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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第三章、人々の暮らし
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制御室奪還作戦

何とか書き上げました。





 白のダンジョンの10階にある『制御室奪還作戦』が始まった。



 ダンジョンの入口にある転移の魔法陣を9階層へ下りる階段前に移し、攻略組を直接送り込んでいる。


 現在、9階層の約3割を現地メンバーと攻略組で占拠している。


「そろそろ、行こうか」

「はい、お願いします」

「頑張るニャー」

「「「おー!!」」」


 仁達は、攻略組とは別にチームをつくり、制御室奪還作戦を開始する。


 メンバーは、仁、オッグ、ゴブタロ、コボジロ、ミケ、レド、リウ、同行組のアリア、サチコ、白の10名とジェット率いるオオカミ達20頭である。


 仁はジェットに跨がり、他のメンバーもオオカミ達に乗って、残るオオカミ達は護衛件索敵班として連れていく。


 平均Lv70を超えるメンバーで敵を倒しつつ、まずは10階への階段まで向かう予定である。


 待機場所である9階階段前から出発した仁達は、白の案内に従い駆け抜ける。


 既に、10階層に下りる通路は、攻略組と現地メンバーが抑えているので、10階への階段までは問題なく到達する予定である。


 一応、先導する白とオオカミ達の護衛もあるので、まず問題はないだろう。



 ◇ ◆ ◇



 無事、10階への階段に到着した仁達は、作戦会議がてら休憩をとる事にした。


「ここまでは順調だったな」

「はい、こんなに早く来れるとは思いもしませんでした」


 9階階段前を出発してから、ここまで約2時間経過していたが、オオカミ達に乗っての移動なので、かなりの距離であった。


「まあ、ここからが本番なんだ、道案内は頼むぞ」

「はい、お任せ下さい」

「ヒトシさま、私達は如何したら良いですか?」


 サチコは自分を指して、質問をする。


「オッグ、ゴブタロ、コボジロが護衛につくから、戦闘はしなくても大丈夫だが、独自に判断して戦闘支援をするぐらいで良いだろう」

「了解」


「アリア様は、白と一緒に行動して下さい」

「分かりました」

「よろしくお願いします」


 白は深々と腰を折り、アリアに頭を下げた。

 

「後は問題ないかな?」

「特にないと思います」


 仁の問いにアリアが答え、サチコと白は頷いた。


「では、予定通り先行するので、後から来て下さい」

「了解です」


「ミケ、レド、リウは残敵掃討をよろしくな」

「「おう!」」

「了解ニャー」


 こうして、打ち合わせは終わり、作戦開始時間まで休憩をとる。



 30分程が経ち、それぞれの準備も整い、仁が出発を宣言する。


「準備はいいか? 俺は先行し敵の排除をするが、討ち漏らしは出るだろう。 ミケ、レド、リウは討ち漏らしを処理し、白達の安全確保を優先してくれ。 オッグ、ゴブタロ、コボジロは白やアリア様の護衛、サチコはサポートに徹して欲しい。 では、出発ー!!」


「「「おー!!」」」


 10階への階段を駆け下りる仁とジェットは、飛ぶように階段を下りていった。


 仁はジェットの背中に張り付くように乗りながら、スキルのマップを開く。


 白と契約した時も感じた、感覚が流れ込んでくる。


 そして、頭の中にマップと制御室への道順が映る。


 通常、同じ階層の認識した場所を映す物だが、どうやら白の情報と共有されているようだ。


 始まりのダンジョンをクリアした時も、繋がる感じが起こり、その後はマップに全階層が表示出来るようになっていた。


 白との契約も、そういう物なのだろう。


 ダンジョンコアとの契約による、拡張されるスキルは多岐にわたるのだが、今回のナビゲーション機能は白に依頼した道案内で発動している機能である。


 ナビゲーションに従い、ジェットに道順を通信で伝え、そのジェットは仁の指示に従い流れるように、ダンジョンの通路を駆けていく。


 途中でモンスターに出会えば、ジェットが吹き飛ばし、壁に激突させて死亡させていく。


 それでも死なないモンスターには、仁が魔法でトドメを刺していくので、ノンストップで制御室へと向かっていくのだった。

 


 ◇ ◆ ◇



「お疲れさん」

「ウォフッ!」


 制御室前に到着した仁とジェットは、通信にてアリアへ報告をいれた。

 ここまでの到達時間は35分であったが、アリア達のチームは道程の3割程であった。


「んー、随分差がついてしまったな、まあ仕方ないか」

 ジェットを撫でながら呟く仁だが、当の本人は気持ち良さそうに撫でられていた。


 ケルベロスとなり、パワフルかつハイスピードに進化を遂げたジェットは他の配下を寄せ付けない強さへと成長していったのである。


 ここまで来る合間に、ひき殺したモンスターには災難としか言えないのであった。


「それじゃあ、ここで待って居てくれ」

「クーン?」

「フフ、すまんなお前だと、制御室が壊れてしまうから、我慢してくれ」

「ワフッ」

「ん、良い子だ。 行ってくるから見張りはよろしくな」


 仁は制御室の入口に立ち、中を確認し中へと入っていった。



 ◇ ◆ ◇



「おお! ドラゴニュートか」


 仁が声をあげると、寝床から顔を上げ、仁を認識して起き上がった。



『誰だ? 我のねぐらに侵入するとは……』


 ドラゴニュートは唸るように話し掛けて来たが、どうやら思念波のようだ。


「すまんな、寝ている処を邪魔するが、少し話があるんだ」


 仁の問い掛けに、ドラゴニュートは首を傾げる。


『話だと、そんなことで我を起こしたのか、無礼な奴だ』


「まあ待て、お前さんが寝床にしているここはダンジョンの制御室なんだ。 でだな、要はここを明け渡して欲しいのだが……」

『知るか、そんなこと……、ガハッ!』


 仁が話している途中で襲い掛かってきたドラゴニュートだが、その攻撃にカウンターを叩き込んだのであった。


『バ、バカな、き、貴様何者だ!?』


「俺か? 俺はダンジョンマスターの田中仁だ。 そして、ここの管理者になる男だ! ハッハッハッ」

 腰に手を当て、名乗る仁であった。


『なに!? 今、何と言った?』


「ん? 田中仁だが、聞こえなかったか?」


『いや、その後だ……』


 仁の答えに、項垂れたドラゴニュートが再度、仁に問う


「ん? えっと、管理者?」


 仁の言葉に、ドラゴニュートは片膝をつき跪いた。


『失礼しました。 我は北の地にあった竜神の里の末裔で、ドラゴニュートのギラルと申す。 知らぬ事とはいえ、無礼な行いをしてしまい、申し訳有りませぬ。 どうかお許しを……』


 ドラゴニュートの謝罪に疑問があったが、仁は彼に問い直す。


「まあ、寝てる処を起こしたんだ、だから別に構わない、殴ったのはこっちだしな。 さっきも言ったように、ここはダンジョンの制御室なんだよ、そこは明け渡して欲しいんだ。 良いかな?」


『はっ、仰せのままに』


 仁の問いに、肯定するドラゴニュートに違和感を感じる。


「えっと、何故そんなに畏まっているんだ?」


『はっ、我ら竜神の末裔、竜人は神に仕えし者の守護をして居りました。 その守護の役目を、我が為すようにと里の長に云われ、ここで待っていた次第です』


「んー、よく分からんが、如何してそうなるんだ? 俺は神の使いじゃなく、ダンジョンマスターなんだが?」


『はっ、それは竜神の巫女様が神託を授かり、貴方様をここで待つようにと、お告げがあったと聞いて居ります』


 なるほどねと、思って居たところで、どうやら白が制御室前に到着したようだった。


 事情を話し、ドラゴニュートと白が和解した事で、無事制御室の開放が完了した。



 ☆ ★ ☆



「良かったあ、ミィちゃんただいまー」

 白は猫のぬいぐるみを抱きしめ、涙ながら再会を喜んでいた。



 発見当初、汚れきった猫のぬいぐるみを見つけ、白の落胆はまるで親族が亡くなったかのようであったのだが、仁が生活魔法のクリーンを掛けてやると、白は目を潤ませ猫のぬいぐるみを、愛おしそうに抱き上げたのであった。


(やれやれ、まだひと波乱有りそうだな)


 こうして、白の依頼は達成され、ひと息付けたが竜神の巫女という、新たなフラグが立ちそうな予感がする、仁であった。




一話を短くしたので不安でしたが、何時もより多くの人が読んでくれているようで、嬉しく思います。

ありがとうございます。



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