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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第三章、人々の暮らし
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潜入調査

短いですが、きりが良かったので



 始まりのダンジョンをクリアして、5年が経った。



「ヒトシさま、仕度が出来ました」

「ん、じゃあ行こうか」


「お待ち下さい、仁さま」

「はい? どうかしましたか?」


「あの、本当にサチコを連れて行くのですか?」

「ええ、今回の偵察にはサチコのスキルが必要なので」


「…………、私では、いけないのですか?」

「アリア様では、目立ち過ぎますし、偵察には不向きですよね」


「…………、わ、分かりました。 サチコ、仁さまの言い付けを守るようにするのよ、それと仁さまの護衛を頼みますね」

「はい、お任せ下さい」

 サチコはアリアに一礼して、仁が待つ魔方陣に近寄った。


「それじゃあ、行ってきますね。 1週間の予定ですので、後は頼みます。 緊急時には連絡をお願いします」

 そう言って、仁はサチコを連れて魔方陣に入った。


 魔方陣に蓄えられたマナが光始め、仁とサチコを包み込み転送が行われた。


『転移の魔方陣』は、長距離移動を可能とし、その反面、膨大なマナが必要な上に、近距離転移が出来ず、運べる定員も5人までと、中々に使いづらいものであった。


 しかし、テレポートより長距離移動ができ、仁のMPを消費しないので、今回の偵察任務の為に、用意されたものである。


「はあ、私もご一緒出来れば……」

 仁とサチコを見送り、1週間も会えない事を嘆くアリアであった。



 ◇ ◆ ◇



 仁達が転移した先は、人々が暮らす小さな町であった。



「ここが、人間の暮らす町ですか」

「そうだ。 いいか、お前は俺の娘で『アイ』だからな、それと話し掛けたり、返事も極力するなよ」

「はい」


「それと、認識阻害の指輪は外すな、それがないと、最悪敵対もしくは、捕まることになるからな」

「分かりました」


「……、あと言葉遣いは普通でいいぞ、その方が親子と認識されるはずだ」

「分かり……、分かった」

「ん、じゃあ行くか」

「はーい」


 こうして、仁とサチコは人々が暮らす、町への潜入活動が開始されたのである。



 ◇ ◆ ◇



 仁とサチコは何事なく、町へ入ることが出来た。


 勿論、町に入る為に門から入ったのだが、門番の兵士に通行税を物納で行い、町へ入る許可を貰ったので問題はなかった。



 当初、貨幣で支払うように言われたら、召喚で出すつもりで居たのだが、物納でOKと言われ、持っていた銀塊を見せた処で、すんなり『入れ』と言われ、尚かつ、物資の買い取りをしている、領主の屋敷へと案内までされたのであった。



 ◇ ◆ ◇



「いやー、助かった。 サトシ殿が来なかったら、どうなっていたか分からい処だった」

「私も、このお金でやっと店を持てそうです。 有り難う御座いました」


「そうか、店を出すので在れば、私が言えば直ぐにでも出来るぞ」

「いえ、流石にご領主様の口利きですと、何かと問題になるかと」


「そうか? うん、そうだな。

なら紹介状をだそう、それ位なら問題はなかろう。 この度の物資提供者だと言えば、誰も文句は言うまい」

「ふむ、そうですか? では、有難く頂戴いたします」


「それとな、店が出来たら知らせてくれるか? 最近、王都からの物資が滞りがちでな、入手ルートが増える事は大事なのでな」

「分かりました。 では、出店が決まり次第、ご連絡させていただきます」

「うむ、待っておるぞ。 直ぐに、紹介状をだす故、よろしく頼む」

「はい、有り難う御座います」


 こうして、この町に店を出し、情報収集の拠点まで入手するという、有り得ない展開で町に潜入出来たのであった。



 ◇ ◆ ◇



 領主の紹介状を貰い、町の宿屋で部屋をとり、仁とサチコは休憩を取る。


「ふう、やっとひと息つけます」

「うん、まさか領主直々に買い取りとか、出店の口添えとか、流石に疲れたな」

 狭い部屋のベッドに腰をおろし、話し始めた。


「話が分かる人間でしたね」

「そうだな、思ったより状況が悪いんだろうな」

「だけど、いいのですか? 大切な物資を、人間に与えるなんて」

 仁の為に集めた物資を、人間に与えた苛立ちを、サチコは洩らしてしまう。


「はぁ、お前子供なんだから、もう少しそれ()()()喋れよな」

「そうですか? アリア様に怒られそうです」

「……、うん、もう大丈夫だぞ。 今、許可を貰ったからな」

「はやっ! さすが、ヒトシさまです」


「……、お父さんだ」

「あ、はい。 お、お父しゃん……」

「まあ、その内慣れるさ」

「えー、なんか嫌だー」


 ぶうたれつつ、少し恥ずかしかったサチコであった。



 ◇ ◆ ◇



 翌日、領主の紹介状を携えて、この町の町長を訪ねる。


 小さな領地の小さな町なので、町長が役人の仕事を兼任しているらしい。



「こんにちは。 私、サトシと申します。 こちらは、町長様のお宅でしょうか?」

「はい、そうですよ。 今、町長さんは、領主様の所に出向いて居ますが、もう直ぐ戻るかと思います」

「そうですか…… では、待たせて頂いても、よろしいですか?」

「構いませんよ、いつも通りでしたら……、あ、お帰りのようです」


 町長宅の玄関前で話していた処、馬車の音が聞こえてきた。


 馬車が町長宅に到着し、馭者が町長の下車を手伝う。


「お帰りなさい」

「ん、ただいま」

 先程まで話をしていた人が、町長らしき人を出迎えた。


「今、町長さんにお客さんが来てますよ」

「おや? もう、いらしていましたか、サトシ殿ですよね」

 馬車から降りてきた男は、仁を見付けて名を確認してくる。


「はい、私はサトシといいます。 先日、ご領主様に出店の話をした処、紹介状を頂きまして、先程こちらへ伺った次第です」


「おお! やはり貴方がサトシ殿でしたか、私も先程、ご領主様に伺いましたが、なんでも、大量の物資を都合して貰えたとかで、貴方がこの町にお店を出したいと聞き、急いで戻ってきた処です」


「そうですか、すみません、なんか急かせてしまい、申し訳ない」

「いえいえ、こちらこそ待たせてしまい申し訳ない、とりあえず中で話をしましょう。 ささ、こちらへ」



 仁達は町長宅に招かれ、出店の話を進めたのであった。




次回も、でき次第で投稿します。


※19,2/10領主の年齢を30歳前後に変更しましたので、『儂』から、『私』に修正致しました。



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