冒険者本採用試験?
月日は流れ3年が経ち、マークは15歳となり成人した。
体格も良く、アレク達に仕込まれていたこともあり、同年代でマークに並ぶものは居ない程であった。
そして、冒険者見習いを卒業する為に冒険者ギルドにいるのだが
「マーク、そろそろ試験を始めるが準備はいいか?」
「はい、よろしくお願いします!」
冒険者ギルドの試験官である、ガイアが仁王立ちしていた。
だが、試験を受けるマークの顔は若干引き攣っている。
そして、外野にはアレク達も苦笑いをして見守っていた。
なぜギルドマスターであるガイアが、試験官をしているのかは、誰にも言えない訳があった。
ぶっちゃけると、ギルド職員全員が『彼を不合格にするのですか?』と完全にスルーされた事も公表できず、だがギルドとしてメンツの問題があるが故にこうなっただけである。
だが、始めると言ったガイアは腕を組み『どうすっかなぁ』とブツブツと呟いているだけであった。
戦闘技術や知識、経験とどれもがDランク冒険者並なので、する事もなく困っていたのだ。
因みに、冒険者ギルドの冒険者は、Eランクから始まりAランクまである。
Eランクは初心者でDランクは一般人、Cランクで一人前でBランクで、やっと他国で活動ができるパスポートが貰え、Aランクになれば自他共に認める一流の冒険者として名を馳せることになる。
だが、この世界には『勇者』『魔王』『賢者』などの称号により、Sランク冒険者と呼ばれる者も居る。
それは、冒険の果てに神に出会い、称号を与えられた者のみが、呼ばれるランクである。
冒険者の見習いであるマークが、今回受ける試験とは、正規の冒険者となる為であり、Eランク冒険者として正式登録する為であった。
そして、そんなマークを見つめるガイアは、ふと思い付いた事を口にする。
「マークよ、一人で北のダンジョンに行ってこい。 そして、鉄鉱石を一つ採ってくるのだ」
試験官であるガイアは、そう言い放った。
「はい? 一人でですか?」
ガイアは腕を組み無言で頷いた。
「判りました……」
マークは試験内容を確認後、冒険者ギルドをでて、町の北門へと走っていった。
本来、一人でダンジョンへ入るのは危険なので誰もしない事だが、他に試験になりそうな事も無いので、ガイアは言ってみただけだった。
だが、マークがそれを鵜呑みにするとは、思ってもみなかったガイアは焦った。
「おいアレク!後を追え!」
ガイアの命令をアレクは了解し、直ぐさまマークの追跡を開始した。
それを見て満足したガイアだったが、その場の全員に白い目で見られてしまうのであった。
◇ ◆ ◇
北門を出たところで、このままだとマズいと思ったマークは立ち止まり、自宅がある方向へ走りだした。
そして自宅に到着し、リュックとアイテムポーチに、回復薬などを詰め込みダンジョンへと向かった。
それを見ていたアレクは、ほっとしたことは言うまでもなかった。
◇ ◆ ◇
マークは、ダンジョンに到着した。
そして徐に両手で己の顔を叩いて気合いを入れ、ダンジョンに入っていくのであった。
だが、アレクがその後ろ姿を監視していた事を、マークはまだ知らない。
マークの行動を見届け、立ち上がったアレクは周囲を見渡す。
「ん? なんだろう? 気のせいかな?」
アレクは違和感を感じたが、見渡しても何もないので、マークの追跡を開始する事にした。
◆ ◇ ◆
「ん?誰かが来たみたいだな」
「どうしますか?」
「一人みたいだし……」
「どうしました?」
「……、どうやらトラブルがやって来たようだぞ」
「撤退しますか?」
「このまま様子を見よう」
「了解しましたマスター」
◆ ◇ ◆
マークは1~3階層を問題無く進んでいく。
だが、その後ろに居るアレクは中に入ってからずっと、誰かに見られているような感じが拭えないでいる。
そんなアレクを知らないマークは4階層に到着した。
「何だろ? 何か居るのかなぁ?」
ふと周りを見回すマークを見たアレクは隠れた。
「あっぶねぇ……、見付かってないよな?」
そっとマークを確認しようとしたその瞬間、マークと目が合い、そして消えたのが見えた。
訳も判らず壁に激突し、混乱状態のままで周りを確認したアレクは、自分の状態に気づき思い切り顔面を叩いた。
我に返ったアレクは叫ぶ
「マーーーク!」
だが、何度も叫ぶが返事はなく、何処を探してもマークは居なかった。
そして、アレクは全速力で町へと戻る事にした。
◆ ◇ ◆
「あれ?やっちまった?」
「どうしますか?マスター」
「どうすべぇ…」
「……」
「と、とりあえずお茶にしよう、そうしよう」
「イエス、マスター」
「そこは突っ込んでね、お願いします」
「失礼しました」
◆ ◇ ◆
翌日、マークの捜索隊が結成されました。