闇
「あぅー……、ディーしゃま、お許しを……」
サチコは夢にうなされていた。
── ── ──
喚ばれた場所は闇の中であった。
真っ暗な部屋の中で、大きな椅子に座る存在がこちらを見ていた。
「ちっ、失敗か」
魔神の使徒『D』は、召喚したばかりの僕に失望した。
「出来損ないだ、連れていけ」
「はっ!」
Dの僕は、出来損ないと言われた者を抱え、部屋の外へと連れだした。
◇ ◆ ◇
Dの僕が抱え、運んだ先は僕達が待機している大部屋だった。
「新人を連れてきた、D様は出来損ないと判断された。 いつも通り世話は任せる」
「分かりました」
Dの命令で連れてきた場所には、数十名の僕達が待機していた。
「サキュバスか、なるほど子供じゃ出来損ないだな。 おい、お前はこっちだ」
「あい……、あのぉ、ここはどこでしゅか? あちしは……」
不安になり黙ってしまった子供に、世話を任された者がここの説明を始める。
「ふむ、ここはな出来損ないが集まる場所だ。D様に遣えるには至らない僕は、任務を与えられるまで、ここで待機しなければならない」
「にんむです?」
「ああ、任務がなければ処分されるが、お前は……」
末路を想像した世話役が言いよどむ。
「……、ど、どうしたのれす?」
「な、何でも無い、とりあえず待機だ、いいな」
「あい、分かりまちた……」
数日後、任務という名の廃棄処分が行われた。
── ── ──
「いやーー!!ハァハァハァ……、うぅ、またれすか、あぅ……」
サチコは、おねしょをしてしまった。
☆ ★ ☆
「ごめんなしゃい……」
「仕方ありません、貴女も仁さま同様に色々と抱えてますね」
「ヒトシしゃまも、おねしょです?」
サチコの疑問にアリアは呆れた。
「違いますよ、仁さまはおねしょなどしません。 ただ……、何でもありません、今のは忘れなさい」
「…………、なにをれす?」
サチコは、アリアが何を言いたかったか分からず、聞き返してしまった。
「なんだ、またか」
「あう、こ、こりは……」
「分かってるから、気にするな。また彼奴の夢でも見たんだろ?」
「……、あい」
「お前は俺が守る、だから安心しろ。 その内、お前の仲間も助けだすし、Dは斃すからな」
「あい!お願いしましゅ!」
半泣きのサチコは、仁にしがみ付いた。
◆ ◇ ◆
16階層の復元を開始し、18階層完成までに約ひと月が過ぎた。
何事もなく復元作業は進み、19階層の復元をしようと、19階に降り立った時に問題は起きた。
◆ ◇ ◆
19階層
そこはただの闇、いや闇しかなかった。
ホーリーライトの魔法を放っても、闇が祓われることはなかった。
「仁さま、ここは……」
「どうやら、ここが終点のようですね。 帰りたいところですが、階段が消えてしまい、テレポートも無効のようです」
「…………、私の方も、神界との接続を断たれました」
「帰ることも、報せることも出来ませんか……、困りましたね」
「如何しましょう」
「このまま待つとしてもアレですし、奥の手を使います。アリア様はご自身を御守り下さい」
「はい、ご武運を」
アリアから離れ、仁は光り輝く剣と盾を装備した。
聖剣エクスカリバーとイージスの盾
勇者のユニークスキルLv1で召喚出来る、光の剣と光の盾である。
『闇を切り裂き、深淵に棲まう闇の眷属を照らせ』
仁が光の剣『エクスカリバー』を掲げ振り下ろすと、闇は引き剥がされていった。
ビシビシビシと、辺りで嫌な音がなり始め、仁はアリアと合流し『イージスの盾』を構える。
すると、今まで見えなかった壁や床が見え始めた。
「ん、あれ?うあー……、なんでこんな所に」
先程まで居た場所に、何者かの死体が転がっていた。
「あの、何かありました?」
「えっと、死体が……」
ものの見事に、頭のてっぺんから胴体が真っ二つになっていた。
「ひっ!……」
「ちょっと調べてきます、ここに居て下さい」
アリアは肯き、仁は死体を調べようと近づくと、死体は崩れさった。
「うぁ……、ん? なんだこれ?」
死体の中から、鈍く光る金属片が現れた。
二つある金属片を引き抜き、並べてみた。
「んー、これは……『D』か、えっ? いやいやいや、流石にないだろう」
称号『魔を退けし者』を獲得しました。
「ちょっ、なんで……、なんなんだこれは?」
仁は、呆気ない幕引きに呆れた。
── ── ──
「D様、神の手の者が19階に侵入しました」
Dの僕が侵入者の報告をもたらした。
「フッフッフッ、やっと来たか。これで彼奴らより上に立てるな」
Dは不敵な笑みを浮かべ語る。
「こんな辺境のダンジョンに押し込められた苦しみも、今日で終わりだ!俺様の装備を持ってこい、自らの手で決着をつけてやる!」
「ハッ!」
Dは、僕が用意した装備を装着し、19階層へと向かった。
◇ ◆ ◇
19階の入口に佇む仁達を見付け、Dは闇の中を平然と近寄って行った。
(こいつが神の僕か、間抜けな顔をしおって、此奴を始末し『B』や『C』を追い落としてくれるわ! しかし、後ろの女は美しいな。 よし、俺様のハーレムに加えよう)
仁の前に立ち、アリアを見つめニヤニヤと嗤うDは油断していた。
突如、光り輝く武装を纏った敵が、己の目の前で聖剣を振り上げていた。
(なっ!? ちょっま!!)
次の瞬間、Dは真っ二つに斬られてしまった。
── ── ──
「えーっと、Dを討ち果たしたということですよね」
「まあ、そうなりますね」
「おめでとうございます。 これでこのダンジョンは、ほぼクリアですね」
「ありがとうございます。 しかし、19階層の復元と奴等の残党を何とかしなければなりません。 それに、クリアまでどれ位の時間が掛かるのかも分からないのです、油断は出来ませんよ」
「そうでした、すみません。つい、嬉しくて」
「はやる気持は分かりますが、それよりも、なんで『D』はここに居たのでしょう?」
「そうですね、何かあったのですかね?」
仁とアリアは『D』の痕跡を見つめていた。
Dという魔神の使徒は討たれ、謎は深まるが、その謎の答えは明かされることはないのであった。
☆ ★ ☆
Dを斃した報告をして、19階の復元を開始する。
「では、いつも通り監視をお願いします」
「はい、おまかせ下さい」
19階と20階層への階段を復元する迄は戻らないと決めた仁は、休憩はすれども寝ずに復元作業を続けた。
サチコが世話になった僕達がまだ未確認であった為だが、誰もが召喚主であるDが斃され以上、生き残っている可能性はないという意見が殆どであったが、仁だけは頑なにその意見を認めなかった。
可能性が零でない限り、切り捨てることはないと宣言し、復元作業に入ったのである。
サチコのように、契約者との繋がりが切れている場合は、生き残っている可能性はあるという思いは、サチコも否定的であったが、仁は諦めることはなかった。
☆ ★ ☆
19階層の復元はかなり早いペースで進み、6日で完了した。
「では20階層へ、行ってきます」
「本当にお一人で行くのですか?」
「ええ、20階の状況次第ではどうなるか分かりませんので」
「分かりました、代わりにこれをお持ちになって下さい」
「これは?」
「仁さまに何かあった時、それが身代わりになるでしょう」
「……、分かりました、有り難く使わせて貰います」
仁はアリアから赤い宝石がはまったペンダントを貰い、それを自分の首へ掛けた。
「では、行ってきます」
「はい」
アリアは、階段を下りていく仁を見送り、無事にもどる事を願ったのだった。
次回は、出来次第あげる予定です。




