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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第三章、人々の暮らし
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王宮の謎

ジェフリーのターンは、もう少し続きます。



「本気なのか?」


 仁は肯き、ジェフリーを見つめる。


「私が王位に就くには、二人の兄を倒さねばならんのだぞ」


「その必要はありません。 彼等はじきに失脚します」


「は? あり得ないな、兄上達が失脚など、大臣共と騎士団が後ろに居る限りあり得んよ」


「そうですね。 ですが、ジェフリー様が王都を去り、何年経っているのですか? それに近年の物不足は何故起きているのでしょう? そして、お父上のご病気はいつからなのか、思い出した方が宜しいかと思いますが」


 仁の言葉で、ジェフリーには思い当たることがあった。


 王位継承問題は、先代である父上が病に倒れたことで始まり、大臣達が兄を担ぎ出したのが契機となり、王宮内での暗殺未遂事件が発生。

 そしてその嫌疑がジェフリーに掛かり、疑われた自分を父上が逃して(追放として)下さったのを思い出した。


 ジェフリーの追放から2年後、王位継承は長兄の『アルフレッド・エルトランド』が継ぐことになり、父上が亡くなったその年から物不足が始まったのである。



「ま、まさか、いやそんな筈は……」


 ジェフリーの呟きに、仁は答える。


「すべては国務大臣。 いや、この場合は宰相というべきですね。 貴方の伯父である『ダニエル・エルトランド』と、前王妃『サリア・エルトランド』による、先代の王である『カルロス・エルトランド』暗殺計画が発端となっています」


「な、何を言っている!! そんなバカな! 伯父上ならまだしも、何故継母(はは)上が、父上を殺さねばならんのだ!?」


「それは、現在の王である『アルフレッド・エルトランド』と、第二王子だった『アレックス・エルトランド』は、宰相『ダニエル』と王妃『サリア』の間に出来た子供だからです。 これは私のスキル『鑑定』の結果であり、彼等自身の口からも確認済みです」


 ジェフリーの顔は歪み、仁の言葉に憤りを感じた。


「はあ? な、なんという事だ。 よりにも寄って、兄上達が伯父上と継母上との不義の子だと云うのか!?」


「お怒りはもっともです。 信じられないのも判ります。 ですが、これは真実であり、貴方の母である『マリエル・カーラント』様も知ったが為に、王宮から追放となった事実なのです」


「なっ!…………、今、なんと……」


「貴方の母上で在られる『マリエル・カーラント』様も知ってしまい、王妃であった『サリア・エルトランド』に、暗殺され掛かったが為に、お父上が王宮から逃したのですよ。 さぞかし口惜しかったでしょうね。 貴方は『人質』として王宮に置かれたのですから」



 長年の謎で在った母の追放の真相が判明し、幼い日の記憶が蘇る。



「母上…… なんという事だ。 それで私を置いて出て行ったのですか。 ごめんなさい、母上。 知らなかったとはいえ、私は勘違いをして……」


 ジェフリーは膝から崩れ落ち、床に頭をこすり付けながら、涙を流していた。



 ◇ ◆ ◇



 数日後、仁はジェフリーに呼び出され、領主館の執務室で待機していた。


 しばらくすると、『王者の剣』を装備した、戦装束のジェフリーが入ってきた。


「待たせたな、これより王都へ出陣だ! 仁殿も来て貰うぞ、良いな」


「ちょっ!? ちょっとお待ちを、何故王都へ?」


 余りにもな展開で、仁は泡を食って質問をする。


「ん? 父上と母上の仇を討ちにいくに決まって居ろう?」


「はあ、ジェフリー様、先日も云いましたが、その必要は在りません。 彼等はあと数年で失脚しますよ。 お忘れですか?」


「ん? 仁殿に渡されたこの『王者の剣』で成敗すれば早かろう?」


「まあそうなんですが、今王都では長年の無理な徴税で、反乱が起きつつ在るのです。 行くだけで、火の粉を浴びる事になりますよ」


「なに!? 反乱が起こるのか? なら尚更この手で討たねば民に申し訳が立たないではないか!」


 仁とジェフリーの押し問答は続く。


「待って下さい。 ちゃんと話を聞いて下さい。 王都では、もう直ぐある噂が流れます」


「ん? なんの噂だ?」


「先王の死と、ジェフリー様も含め、王位継承の真実が、流される予定なんです」


「はあ? 何故その様な噂が流されるのだ!? 王家の恥ではないか!」


「それで良いのです。 その噂を聞けば、やがて王族の権威は落ちていき、民は争いよりも、ジェフリー様の元へとやって来ます。 というよりは、ここへ来させる予定なんですよ。 だから、ここに居て下さい。 良いですね?」


 ジェフリーは、仁の説得に疑問を抱いた。


「んー、どういう事だ? 何故そうなるのだ?」


「私の配下が王都で活動中なのです。 詳しくは後で説明しますので、先ずはその戦装束はお脱ぎ下さい。 お願いします」


「そ、そうか、分かった。 少し待っていてくれ」


 そう言って、ジェフリーは自室へと向かいながら、鎧のパーツをひとつずつ外しては、メイド達がそれを回収していく。


「やれやれ……」


 仁がやっとひと息いれると、家令のセバスチャンは礼を執る。


「済みません、ジェフリー様は昔からああいう処が在るのです」


「ハハ、中々の好人物ですよね。 おっと、これは失言ですね。 済みません」


 仁が頭を下げると、家令は首を横に振る。


「有難う御座います。 サトシ様、いえ、ヒトシ様のお陰で、若はご自分を取り戻せたようです。 私もあの様な若の顔を観れただけで、先王様に良い土産が出来ました」


「そうですか? でも、まだそれは早いですよ」


「はい?」


「フフ、その話はまた後でしますよ」


 仁の謎の言葉で、家令のセバスチャンは首を傾げたが、主人の元へと向かうのであった。




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