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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第二章、ダンジョンマスターとして
62/206

光魔法


 お待たせしました。






 10階層の攻略から3日が経った。



「キャハハハ、あちしの勝ちら!」

「グヌヌ、もうイチドだ」

 サキュバスの子供とゴブタロはトランプで遊んでいた。


「随分と馴染みましたね」

「ええ、子供ですしね」

「子供とはいえ、魔神の使徒の配下です、もっと警戒すべきでは?」

「まあ、そうなんだが、鑑定で確認したらな…………、その、あれだ……」

「何かあったのですか?」

「従属してるんだよ……」

「「はい?」」



 仁はサキュバスの子供を手懐けてしまった。


「サキュバス、お前は今後どうするんだ?」

「なんの話れす?」

「「…………」」

「ディーさまとやらの処へ帰らないのか?」

「…………、ヒトシしゃまはあちしが嫌いなの?」

「好き嫌いじゃない、帰らんでいいのかと聞いてるんだよ」

「あちしはヒトシしゃまと居ると決めたのれす、ディーなんてもう知らないのでしゅ、あちしは生まれ変わって、ヒトシしゃまのお嫁さんになるのでしゅ!」

 仁は呆れ、リッチは驚き、アリアはサキュバスの子供に敵意を向けた。


「あなた、自分がどんな存在か分かって言っているのですか?」

「恋する乙女?」

「はあ?チンチクリンな上に魔神の眷族であった貴方が、神の使徒である、仁さまには相応しくないと分からないのですか?」

 サキュバスの子供は、仁の足に縋り付き、アリアから身を隠した。


「ヒトシしゃま怖い、たしゅけて」

「……、アリア様、子供の言うことです、ここは私に免じて許してやって下さい」

 仁はサキュバスの子供をアリアの前にだし、頭を抑え言い聞かす。


「お前もここに居たいなら、アリア様を敬え、彼女は神界の女神様だから、怒らせると神罰が下るからな、分かったらちゃんと挨拶をしろ」

「あい……、アリアしゃま、ごめんなしゃい、あちしはおめかけしゃんでもいいでしゅ、よろしゅくお願いしましゅ、いったぁ」

 仁はポカリと殴り、サキュバスの子供は頭を抱え涙ぐむ。


「そうじゃねえよ!まったく、ちゃんと挨拶出来ないなら帰れ!」

「仁さま、小さい子に乱暴はダメですよ。私も子供に大人気なかったですし、もうそれぐらいにしましょう」


「すみません、お前もご免な、殴ってすまなかった」

「いいでしゅ、あちしはヒトシしゃまと一緒なら、この身を……、イデデデ」

 仁はサキュバスの頭をグリグリと拳骨で挟んだ。


「調子にのるな」

 サキュバスの子供は再び頭を抱え、涙ぐむのだった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 中央拠点に戻り、今後の攻略を如何するか話し合った。


 ゴブリンキングは7階層で防衛の指揮を執ってもらい、8階9階はレベル上げ位しかないので放置、問題は10階層以降である。


 仁が戻ってから、何度か穴の先を偵察したが、相も変わらず闇が支配しているのだった。



「ホーリーライトですか……」

「ええ、光魔法を覚えるべきです」

「光と治癒魔法の上位魔法ですか」

「はい、闇に対抗するには必須になります」

「そうですね、分かりました。アリア様、ご教示お願いします」

「はい」

 アリアは非常に上機嫌で、仁の願いを引き受けた。



 光魔法は、勇者や聖者等の称号が無ければ覚える事すら難しく、覚える為には、教会での信仰や、治癒魔法を極める必要があるのだ。




「では、光魔法の習得条件をお教えします。まずは称号、勇者、聖者、聖女の獲得、若しくは聖職者の職につき、神意、神性の理解力をつけ、治癒魔法を行使しつつ徳を積み上げ、治癒魔法のレベルを高める事です」

「聖職者ですか、無理ですね」

「あ、確かに」

「終了ですな」

「勇者や聖者の称号は魂に紐付いているんですよね」

「あっ!それがありました!」

「「はい?」」

「勇者や聖者の称号は、神意に魂が触れることで獲られるんです」

「……、それに何かあるので?」

「仁さま、お手をお借りします」

「え?手をですか?」

「はい、その手です」

 仁は右手を差し出し、アリアはその手を己を胸に差し込んだ。


「な!」

「仁さま、そのまま私を受け入れて下さい」

 仁の右手は、アリアの体内に取り込まれていた。


 仁の右手がアリア中で融け、仁とアリアの精神が繋がり始める。



 ── ── ──



 仁の意識がアリアと繋がり、覚醒しだした。


「ここは……」

 青く輝く湖と、草木の薫りが心地良く、頬にあたる風も清々しいものであった。


「確か、こっちだよな」

 仁は朧気に記憶を辿り、森の中へと入っていった。


 いつ来たのか分からないが、ここを訪れた事があり、誰かの記憶を思いだした。


「〇〇!!」

 仁は森の中を走りだし、低木の枝葉をかき分け、獣道を走り抜けた。


「〇〇!〇〇ー!」

 声にならない叫び声は、仁を苛立たせたが、この先に誰かが待っている事は判っていた。


 走りながら、何度も名前を叫んでいるが、それが誰の名前か思い出せない。

 記憶を辿りながら、向かう場所へと近づき、大切ななにかを求め、心がざわめいている。




 やがて、小さなログハウスが建った場所へと辿り着き、扉に駆け寄り開く。


「〇〇ー!ハァハァハァ」

『お帰りなさい、あなた』


 扉の奥には誰も居なかった。

 ただ、帰宅の返事が耳に残っていた。


 手造りのテーブルと椅子に、暖炉とソファーがあり、奥の部屋には寝室の扉がある。


 仁は息を整え、寝室の扉をそっと開けたが、誰も居なかった。


 頬にひとすじの涙がつたい、仁の心に熱い想いが蘇った。


 かつて、愛した人と過ごした大切な場所。

 そして、儚くも最後を看取った、辛く悲しい場所であった。


「〇〇ー!」

 声にならない叫び声は、虚しくかき消され、想い人の名前は思い出せず、愛する人への想いだけが溢れ出した。



 仁はベッドに埋もれ泣き叫び、やがて泣き疲れ寝てしまった。



「貴方が求め、辿り着きたい場所はここなのですね」

 アリアは、仁の魂の拠り所を知り、仁の想いを理解した。


 大切な人を助けられず、後悔の日々に埋もれ、亡くなった過去の記憶。


 転生しても、消えない想いを持ち続け、忘れてしまった記憶に反して、想いを追い続ける魂の叫びは強くなっていった。


 ただ一人の女性に想いを捧げ、追い求めた男の生き様は、女神であるアリアにも、涙が溢れる想いで満たされていた。


 仁が命に拘る想いは、慈悲

 子供に向ける想いは、慈愛

 女性に対する想いは、怖れ

 理不尽に向かう想いは、怒り

 物事への執着はすべて、ここへ辿り着く為の、思いの丈であった。




「あれ?ここは……」

「起きましたか?」

「おはようございます……」

「おはようございます、仁さま」

「えーっと、アリア様、ここは何処ですか?」

 仁は、何も無い空間にあるベッドの上に座っていた。


「ここは私の中、まさに神性そのものの中です」

「はい? それって大丈夫なのですか?」

「はい、仁さまは神の使徒として、既に私達の眷族ですので、大丈夫です」

「よく分かりませんが、大丈夫なのですね」

「ですが、ひとつだけ問題がありました」

「な、なにがあったのでしょう?」

「その、仁さまの想いが私に流れてきてしまい、記憶の共有が成されてしまいました」

 仁は、背中に冷たいものを感じながら確認を試みた。


「えーっと、もしかしてその……」

「はい、はっきりと……」

 仁とアリアは、互いに真っ赤な顔で俯いた。


 アリアは、仁の魂が抱える想いはふせて、敢えて誤魔化したが、仁との記憶の共有だけを伝え、目的の称号を与えた。



 称号:勇者を獲得しました。



 ── ── ──



「ちょっ!勇者とか!ふがっ……」

「お帰りなしゃい、ヒトシしゃま!」

 飛び起きた仁に、サキュバスの子供が飛びついた。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 仁は頭を抱えていた。


「うー、勇者とかないわー」

「えっと、お気に召しませんでしたか?」

「ハッハッハッ、勇者ヒトシさまは魔王を、いや魔神の討伐とか、燃えまするな、ハッハッハッ」

「もう寝る!起こすなよ!」

 仁は更に不機嫌になり、ふて寝を開始する。


「あちしも、ヒトシしゃまとお昼寝するじょ!」

「な!……、では私もご一緒します」

「ああ!なんでこうなるんだ! お前達、少しは俺の心を察してくれ!」

 ベッドの上でサキュバスとアリアに挟まれ、甘い空気に居たたまれず、やさぐれる仁であった。


「素直じゃありませんな」

「うるせー、俺のキャラじゃハーレムは柄じゃないんだよ!」

 嬉しいが、免疫がない仁のチキンハートは悲鳴を上げるのであった。


(俺は〇リ〇ンじゃねぇし!……、うん、ないぞ!)



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 サキュバスの子供は、仁によって『サチコ』と名付けられた。


 サキュバスのさっちゃん転じて、『サチコ』となり、安易であったが幸子(さちこ)なら良いよなとなり、由来を伝えると満場一致で決まり、サキュバスの()()は、満面の笑みを浮かべながら、泣いていた。



「サチコ、お前はもっと遠慮を覚えろ!」

「えー、やだー、ご飯がうみゃいのがいけないのら」

「旨いからといって、他人(ひと)の物まで手をだすな」

「……、ごめんなしゃい」

「ん、素直な子供は好きだぞ」

「あい!」

 サキュバスのサチコは、いい返事をしたが、残念なことに、口の周りに生クリームがベットリと付いていた。



 サキュバスのサチコは、仁が大好きだ。

 良いことも悪いことも、全てを受け入れて貰える。

 例え、いたずらをしても、シッカリ叱ってくれるし、良いことをすればちゃんと褒めて貰えた。


 サチコにとって、仁はかけがえのない存在となっていた。




 仁に出会う前は、魔神の使徒の僕であり、Dという存在が全てであった。

 だが、出来損ないと切り捨てられ、ダンジョン内を彷徨っていた。


 そんな中で、仁達の軍勢が8階を蹂躙し、9階へと侵攻してきたのを間近でみて、神の使徒である仁を、Dが語っていた敵の僕と思い、恐れおののいた。


 だが、仁が軍勢を退却させた事で、これはDの元へと帰れるチャンスなのではと思い、なけなしのアイテムと魔力で罠をしかけ、仁を待ち伏せしていたのであった。



 もし、仁がひとりで来なかったら、サチコの運命は変わらなかった。

 そして、仁とも会えずに終わっていただろう。


 そう、こうやって笑って過ごせる場所にすら、辿り着くことは出来なかった筈である。


 サチコは仁に出逢い救われた。

 そして、仁の愛情に救われ、暖かな場所へと連れ出して貰えたことに感謝し、己の中にあった闇が消えていったのである。


 本来、闇の眷族がこの様に変質することはない。


 仁がもつ、ダンジョンマスターの性質と、称号、異形たちの王による親和性に救われたのである。


 全ては導かれ、やがて答えをだすだろう。


 その答えをどの様に出すかは、神ですら分からずにいた。



 ── ステータス更新 ──



 田中 仁 Lv47

 ダンジョンマスター

 HP.112800/112800(3s=+5%)

 MP.20304/20304(3s=+5%)

 DP.50000/50000

 STR.188

 VIT.188

 DEX.141

 AGI.141

 INT.282

 MND.10564

 LUK.34

 スキル

 通常:メニュー.マップ.テレポート.情報.通信.監視

 召喚Lv5.作成Lv6.分解Lv5.鑑定LvMAX

 魔方陣LvMAX.生活魔法LvMAX.治癒魔法LvMAX

 火魔法LvMAX.水魔法LvMAX.土魔法LvMAX.風魔法LvMAX

 氷結魔法LvMAX.光魔法LvMAXnew

 MP倍加.MP消費半減.HPMP自動回復LvMAX

 経験値倍加.思考加速.詠唱破棄

 身体向上.知能向上.反応速度向上.回復力向上

 戦闘:光の剣Lv1new.光の盾Lv1new

 耐性:全属性95%無効.光属性吸収new.闇属性半減new.状態異常無効.精神異常無効

 加護:異世界の神(不老不死)

 称号:大賢者.異形たちの王

 勇者new(光属性倍加)





体調不良で更新が遅れています。

申し訳ありませんが、しばらくは休養を取りつつ、少しずつ書き進めようかと思います。

毎回、読みにきて頂いている方々には感謝しておりますが、宜しくお願い致します。


 

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