次の王になる筈のアレックスが、王になることを辞退した事だった。


 大臣全員がそれを止めようとしたが、飄々とするアレックスに丸め込まれ、誰もが諦めてしまったのであった。



「困りましたな」

「如何する、このままでは『国として』成り立たないのでは?」

「王が魔物であったなどと、いえる訳なかろう。 どうやって公表為るかが問題なのだ」


 王の崩御を公表するにも、アレックスが継承を辞退したことで、事態が悪化していた。


 そんな彼等の話をぶった切る言葉が、仁の口から放たれた。


「ジェフリー様、あの(つるぎ)を使う時です。 それで一気に、王位継承をしてしまいましょう」


「ま、まさか『王者(おうじゃ)(つるぎ)』ですか? ちょっと待って頂きたい。 それは父上からの……、あっ」


 ジェフリーは己の失言に気付き口を噤んだが、時すでに遅しであった。

 ジェフリーの言に食い付き、大臣達が詰め寄ってくる。


「ジェフリー様、『王者の剣』とは何ですか? カルロス陛下の遺産でしょうか?」


「うっ、それは、父上のではなく、()()()殿から頂いたものでな、その……」


「ええ、私がジェフリー様に授けた、古代勇者の証である『王者の剣』は『神剣(かみのつるぎ)』でもあります」


 仁の言葉の中に、光明を見出した大臣達はこぞって賛同しだす。


「おお、ならば神のお墨付きと云うことであるな」

「なるほど、それで行きましょうぞ」


 筋書きは整えられ、翌日には『アルフレッド陛下、崩御』の公表が決定された。


 だが、ただひとつの誤算は、先代の王カルロスの生存が大臣達にバレてしまい、もうひと悶着起きた事であった。



 ◇ ◆ ◇



 『アルフレッド』崩御の報せは、各地になされ、人々は歓喜し、また安堵をもたらした。


 圧政で、人々の暮らしは疲弊をきたしていたので、尚更の事でもあった。


 当座を凌ぐことは出来たが、次の手を打つべく仁は奔走していた。


 なにせ、金が無い、物が無い、人が居ないの無い無い尽くしであるので、使える物は何でも使えと、王城へとカルロスを迎える事となった。



「おお、カルロス陛下、生きてお会い出来るとは、夢ではないのですね……」

「うぅ、誠に……、うぅ……」


 先王陛下、カルロスに仕えていた大臣達は泣き崩れていた。


「「「カルロス陛下、万歳!!」」」

「「「神の使徒、勇者様、万歳!!」」」


 謁見の間のみならず、王城に詰め掛けた近習達も、カルロス陛下の帰還に歓びの声を張り上げていた。



 ◇ ◆ ◇



 ダンジョンの物資を王都に運び込み、王城からの放出と称して人々に分け与えた。


 王城側も物資の補給に安堵し、あとはカルロス陛下より、ジェフリーへの王位継承の儀式を執り行う為の支度をすべく動いていた。



「さて、あとはジェフリー殿下が王位継承をするだけですが、如何ですか?」


「んー、どうと言われても、本当に私で宜しいのですか?」


 仁に振られた問いを、カルロスに投げ掛けてしまう。


「今更なにを、お主しか居らんではないか、まったく……」


「んー、私としては、仁殿が相応しく思うのですが」


「私は無理ですよ、神々の試練中なので。 ですが、今後も支援はしていくので、何かあれば駆けつけますよ」


「うむ、仁殿には頭が下がる想いもあるが、出来ることは為なくては、この恩に報う事すら適わないのだ。 ジェフリーよ、いい加減覚悟を決めよ」


 カルロスの言葉を受けて、ジェフリーは決意を固める。


「分かりました、父上。 仁殿も、宜しく頼む。 私はまだまだ未熟であった。 だが、私にはこの国がある。 この国の人々の為にも、頑張らねばなりませんね」


「と、いうことで、これを頭に入れておいて下さいね」


 カルロスとジェフリーに、分厚い本が渡される。


「これは何の本です?」

「うむ、見事な装丁であるな」


 カルロスは、まじまじと装丁を眺めては感嘆している。


「それは神々から送られた、契約の書です。 この国が在る限り、神の加護を受けられるようにと、賜った物です」


「「な、なんと! 神の加護とな!?」」


 仁の説明で本を落としそうになりつつも、がっちりと捉え、再び本を眺める二人であった。




今週は、この投稿でお休みとさせて頂きます。

来週の投稿は、3月3日(日)0時の予定になります。

(※3/2.上記の投稿予定でしたが、体調悪化の為中止とさせて頂きます。申し訳ありませんが、よろしくお願いします)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ