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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第三章、人々の暮らし
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ダンジョンコアの願い



 ダンジョンコア【白】を入手し、そのマスターとして登録された仁は、どうしたものかと悩んでいた。



「どうか、お願いします」

「んー、言いたいことは分かるんだが、こっちにも予定があってだな……」

「そこを何とか……」

「そう言われてもなぁ」



 ダンジョンコア【白】(以後、白と呼称)が言うには、ダンジョンコアが設置されていた場所が魔物に占拠されたらしく、早期に奪還して欲しいとのこと。


 理由を聞くと、何やらゴニョゴニョと何かを隠しているらしく、いまいち要領を得ないのである。



(仕方ない、カマでも掛けてみるか)


「済まんが、俺にも事情があるんでな、今は仲間達に攻略を任せて居るんだ。 悪いが、お前の要望には答えられない」

「……、そうですか、残念です。 では登録の方は解除致しますが、宜しいですね」


(そ、そうくるか……)


「……、ああ、構わんよ」


 白は、仁の返事に面を喰らい慌てだす。


「えっ? えっと、構わないのですか? 以後、二度と登録出来ませんが……」


(ん? マジか、なら)


「ふむ、そうか、残念だが、解除して構わないぞ」


「…………」

「…………、どうした? 解除しないのか?」


 白は仁の対応に涙ぐむ。


「うぅ、済みません、ご免なさい。 お許しを……」


 仁はやり過ぎたと思い、もう一度問い質す。


「はぁ、ならちゃんと理由を話せ、でなければ話にならんだろ」


「うぅ、そのぉ、私の……、猫のミィちゃんが……」

「ん? ミィちゃん? 猫を飼っているのか?」


「いえ、ぬ、ぬいぐるみです……」

「……、マジか、ぬいぐるみね、ふぅ、気持ちは分かるが、直ぐには無理だな」


 ぬいぐるみの奪還と聞いて若干引いたが、白との繋がりで出来ることも増えたし、大切なものなら仕方ないなと、仁は思う。


「……、そうですか、諦めるしかないのですね」

「因みに、場所はどの辺だ?」


「えっ? あ、えっと、10階層の奥にある制御室です」

「10階の制御室ね、ちょっと調べてみる……」


「あ、ありがとうございます」


 白は、仁の言葉に希望を見出し礼を述べる。


「ふむ、なるほど、時間があれば行けなくもない所だが、やはり今直ぐは無理だな」


「あ、あのぉ、引き受けてくれるのですか?」


 仁はスケジュールを考え、白の要望に条件をだす。


「そうだな、2~3日待ってくれれば、時間を作れるんだが、それで良いか?」

「は、はい! ありがとうございます!」


 白は、涙ながら喜び、何度も仁に頭を下げていた。



 ◇ ◆ ◇



 8階層の攻略を進め、9階層に到達させた仁は、白のことも考え予定を繰り上げる。


「今夜はここまでだな」

「「「お疲れさまです」」」


「あ、あの、私はどうしましょう」

「ん、そうだな、このダンジョンから出られないのだし、猫又族の所にでも置いて貰うか。 猫好きなんだろ?」


「は、はい、お願いします」


 白は若干嬉しそうに答えた。



 ◇ ◆ ◇



 仁は夜の活動を終え店に戻り、朝の仕込みをしてから仮眠をとった。



「おはよー、学校いくからねー」

「ん? お、おう、いってらー」


 サチコに起こされ、寝ぼけつつ返事をする。


「ふぁ、んー、さて、飯食って……、あっ、サチコに予定変更を伝えてないや」


 仁はサチコに通信を繋げ、予定変更を伝える。


『サチコ、聞こえるか?』

『はい!? び、びっくりしたー。 き、聞こえてます、なんですか?』

『すまん、昨夜トラブルがあってな、今週の予定を変更するから、何時ものように、学校に休むと伝えて欲しい』

『分かったけど、何時もの日数で良いの?』

『ああ、それでいいよ、詳しくは今夜にでも話そう』

『了解』


 若干タイミングが悪かったみたいだが、予定変更を伝え終わり、開店の準備をしだす仁だった。



 ◇ ◆ ◇



 サチコが学校から戻り、予定変更の為に、領主や町長に報告をしに向かう。


「こんにちはー」

「いらっしゃいませ、サトシ様」

「町長はいらっしゃいますか?」

「はい、少々お待ち下さい」


 何時もの人が仁の接客をし、別の人が町長を呼びに向かった。


 応接室に通され、お茶を貰いしばらくすると、町長が入室してきた。


「こんにちは、相変わらず忙しそうですね」

「いやー、お待たせしました。今日は偶々ですね」

「そうなのですか?」

「ええ、さて、今日は何のご用ですかな?」


「それなんですが、急用が出来まして、明後日に町を出るのでお知らせに来ました」

「ほう、それはまた急ですな。お戻りはいつ頃になりますか?」


「そうですね、何とも云えませんが、ひと月以内には帰れると思います」

「ふむ、では水田の管理は私共で引き受けましょう。 後は実り次第で刈り取るのでしたな?」

「ええ、稲穂が垂れてくるので、実の入りが良ければ刈り取りです。 ですが刈り取り時期まで、まだ時間があるので、その頃には帰っているかと思います」


「承知しました。 ではその様に周知しておきますので、無事なお帰りを祈り、待つこととしましょう」

「ありがとう御座います。 無事帰れるよう頑張ります」


 町長と再会の約束をして、町長宅を辞去し、次は領主館へと向かう。


 しかし、領主は現在王都に居ると判り、言伝だけを頼み、店へと帰る事にした。



 ◇ ◆ ◇



「と、いうことなんだが、明日は10階層攻略の下準備をしないといけないんだ」


「へぇー、相変わらずですね」

「なにがだ?」

「フッ、そういう処もヒトシさまらしいです」


「……、まあいいか、明日は一日店番をよろしくな」

「はーい」



 その日は夜のお仕事をお休みにして、翌日の為に休養をとる事にした。



 ◇ ◆ ◇



 翌日の朝、サチコに店を任せ『始まりのダンジョン』に向かった仁は、アリアやリッチ達、主要メンバーを集め会議を開いた。



「そこで、この中から参加する者を選ぶのだが、質問はあるか?」


「はい、参加する制限は有りますか?」

「ん、そうだな、まずLv40以上だな、後は各種族20名位が条件かな」


「妥当ですな、某は守護者故、参加出来ませんが協力は惜しみませんぞ」

「そうだな、お前にはこのダンジョンの警備を頼むからな、しっかり指揮を執ってくれ」

「承知しました」


「後はあるか?」


「はい、隊長クラスの参加は如何しますか?」

「んー、今回は警備面もあるから不参加の方がいいかな?」


「そうですね。 防衛戦でしたら隊長クラスは残すのも有りですね」

「なら、隊長クラスは不参加で、まあこれ位かな? 後は各種族間で参加メンバーを決めてくれ、以上だ」



 会議が終了し、それぞれの階層へと戻る各種族の代表達は、この後メンバー選考しなければと、急ぎ足で退場していく。


 そして、残った仁、アリア、リッチは白のダンジョンの現状を話し合う。



「して、『白のダンジョン』でしたな、如何なのです?」

「うん、かなり深いな」


「私は参加というか、ついて行きたいのですが」

「んー、そうですね、来て貰えますか?」

「あら? 良いのですか? 断られるかと思いましたが」

「まあ、何も起きないと思いますが、少し予感がするのですよ」


「ほう、それはまた、主の予感はたまに()()当たりますからな」

「そうなんだよ。 って、おい!」


 ハッハッハッと、笑うリッチの頭をスパーン! と、ハリセンではたく仁であった。




明日は用事があるので、更新出来ないかも知れません。



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