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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第二章、ダンジョンマスターとして
58/206

氷結魔法

仁編(本編)始まりです。





 6階層のゴブリン達の集落は、ある問題を抱えていた。


 ゴブリン達は、かつて8階層に住んでいたのだが、ここ数年、下の階層より上がってきたリザードの襲撃をうけ、じりじりと勢力圏を奪われ、7階層へと退避したのだが、そこでもリザードの襲撃を受けていたのである。


 では、何故ゴブリンキングが6階層に居るのかについては、7階層での攻防戦において、あるリザードに呪われたからである。


 カースリザードという特異個体のモンスターを倒したのだが、その時に筋力低下の呪いに掛かり、6階層の安全圏へと避難して来たからであった。



 本来、ダンジョンにおいて階層が浅い場所、また入口から近い場所はレベルが低いものだが、仁が降り立った時点で、既に異常事態が起きていたのである。


 始まりのダンジョンは、文字通り初心者用のダンジョンであった。


 だが、この世界の人々が滅び、ダンジョンを管理する管理者である神が去り、ダンジョンの魔物を倒し、闇の力を削ぐ人々が不在という事態により封印が弱まり、下層の魔物達が徐々に上層へと、上がってきているのであった。


 何年もの間に、何度も下層のモンスターが上ってきては、上へとモンスターが移動を繰り返し、5階層にレベル30が居る異常事態が起きていた事に、仁は気付かずに居たのである。



 当初、神々が予定していた始まりのダンジョンは、5階層を約一日でクリア出来るように、設計されていたのだが、管理者の職務放棄というアクシデントにより、地下に封印されている魔獣による侵蝕が進み、5階層であったはずの始まりのダンジョンは20階層まで進み、まさに異常事態にあった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 「ということだが、どうだ?」

 「………、ワカッタ、ドウメイトヤラガワカランガ、アリアサマニツカエラレルノデアレバ、モンダイナイ」


 仁は、ゴブリンキングの事情を知り、同盟を結び階層攻略の約定をかわしたのである。


 「どうやらかなり深刻な状況らしいな」

 「そうですな、某が出会った()()は魔神の手の者であったと見てよいかと思いますな」


 「…………、今確認が取れました。どうやら、かなりの確率で魔神の力が増しているようです」


 「……、ゼノス様は知っていらしたのですか?」

 「そのようです。だからこそ私を此方に寄こしたのでしょう」


 「はぁ、やるしかないか……」

 「そうですな、某も微力ながら参戦させて頂きます」

 「私も……」

 「駄目です!アリア様は女神なのですよ、奴等の相手は私の役目なのです。手出し無用でお願いします」

 「そうですぞ、きゃつらの相手は某のようなモンスターで十分ですぞ」

 「分かりました……」


 仁はアリアの参戦は認めず、リッチも同様にアリアを諫め、その後ろに控えていたゴブリンキングは肯き、アリアは諦めるのであった。



 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 「族長、すまないがそういう事で、もう暫く我慢してくれるか?」

 「いえ、カレらもワレワレとオナじキョウグウであるとワカり、なんのフフクもアりません。キョウリョクデキるコトがアりましたら、ゼヒモウしツけてクダさい」

 「ありがとう、感謝する。是非協力を頼むよ」

 仁はホブゴブリンの長の手を取り、固く握手をしながら感謝を述べた。



 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 仁達は6階層の探索を進め、粗方のマッピングを終え、ゴブリンキングの協力の下に、ゴブリンやオオカミ達を使い資源を回収し、彼方此方にある集落を強化していく事にした。


 万が一に備え、防衛力の強化は為べきとキングに提案し、キングも了承したので、7階層の入口に近い場所から着手していった。


 相手がリザードとい点において、落とし穴は使わず、馬防柵と拒馬(きょば)を使い、ある程度の妨害工作に留め、壁や天井からの攻撃に備え、弓や槍を用意し、大楯なども用意した。



 「どうかな、使えそうか?」

 「ハイ、モンダイないかと」

 「そうか、じゃあここはゴブタロとコボジロに任せるから、しっかり仕込んでくれよ」

 「ワカリまし夕、オマカせクダさい」

 「よろしくな、俺らは集落に拠点を造ってるから、何かあれば報せてくれ」

 「リョウかいデス」


 ゴブタロとコボジロにゴブリン達の訓練を任せ、防衛力の向上に励んでもらう事にした。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 「ヒトシドノ、ワレラノタメニイロイロトスマナイ、イママデノヒレイヲワビル」

 「ん?今更だが良いよ、気にしてないし、同盟したからには、出来ることをしているだけだしな」

 「アリガタイガ、イマノワレラハナニモカエセナイ、ダカラワレラハ、ヒトシドノノシタニツクコトニシタ、コレカラハアナタサマニチュウセイヲササゲル」

 「はい?」

 ゴブリンキングが片膝をつき、仁に忠誠を誓い頭を下げた。


 「まあ、やっと気付いたのですか」

 「そうですな、主はダンジョンマスターとして、モンスター共の王としてくんり………モゴモゴ」

 「お前!それ以上は言わせねぇし、俺がそういうの嫌いだと言っただろうが!!」

 仁は、調子に乗り出したリッチを羽交い締めにし、口元をガッチリと抑え込み黙らせた。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 翌日、仁達は5階層のオークやホブゴブリンの戦士達を連れて、6階層でのレベル上げを試した。


 結果は上々で、これなら6階層の防衛力の強化が見込めると判断し、5階層での活動を各拠点のリーダー達に任せる事にした。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 仁達は一週間かけて6階層の防衛力向上に努め、7階層攻略の計画を立てる。


 「大体の準備は出来たな。明日から、7階層に行こうかと思うがどうかな?」

 「ふむ、問題ないと思いますが、人員は現地次第ですかな?」

 「うん、現地次第だな。現状で6階層の防衛力低下は避けたい」

 「リザードと遭遇する前提でしょうか?」

 「そうです、場合によっては我々が主力として、駆除していく事も考えています」

 「7階層の状況次第ということですな」

 「仁さま、氷結魔法を覚えては如何ですか?」

 「氷結魔法、なるほどトカゲなら寒さが弱点ですし、覚えましょうか」

 「そうですな、大賢者ならば上級魔法を使えてもおかしくないですから、この際上級魔法を全て学んでは如何ですかな?」

 「そうか、それもそうだな。よし、覚えてから7階層に行くか」

 「では、私がお教えいたしますわ」

 「…………、すみません、申し訳ないのですが、お断りいたします」

 「はい!?」

 「そうですな、主は通常の覚え方は為さらない方が、より強力な魔法を()()する故に、誠に恐縮ですが、アリア様のお心遣いは、主の()()()を阻害するかも知れませんな」

 「そんなぁ……」

 仁はアリアの魂胆を見抜き、リッチは仁の創造する魔法に興味がある故に、アリアの主張は却下されて、アリアはガックリと項垂れてしまった。

 これが、アリアに対する仁の初勝利であった。

 (ふぅ、何を為れるか分からんからな、後で穴埋めもしておこう)


 こうして、仁の上級魔法習得イベントの危機回避は成功したのだった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 仁は、上級魔法を覚えるのに必要な属性魔法すべてを覚える為に、魔法書を読みあさっていた。


 上級魔法とは、各属性魔法並びに、指定された条件を満たす必要がある。


 氷結魔法を覚えるには、火魔法のLv4と水魔法のLv6と風魔法のLv4を満たす必要がある。

 火魔法の温度調節、水魔法の形状維持、風魔法の冷却効果が条件と為れていたからだ。


 要するに、水を気化させ、風で冷却し、水魔法で水蒸気を集め凝固させる事で、Lv1のアイスショットという魔法が使えるのだ。


 水魔法と風魔法だけで覚える魔法はあるが、その魔法はストームという水魔法の上位魔法である。


 やはり氷結させる為の、急速冷却を可能にする為には、やはり火魔法の温度管理は必須であったのだ。



 「うーん、もう駄目だ。頭がパンクしそうだ……」

 「私が教え……」

 「お断りします!」

 「…………」

 「すみません、大声をだして……、しかし、こればかりは自力でないと、上手くいきませんので、お心だけは頂きます」

 仁はアリアに頭を下げた。


 「アリア様、以前に主の魔法鍛練を見て居られるので分かると思いますが、主の()()()()()()()を見たことはありますか?」

 アリアは仁の鍛練を思いだしたが、ファイアボールは戦闘時に見た記憶はあった。

 「ええ、何度も拝見しましたが」

 「実はですが、アレは主のファイアなのはご存知ですか?」

 アリアは意味が分からず、リッチに聞き直す。

 「はい?()()()()()()()ですよね?」

 「はい、でも主のファイアボールはエクスプロージョン級の見た目と威力なのですが、ご存知ですよね?」

 「…………?どういう事ですの?」

 アリアは意味が分からず、また聞き返してしまった。


 「アリア様が認識しているファイアボールは()()()()であり、アリア様の仰る()()()()()()()は、主が放つとエクスプロージョンと成るのですよ」

 「な!?なんですって!?……、本当ですか?」

 「ええ、主のファイアはファイアボールとして、ファイアボールはエクスプロージョンとして放てるのです」

 「え?あの時アレはエクスプロージョンではなく、ファイアボールでしたの?」

 アリアは仁がケガをした時の事を思いだした。

 「やはり認識が違っていたようですな、ですので主の為さるままに任せる方が、魔法使いにとって、革命的な魔法を創造しえるのです」

 「そ、それは……、すごいです!ファイアなのにファイアボールを放つなど、あり得るとは思いもしませんでしたわ。なるほど、だからこそ無尽蔵にファイアボールを放っていたのですね」

 「そうです、ファイアのMPでファイアボールを放つ、これは正に魔法の革命、魔法使いにとって夢が拡がることまずま……」

 「うるせー!!人が頭使ってる時に騒ぐんじゃねえよ!!まったく」

 「「すみません」」

 アリアとリッチは、仁の邪魔にならないように離れて、仁の魔法談義に花を咲かせた。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 「いいですか、ここからは来ないで下さい。何が起こるか分かりませんので、絶対近寄らないで下さい」

 「「分かりました」」

 仁は、目をキテキラとさせているアリアとリッチに釘を刺した。

 けしてフリではなく、二人を巻き込まない為に言って居るのだが、いまいち信用出来ずにいた。


 「やれやれ、何を期待しているか分からんが、いっちょやってみますか」


 仁は瞑想を開始した。


 何時もと同じように、集中力が高まり、心音を感じ、辺りのマナを感知していった。


 氷結魔法に必要なイメージを創り、ひとつずつ行程を熟していった。


 イメージは氷、威力は冷気


 ピキキと、空中で固まる氷の粒が幾つも現れ、地面に降り注いだ。


 「駄目か、詠唱方法(イメージ)が違うのか?」


 仁は再度、氷結魔法を紡いだ。


 イメージは氷雪、威力は吹雪


 ヒューと風か起こり、前方に小さな氷の粒が飛んでいく。


 「うーん、難しいな……」


 その後色々と試したが、アイスショットには成らなかった。


 「そうか、氷結魔法だし、氷じゃなく凍らせる方だな」


 イメージは結晶、冷却、威力は弾数、貫通


 ビキキと音が鳴り、無数の結晶が冷気を纏い、地面へと突き刺さりパリリリリと、地面が白く変わっていった。


 氷結魔法LvMAXになりました。


 「な!?なにーー!!」


 仁の叫びがアリア達を呼び寄せた。

 「如何しました?あ………、これは」

 「流石ですな、ブリザード級ですな」

 ブリザード、Lv6クラスの氷結魔法である。


 仁はアイスショットの詳細をリッチに聞いた。

 「そうか、まったく別物だったか」

 「ええ、見た目はアイスショットに近いものでしたが、威力はどう見てもブリザードですね」

 「これはこれで良いと思いますぞ」

 「いや、俺はアイスショットを覚える。要は弾数を減らし、対象を特定範囲以内に捉えればいいのだろう?」


 仁はアイスショットの練習を再開し、最終的には覚えたものの、アイスショットではあったが、威力は尋常ではなかった。


 結晶は5つまで減らし、最初は3㎝程のものだったが、着弾した場所では半径1mは凍りつき、結晶は周囲の水分で巨大化してしまい、より周囲に冷気をまき散らした。



 「やはり主は、素晴らしい才能の持ち主ですな」

 「アイスショットで、フリーズンを可能にするとは、思いませんでしたわ」

 「ぐぬぬ、解せぬ」


 氷結魔法の代表格フリーズンは、相手を凍らせ動きを止める魔法で、Lv3の氷結魔法である。


 仁はチーターまっしぐらであった。



チーターまっしぐらな仁は、あくまでもダンジョンマスターであり、戦闘職のスキルは大賢者の称号頼みのなので、そこはご理解下さい。

詳細はいずれネタバレの方にて……

次回、1/10(木)17時の予定です。



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