王宮の謎
ジェフリーのターンは、もう少し続きます。
「本気なのか?」
仁は肯き、ジェフリーを見つめる。
「私が王位に就くには、二人の兄を倒さねばならんのだぞ」
「その必要はありません。 彼等はじきに失脚します」
「は? あり得ないな、兄上達が失脚など、大臣共と騎士団が後ろに居る限りあり得んよ」
「そうですね。 ですが、ジェフリー様が王都を去り、何年経っているのですか? それに近年の物不足は何故起きているのでしょう? そして、お父上のご病気はいつからなのか、思い出した方が宜しいかと思いますが」
仁の言葉で、ジェフリーには思い当たることがあった。
王位継承問題は、先代である父上が病に倒れたことで始まり、大臣達が兄を担ぎ出したのが契機となり、王宮内での暗殺未遂事件が発生。
そしてその嫌疑がジェフリーに掛かり、疑われた自分を父上が逃して(追放として)下さったのを思い出した。
ジェフリーの追放から2年後、王位継承は長兄の『アルフレッド・エルトランド』が継ぐことになり、父上が亡くなったその年から物不足が始まったのである。
「ま、まさか、いやそんな筈は……」
ジェフリーの呟きに、仁は答える。
「すべては国務大臣。 いや、この場合は宰相というべきですね。 貴方の伯父である『ダニエル・エルトランド』と、前王妃『サリア・エルトランド』による、先代の王である『カルロス・エルトランド』暗殺計画が発端となっています」
「な、何を言っている!! そんなバカな! 伯父上ならまだしも、何故継母上が、父上を殺さねばならんのだ!?」
「それは、現在の王である『アルフレッド・エルトランド』と、第二王子だった『アレックス・エルトランド』は、宰相『ダニエル』と王妃『サリア』の間に出来た子供だからです。 これは私のスキル『鑑定』の結果であり、彼等自身の口からも確認済みです」
ジェフリーの顔は歪み、仁の言葉に憤りを感じた。
「はあ? な、なんという事だ。 よりにも寄って、兄上達が伯父上と継母上との不義の子だと云うのか!?」
「お怒りはもっともです。 信じられないのも判ります。 ですが、これは真実であり、貴方の母である『マリエル・カーラント』様も知ったが為に、王宮から追放となった事実なのです」
「なっ!…………、今、なんと……」
「貴方の母上で在られる『マリエル・カーラント』様も知ってしまい、王妃であった『サリア・エルトランド』に、暗殺され掛かったが為に、お父上が王宮から逃したのですよ。 さぞかし口惜しかったでしょうね。 貴方は『人質』として王宮に置かれたのですから」
長年の謎で在った母の追放の真相が判明し、幼い日の記憶が蘇る。
「母上…… なんという事だ。 それで私を置いて出て行ったのですか。 ごめんなさい、母上。 知らなかったとはいえ、私は勘違いをして……」
ジェフリーは膝から崩れ落ち、床に頭をこすり付けながら、涙を流していた。
◇ ◆ ◇
数日後、仁はジェフリーに呼び出され、領主館の執務室で待機していた。
しばらくすると、『王者の剣』を装備した、戦装束のジェフリーが入ってきた。
「待たせたな、これより王都へ出陣だ! 仁殿も来て貰うぞ、良いな」
「ちょっ!? ちょっとお待ちを、何故王都へ?」
余りにもな展開で、仁は泡を食って質問をする。
「ん? 父上と母上の仇を討ちにいくに決まって居ろう?」
「はあ、ジェフリー様、先日も云いましたが、その必要は在りません。 彼等はあと数年で失脚しますよ。 お忘れですか?」
「ん? 仁殿に渡されたこの『王者の剣』で成敗すれば早かろう?」
「まあそうなんですが、今王都では長年の無理な徴税で、反乱が起きつつ在るのです。 行くだけで、火の粉を浴びる事になりますよ」
「なに!? 反乱が起こるのか? なら尚更この手で討たねば民に申し訳が立たないではないか!」
仁とジェフリーの押し問答は続く。
「待って下さい。 ちゃんと話を聞いて下さい。 王都では、もう直ぐある噂が流れます」
「ん? なんの噂だ?」
「先王の死と、ジェフリー様も含め、王位継承の真実が、流される予定なんです」
「はあ? 何故その様な噂が流されるのだ!? 王家の恥ではないか!」
「それで良いのです。 その噂を聞けば、やがて王族の権威は落ちていき、民は争いよりも、ジェフリー様の元へとやって来ます。 というよりは、ここへ来させる予定なんですよ。 だから、ここに居て下さい。 良いですね?」
ジェフリーは、仁の説得に疑問を抱いた。
「んー、どういう事だ? 何故そうなるのだ?」
「私の配下が王都で活動中なのです。 詳しくは後で説明しますので、先ずはその戦装束はお脱ぎ下さい。 お願いします」
「そ、そうか、分かった。 少し待っていてくれ」
そう言って、ジェフリーは自室へと向かいながら、鎧のパーツをひとつずつ外しては、メイド達がそれを回収していく。
「やれやれ……」
仁がやっとひと息いれると、家令のセバスチャンは礼を執る。
「済みません、ジェフリー様は昔からああいう処が在るのです」
「ハハ、中々の好人物ですよね。 おっと、これは失言ですね。 済みません」
仁が頭を下げると、家令は首を横に振る。
「有難う御座います。 サトシ様、いえ、ヒトシ様のお陰で、若はご自分を取り戻せたようです。 私もあの様な若の顔を観れただけで、先王様に良い土産が出来ました」
「そうですか? でも、まだそれは早いですよ」
「はい?」
「フフ、その話はまた後でしますよ」
仁の謎の言葉で、家令のセバスチャンは首を傾げたが、主人の元へと向かうのであった。
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