日常と非日常
10,000PV達成です。
ありがとう御座いました。
「ありがとう」
「毎度、ありがとうございました」
無事、出店を果たした仁は店番をしていた。
「ただいまー」
「ん、お帰り、今日はどうだった?」
「うん、まあまあかな」
「そうか、なら午後からの店番はよろしくな」
「はーい」
サチコは今、サトシの娘『アイ』として、学校に通っている。
学校は午前中だけなので、店番は仁がしていたのである。
「お昼はサンドイッチがあるから、適当にとってくれ、俺は水田の方にいくから、後はよろしくな」
「分かった、いってらっしゃーい」
サチコが『アイ』として学校に通うようになって、こうしたやり取りが仁には癒しになっていたりする。
サチコ自身は余り良く思っていないのだが、仁の娘として学校に通うことは少しだけ嬉しかったので、許容していたのだ。
◇ ◆ ◇
「お疲れさまです」
「あ、こんにちはー」
「どうですか?」
「はい、順調に育っています」
「ふむ、いい感じになってきましたね」
「ええ、これもサトシさんの指導があったお陰です」
「いえ、自分もまだ勉強中なので、大したことは出来てませんよ」
仁が持ってきた種籾を苗床で育て、水田を造り、田植えを行い、試行錯誤しながら現地の人を使い、何とか収穫の可能性が見えてきた処である。
一応、スキルを使い、情報を検索する事で、種籾の選別方法とか、育苗とか、水田の造り方などは分かったのだが、流石に素人では如何ともし難く、試験的に幾つかに分けて、育てて来たことで何とかなったといえる。
ぶっちゃけると、現地の人を使っていなかったら、全滅していたと思う仁であった。
種籾を持ち込んでから、はや半年が経過している。
「いくつか駄目になりましたが、まさかこれ程になるとは思って居ませんでしたよ。これも皆さんの助言があったお陰です」
「そうですか? お役に立てたのなら嬉しいですな」
「それはもう、害虫対策や雑草対策は、私では分かりませんでしたし、大助かりでした」
「まあ、うちらも長年やってきた事ですから、それよりもこの水田という農法は凄いですな」
「そうですね。私も文献が無ければ思いつかない農法でしたね」
「はあ、流石ですなあ、サトシさんは学があるし、色々と道具も工夫されている。 お陰でうちらの畑も今年は豊作だったから、こっちこそ大助かりでしたよ」
「ほう、そうなのですか? それは良かった」
地元農家とのコミュニケーションは大事だなと、再認識した仁であった。
◇ ◆ ◇
水田の様子を確認後、仁は店舗の裏手にある工房に篭もっていた。
仁の店では主に食材を扱っているのだが、この町には鍛冶屋が無いので、仁が練習がてらに農具や包丁、調理器具などを作って売っているのだ。
売り物としてだしている物は、作成で作ったものだが、仁はスキルを活用し実際に作り、鍛冶の練習をしている。
何故なら、作る音を出す為である
。
音も無しに、道具を売っているとか、何処から突っ込みが入るのか分からないので、仕方なしに行っているのである。
(いやあ、やっぱ楽しいな、クラフトはこうじゃないとな)
◇ ◆ ◇
「お疲れさん、今日はどんな感じだ?」
「えっと、12540Gかな、フライパンがそろそろ品切れになりそう」
「そうか、後で補充しとくか。店を閉めるから、片付けの方よろしくな」
「はーい」
こうして、仁達『サトシ一家』の一日は終わるのだが、仁としての活動は、まだ終わらないのである。
「それじゃあ、行ってくるから、留守番たのむな」
「はい、いってらっしゃい」
仁は、工房の地下にある隠し部屋に入り、設置された魔法陣を発動させ転移した。
転移先は、遙か東方にあるダンジョンである。
そう、ミケやレド、リウ達が居たというダンジョンである。
◇ ◆ ◇
「よう、お疲れさん」
「ん、お疲れニャー」
「「お疲れさまです」」
ダンジョン前では、ミケとその配下の者達が警備をしていた。
「で、どんな感じだ?」
「今はー、レドとリウが8階層まで進んでいるニャ」
「そうか、やはり手強いか」
「んー、まあそうニャンだけど、どっちかというとニャ、レドとリウが暴れているだけニャよ」
「はぁ、またか……、まあいいか、あとは何かあるか?」
「そうだニャー、あたしんちの長老たちが揉めてるくらいかニャー?」
「そうか、じゃあまずそっちからだな」
「あいあい、よろしくニャー」
こうして、仁は夜の活動を始めるのであった。
◇ ◆ ◇
仁はミケ達の種族がいる3階層へと転移した。
「こんばんはー」
「おお! ヒトシさま、丁度よい処に」
「うん、ミケに聞いたけど、今度はなんだ?」
「はい、それがですね……、これなんです」
「ん? なんだこれ?」
仁に差し出されたものは、白く大きな球体だが、かなりのマナが篭められた珠だった。
仁が受け取ると、一瞬膨れ、瞬時に元へ戻った。
「なんだ? 鑑定してみるか……」
ダンジョンコア【白】登録者・田中 仁
白のダンジョンの核であり、制御を司る宝珠。
「え? ダンジョンコア?」
次の瞬間、宝珠は弾け、光と共に消えた。
「ふぁー、おはようございます」
「な、なに?」
仁の腕の中で目覚めた子供は、床に降り立ち挨拶をする。
「お待ちして居りました。マイマスター」
「えっ? えー!?」
混乱する仁の前で、子供は傅いた。




