暴走する王
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王城の騒動か落ち着き始めた頃、ジェフリーの登城に合わせて、仁達も王都へと来ていた。
「仁殿、本当に兄上達はこのままで良いのか?」
「ええ、既に国としての機能は在りませんし、呪いも解けて正常に戻りつつあります。 問題なのは王城にしがみ付き、未だに居座ろうとしているバカが多いくらいです。 真面な人々は去りましたし、放置で構いません」
「そうか、仕方ないとはいえ、兄上達も哀れですな」
「まあ、これも魔神共の画策ですし、色々と足りないモノが在るとしか云えませんね」
「なるほど、先ずはその足りないモノを取り戻さねばな」
「では、行きますか」
「うむ、よろしく頼む」
仁はジェフリーと共に、登城することを決意した。
◇ ◆ ◇
今回の登城は、数カ月ごとにある定例議会への出席の為である。
『元王妃、行方不明事件』の為ではない。
あくまでも、定例議会出席の為である。
仁もその護衛として、付き従う為の登城であった。
「では、ここでしばらくお待ちを」
場内に入り案内されたのだが、どう見ても食堂であった。
「うーむ、これは酷いな、待合室ですら無いとはな」
「まあ、案内の方も、どう見ても一般市民ですよね」
「うむ、この有様では、もう長くはないな」
入口付近で食堂内を見渡すジェフリーと仁は、あり得ない光景を目にしていた。
各領地から登城してきた領主らしき貴族や、その供回りと思わしき者達で溢れかえり、中には罵りあう者達すら居るのである。
「ふぅ、兄上達は何をしているんだ?」
ジェフリーはその光景を目にして、呟くのだった。
◇ ◆ ◇
言うまでもなく、その日の定例議会は荒れに荒れた。
各々から対応を批判され、報告すら真面にしない王城側の不備に怒り、予定していた議論すら為れなかったのである。
そんな事もあり、議会は中止となり、その日は解散となった。
◇ ◆ ◇
議会の解散を告げた王は足早に去っていった。
その余りにも身勝手な対処に怒るジェフリーは、一言言おうと兄達を追っていく。
玉座の間で二人の兄を見つけ、ジェフリーが詰め寄った。
「王よ、これはどういう事ですか。 あれでは王として、人を束ねる事も出来ませんぞ」
「ああ、もうよい、聞き飽きたわ。 というか、お前まだ居たのか。 帰らずに、文句を言いに来るとはな、揚げ足取りだけは一人前になったな。 謀反人のガキが……」
「兄上?」
「な、なんだと!」
「へぇ、エルトランド王とは、ここまでの戯け者だったとは」
激昂するジェフリーを押しのけ、アルフレッドの前に立った仁は言い放つ。
「なんだ貴様は? そこの謀反人を庇うので在れば、お前も同罪なのだぞ?」
「ほうほう、同罪とはどんな罪なのですか?」
煽る仁の言葉であるが、アルフレッドは気にせず、にやけた顔で語りだした。
「なんだ、そんなことも知らんのか、その愚か者はな、王になる私に嫉妬して、私や弟、王であった父にすら、毒を盛った謀反人なのだよ。 偶々、父が許し、辺境へと捨てたゴミなのだ!」
アルフレッドはしたり顔であったが、アレックスは眉をひそめる。
「くっ!!」
「ふーん、そんなでまかせで罪になるのか、ならこっちも、もう容赦は必要ないな」
仁の表情は消え、アルフレッドを見据えると、光の剣を取り出した。
「な、なんだその剣は!?」
次の瞬間、光の剣はアルフレッドの首を刎ねる。
「あ、兄上……、な、なぜ兄上が」
王の隣に居たアレックスだったが、その眼の先には別のモノが見えていた。
アルフレッドの首は床へと転がったが、その血は赤ではなく土気色した、泥であった。
「ふぅ、これは一からやり直しだな」
「まさか兄上は……」
兄だった死体を見て、ジェフリーは青ざめる。
「残念ですが、喰われた様です。 一応、捜索はしますが、もう手遅れですかね。 しかし、何処から侵入したのやら……」
アルフレッドは、パペットマンというモンスターと入れ替わっていたのだった。
「兄上が喰われたとは、どういう事だ! ジェフリー、何をしておる! そやつは何者だ!?」
事情が掴めず、激昂するアレックスであった。
◇ ◆ ◇
「な、なんだと……、母上は大丈夫なのか?」
ジェフリーは、今までに分かった事を掻い摘まんで説明をした。
「ふむ、アレックス様は意外にも、お優しい方なのですね」
「ええ、どことなくつかみ所がない兄ですが、優しい方です」
「処でジェフリーよ、その方は誰なのだ?」
「ああ、紹介を忘れてましたな。 この方は、サトシ殿といいまして、『神の使徒』であり『勇者』様なのです」
「おい! バラすんかい!」
仁のツッコミは空を切り、アレックスは驚愕した。
「か、神の使徒……、ゆ、勇者だと……」
2000文字に足りなかったのですが、切りよくすると、こうなってしまい悩みどころです。
書き足して、1900文字だったとかで、これ以上は(私も)ぐだってしまうので、お許し下さい。




