表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第三章、人々の暮らし
87/206

王城から去る人々

中々に難しく、ジェフリーサイドはまだまだ続きそうです。





「お…… なさい」


「ん、ん……、ん? ここは?」


 サリア・エルトランドは目覚めた。


 だが、目覚めた先は何処までも白く、それでいてガランとした空間であった。


 ただ、あるのは装飾された大きな机と椅子、そして、その前にある小さな机と椅子があるだけだった。



「サリア・エルトランド、これより貴方の査問を行います。 まずはお掛けなさい」


 サリアは何が起きてるか分からないまま、目の前にある椅子へと座った。


 よく見ると、目の前にはひとりの女性が座っていた。


(綺麗な女性(ひと)、でも誰も居なかったはず……)


「あの、ここは何処ですか?」


「ここは『精神と時の狭間』例えるならば、神域に最も近い場所です」


「わ、私は死んだのですか?」

「いえ、まだ生きてはいます。 ただ、現在の貴方の体は以前とは違い、直ぐに戻ることはおすすめ出来ません」


「えっ? それは……」



「理由なのですが、貴方はここ35年程、()()に取り憑かれていた上に、国や王族に対し謀反を行いました」


 サリアは、謂われの無い罪に怯えだす。


「な、何故そんなことを……、私は何も覚えてないのですが」


「分かっています。 ですので、今から貴方の査問を開始します。 正直に話すよう、お願いします。 もし、虚偽の類いを答えると、その分の量刑が増える場合があるので、気を付けて答えるように」


「えっ? は、はい……」


 サリアは、思わず返事をしてしまったが、未だに何が起きたのかも分からずにいた。


「では、『サリア・エルトランド』のエルトランド王国、『国王暗殺計画』に関する査問を開始します。 私は一級神ゼノスの娘、アリアです。 宜しくお願いします」


「はい……」

(いっきゅうしん……? いったい、何が起きてるの?)




 アリアは机に、事件に関する資料を揃えると、改めてサリアを観察する。


「何が起きているか、分からないとは思いますが、貴方は今の時点で、正直に答えるだけで良いのです。 焦らず、ゆっくり考えてから答えなさい。 良いですね?」


 微笑むアリアに諭され、サリアは少しだけホッとする。


「はい、ありがとうございます。 えっと、よろしくお願いします」


「では、始めます。 まずは……」


 こうして、サリ・エルトランドの『国王暗殺計画』に関する査問が開始されるのであった。



 ◇ ◆ ◇



 サリアが王城から居なくなり、3日が過ぎた。



「母上はまだ見つからんのか?」


「はっ! 全力で捜索をしておりますが、手掛かりすら掴めて居りません」


「バカもん!! 既に3日だぞ、貴様らは何をやっているんだ!」


 現国王アルフレッド・エルトランドは、兵士長を呼びつけ激昂していた。



 ◇ ◆ ◇



「どういう事だ、何故手掛かりすら掴めんのだ?」


「兄上、いい加減落ち着いて下さい。 こういう時こそ王として、威厳を保たねば、誰もが不安に成りますぞ」


 玉座の間でうろうろとするアルフレッドをアレックスが諫める。


「だがな、母上が居なくなった途端、叔父上も登城しない上に、近衛やメイド達も次々と辞めて居るんだぞ? 如何して落ち着けと言える? 警備も城内も、既に半数の人員が居なくなったんだぞ!」


 サリアが行方不明となり、ダニエルすら登城しなくなると、淫魔の()()が解けはじめ、正常に成りつつ在るのだが、それが分からずにいるだけである。


「そうですね。 いったい何が起きて居るのやら……」


 王城から人が次々と居なくなり、不安を募らせる()()と、呑気な王弟であった。



 ◇ ◆ ◇



 ダニエルの屋敷では、ここ数日間慌ただしくあった。


「まだか、早く支度をしろ、そして、ここから逃げるのだ」


 ダニエルは、夜逃げの支度を急がせていた。


「よし、必要な物はすべて積んだな。 では、行くぞ」

「あなた、これをどうぞ」


 ダニエルは急いでいたが、奥方から書状を渡された。


「なんだこんな時に……、これは?」

「離縁状です。 私はここに残りますので、あなただけでも何処へなりとも行けば良いのです」


「な、なんだと、お前までも儂を裏切るのか!」


 ダニエルは、奥方の歯に衣着せぬ言葉で激昂する。


「はあ……、そういう処が駄目なのです。 王妃どころか、メイドにまで手を出していたのは分かって居りました。 サリア様もお隠れになった事ですし、お父様にも帰ってこいと云われてますので、あなたとはここでお別れ致します」


 ダニエルは、痛いところを突かれ、奥方の離縁状を握り潰した。


「くっ…… お前たち行くぞ、出発だ! …………、どうした、早う馬車をださんか!」


 馬車に乗り込んだが、一向に動かず外を見ると、屋敷に長年仕えている執事が立っていた。


「旦那様、私共も奥様方について行く事になりましたので、ここでお暇させて頂きます。 長い間、有難う御座いました」


 老齢の執事だったが、背筋を正し過不足もない礼にて別れを告げた。


「なんだと! どいつもこいつも、儂を馬鹿にしおって! 誰がこの馬車を走らすのだ! くそっ! もうよい儂だけでも逃げ切って見せるわ!」


 御者台へ移ろうと、ダニエルが馬車から降りると、そこには見たことのある人物が待っていた。


「あんたは馬鹿ですか? 余計な行動をするなと、言ってあっただろう?」


 仁の姿を見て、ダニエルは竦み上がり、すべてを諦めた。


「す、済みませんでした……」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ