王の帰還
ジェフリーサイドは、あと数話掛かりそうです。
その後は、マルスサイドの予定です。
「困りましたね」
「うむ」
ジェフリーとアレックスは、魔物の死体の前で話しあっていた。
「まあ、あのまま王にしておくのは出来なかったですし、正直に見せてはどうです? あの議会のあとですし、何とかなるでしょう」
「そうですね」
「うむ、仕方ないか」
そんなことを言いつつ、アレックスとジェフリーは仁を見詰めた。
「分かりました。 私が斬ったのですし、『勇者』は引き受けますよ。 ですが、顔と名前は出さない様にして下さいね」
二人の視線を受けて、致し方ないと『勇者』役を渋々と引き受けると、仁は背中を向けた。
「おお! 助かった。 早速、大臣供を集めよう」
「流石ですな、ここぞという時の『勇者』様ですからな。 ハッハッハ」
ジェフリーは高笑いあげ、アレックスは大臣達の招集をせよと人を奔らせる。
この日の夜は、上を下への大騒ぎとなり、朝方まで騒動の話で掛かり切りとなった。
◇ ◆ ◇
大臣達との協議の結果、エルトランド王『アルフレッド陛下』の崩御を公表する事となった。
揉めたのは、次の王になる筈のアレックスが、王になることを辞退した事だった。
大臣全員がそれを止めようとしたが、飄々とするアレックスに丸め込まれ、誰もが諦めてしまったのであった。
「困りましたな」
「如何する、このままでは『国として』成り立たないのでは?」
「王が魔物であったなどと、いえる訳なかろう。 どうやって公表為るかが問題なのだ」
王の崩御を公表するにも、アレックスが継承を辞退したことで、事態が悪化していた。
そんな彼等の話をぶった切る言葉が、仁の口から放たれた。
「ジェフリー様、あの剣を使う時です。 それで一気に、王位継承をしてしまいましょう」
「ま、まさか『王者の剣』ですか? ちょっと待って頂きたい。 それは父上からの……、あっ」
ジェフリーは己の失言に気付き口を噤んだが、時すでに遅しであった。
ジェフリーの言に食い付き、大臣達が詰め寄ってくる。
「ジェフリー様、『王者の剣』とは何ですか? カルロス陛下の遺産でしょうか?」
「うっ、それは、父上のではなく、サトシ殿から頂いたものでな、その……」
「ええ、私がジェフリー様に授けた、古代勇者の証である『王者の剣』は『神剣』でもあります」
仁の言葉の中に、光明を見出した大臣達はこぞって賛同しだす。
「おお、ならば神のお墨付きと云うことであるな」
「なるほど、それで行きましょうぞ」
筋書きは整えられ、翌日には『アルフレッド陛下、崩御』の公表が決定された。
だが、ただひとつの誤算は、先代の王カルロスの生存が大臣達にバレてしまい、もうひと悶着起きた事であった。
◇ ◆ ◇
『アルフレッド』崩御の報せは、各地になされ、人々は歓喜し、また安堵をもたらした。
圧政で、人々の暮らしは疲弊をきたしていたので、尚更の事でもあった。
当座を凌ぐことは出来たが、次の手を打つべく仁は奔走していた。
なにせ、金が無い、物が無い、人が居ないの無い無い尽くしであるので、使える物は何でも使えと、王城へとカルロスを迎える事となった。
「おお、カルロス陛下、生きてお会い出来るとは、夢ではないのですね……」
「うぅ、誠に……、うぅ……」
先王陛下、カルロスに仕えていた大臣達は泣き崩れていた。
「「「カルロス陛下、万歳!!」」」
「「「神の使徒、勇者様、万歳!!」」」
謁見の間のみならず、王城に詰め掛けた近習達も、カルロス陛下の帰還に歓びの声を張り上げていた。
◇ ◆ ◇
ダンジョンの物資を王都に運び込み、王城からの放出と称して人々に分け与えた。
王城側も物資の補給に安堵し、あとはカルロス陛下より、ジェフリーへの王位継承の儀式を執り行う為の支度をすべく動いていた。
「さて、あとはジェフリー殿下が王位継承をするだけですが、如何ですか?」
「んー、どうと言われても、本当に私で宜しいのですか?」
仁に振られた問いを、カルロスに投げ掛けてしまう。
「今更なにを、お主しか居らんではないか、まったく……」
「んー、私としては、仁殿が相応しく思うのですが」
「私は無理ですよ、神々の試練中なので。 ですが、今後も支援はしていくので、何かあれば駆けつけますよ」
「うむ、仁殿には頭が下がる想いもあるが、出来ることは為なくては、この恩に報う事すら適わないのだ。 ジェフリーよ、いい加減覚悟を決めよ」
カルロスの言葉を受けて、ジェフリーは決意を固める。
「分かりました、父上。 仁殿も、宜しく頼む。 私はまだまだ未熟であった。 だが、私にはこの国がある。 この国の人々の為にも、頑張らねばなりませんね」
「と、いうことで、これを頭に入れておいて下さいね」
カルロスとジェフリーに、分厚い本が渡される。
「これは何の本です?」
「うむ、見事な装丁であるな」
カルロスは、まじまじと装丁を眺めては感嘆している。
「それは神々から送られた、契約の書です。 この国が在る限り、神の加護を受けられるようにと、賜った物です」
「「な、なんと! 神の加護とな!?」」
仁の説明で本を落としそうになりつつも、がっちりと捉え、再び本を眺める二人であった。
今週は、この投稿でお休みとさせて頂きます。
来週の投稿は、3月3日(日)0時の予定になります。
(※3/2.上記の投稿予定でしたが、体調悪化の為中止とさせて頂きます。申し訳ありませんが、よろしくお願いします)




