氷結魔法
仁編(本編)始まりです。
6階層のゴブリン達の集落は、ある問題を抱えていた。
ゴブリン達は、かつて8階層に住んでいたのだが、ここ数年、下の階層より上がってきたリザードの襲撃をうけ、じりじりと勢力圏を奪われ、7階層へと退避したのだが、そこでもリザードの襲撃を受けていたのである。
では、何故ゴブリンキングが6階層に居るのかについては、7階層での攻防戦において、あるリザードに呪われたからである。
カースリザードという特異個体のモンスターを倒したのだが、その時に筋力低下の呪いに掛かり、6階層の安全圏へと避難して来たからであった。
本来、ダンジョンにおいて階層が浅い場所、また入口から近い場所はレベルが低いものだが、仁が降り立った時点で、既に異常事態が起きていたのである。
始まりのダンジョンは、文字通り初心者用のダンジョンであった。
だが、この世界の人々が滅び、ダンジョンを管理する管理者である神が去り、ダンジョンの魔物を倒し、闇の力を削ぐ人々が不在という事態により封印が弱まり、下層の魔物達が徐々に上層へと、上がってきているのであった。
何年もの間に、何度も下層のモンスターが上ってきては、上へとモンスターが移動を繰り返し、5階層にレベル30が居る異常事態が起きていた事に、仁は気付かずに居たのである。
当初、神々が予定していた始まりのダンジョンは、5階層を約一日でクリア出来るように、設計されていたのだが、管理者の職務放棄というアクシデントにより、地下に封印されている魔獣による侵蝕が進み、5階層であったはずの始まりのダンジョンは20階層まで進み、まさに異常事態にあった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ということだが、どうだ?」
「………、ワカッタ、ドウメイトヤラガワカランガ、アリアサマニツカエラレルノデアレバ、モンダイナイ」
仁は、ゴブリンキングの事情を知り、同盟を結び階層攻略の約定をかわしたのである。
「どうやらかなり深刻な状況らしいな」
「そうですな、某が出会ったアレは魔神の手の者であったと見てよいかと思いますな」
「…………、今確認が取れました。どうやら、かなりの確率で魔神の力が増しているようです」
「……、ゼノス様は知っていらしたのですか?」
「そのようです。だからこそ私を此方に寄こしたのでしょう」
「はぁ、やるしかないか……」
「そうですな、某も微力ながら参戦させて頂きます」
「私も……」
「駄目です!アリア様は女神なのですよ、奴等の相手は私の役目なのです。手出し無用でお願いします」
「そうですぞ、きゃつらの相手は某のようなモンスターで十分ですぞ」
「分かりました……」
仁はアリアの参戦は認めず、リッチも同様にアリアを諫め、その後ろに控えていたゴブリンキングは肯き、アリアは諦めるのであった。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
「族長、すまないがそういう事で、もう暫く我慢してくれるか?」
「いえ、カレらもワレワレとオナじキョウグウであるとワカり、なんのフフクもアりません。キョウリョクデキるコトがアりましたら、ゼヒモウしツけてクダさい」
「ありがとう、感謝する。是非協力を頼むよ」
仁はホブゴブリンの長の手を取り、固く握手をしながら感謝を述べた。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
仁達は6階層の探索を進め、粗方のマッピングを終え、ゴブリンキングの協力の下に、ゴブリンやオオカミ達を使い資源を回収し、彼方此方にある集落を強化していく事にした。
万が一に備え、防衛力の強化は為べきとキングに提案し、キングも了承したので、7階層の入口に近い場所から着手していった。
相手がリザードとい点において、落とし穴は使わず、馬防柵と拒馬を使い、ある程度の妨害工作に留め、壁や天井からの攻撃に備え、弓や槍を用意し、大楯なども用意した。
「どうかな、使えそうか?」
「ハイ、モンダイないかと」
「そうか、じゃあここはゴブタロとコボジロに任せるから、しっかり仕込んでくれよ」
「ワカリまし夕、オマカせクダさい」
「よろしくな、俺らは集落に拠点を造ってるから、何かあれば報せてくれ」
「リョウかいデス」
ゴブタロとコボジロにゴブリン達の訓練を任せ、防衛力の向上に励んでもらう事にした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ヒトシドノ、ワレラノタメニイロイロトスマナイ、イママデノヒレイヲワビル」
「ん?今更だが良いよ、気にしてないし、同盟したからには、出来ることをしているだけだしな」
「アリガタイガ、イマノワレラハナニモカエセナイ、ダカラワレラハ、ヒトシドノノシタニツクコトニシタ、コレカラハアナタサマニチュウセイヲササゲル」
「はい?」
ゴブリンキングが片膝をつき、仁に忠誠を誓い頭を下げた。
「まあ、やっと気付いたのですか」
「そうですな、主はダンジョンマスターとして、モンスター共の王としてくんり………モゴモゴ」
「お前!それ以上は言わせねぇし、俺がそういうの嫌いだと言っただろうが!!」
仁は、調子に乗り出したリッチを羽交い締めにし、口元をガッチリと抑え込み黙らせた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
翌日、仁達は5階層のオークやホブゴブリンの戦士達を連れて、6階層でのレベル上げを試した。
結果は上々で、これなら6階層の防衛力の強化が見込めると判断し、5階層での活動を各拠点のリーダー達に任せる事にした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
仁達は一週間かけて6階層の防衛力向上に努め、7階層攻略の計画を立てる。
「大体の準備は出来たな。明日から、7階層に行こうかと思うがどうかな?」
「ふむ、問題ないと思いますが、人員は現地次第ですかな?」
「うん、現地次第だな。現状で6階層の防衛力低下は避けたい」
「リザードと遭遇する前提でしょうか?」
「そうです、場合によっては我々が主力として、駆除していく事も考えています」
「7階層の状況次第ということですな」
「仁さま、氷結魔法を覚えては如何ですか?」
「氷結魔法、なるほどトカゲなら寒さが弱点ですし、覚えましょうか」
「そうですな、大賢者ならば上級魔法を使えてもおかしくないですから、この際上級魔法を全て学んでは如何ですかな?」
「そうか、それもそうだな。よし、覚えてから7階層に行くか」
「では、私がお教えいたしますわ」
「…………、すみません、申し訳ないのですが、お断りいたします」
「はい!?」
「そうですな、主は通常の覚え方は為さらない方が、より強力な魔法を創造する故に、誠に恐縮ですが、アリア様のお心遣いは、主の可能性を阻害するかも知れませんな」
「そんなぁ……」
仁はアリアの魂胆を見抜き、リッチは仁の創造する魔法に興味がある故に、アリアの主張は却下されて、アリアはガックリと項垂れてしまった。
これが、アリアに対する仁の初勝利であった。
(ふぅ、何を為れるか分からんからな、後で穴埋めもしておこう)
こうして、仁の上級魔法習得イベントの危機回避は成功したのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
仁は、上級魔法を覚えるのに必要な属性魔法すべてを覚える為に、魔法書を読みあさっていた。
上級魔法とは、各属性魔法並びに、指定された条件を満たす必要がある。
氷結魔法を覚えるには、火魔法のLv4と水魔法のLv6と風魔法のLv4を満たす必要がある。
火魔法の温度調節、水魔法の形状維持、風魔法の冷却効果が条件と為れていたからだ。
要するに、水を気化させ、風で冷却し、水魔法で水蒸気を集め凝固させる事で、Lv1のアイスショットという魔法が使えるのだ。
水魔法と風魔法だけで覚える魔法はあるが、その魔法はストームという水魔法の上位魔法である。
やはり氷結させる為の、急速冷却を可能にする為には、やはり火魔法の温度管理は必須であったのだ。
「うーん、もう駄目だ。頭がパンクしそうだ……」
「私が教え……」
「お断りします!」
「…………」
「すみません、大声をだして……、しかし、こればかりは自力でないと、上手くいきませんので、お心だけは頂きます」
仁はアリアに頭を下げた。
「アリア様、以前に主の魔法鍛練を見て居られるので分かると思いますが、主のファイアボールを見たことはありますか?」
アリアは仁の鍛練を思いだしたが、ファイアボールは戦闘時に見た記憶はあった。
「ええ、何度も拝見しましたが」
「実はですが、アレは主のファイアなのはご存知ですか?」
アリアは意味が分からず、リッチに聞き直す。
「はい?ファイアボールですよね?」
「はい、でも主のファイアボールはエクスプロージョン級の見た目と威力なのですが、ご存知ですよね?」
「…………?どういう事ですの?」
アリアは意味が分からず、また聞き返してしまった。
「アリア様が認識しているファイアボールはファイアであり、アリア様の仰るファイアボールは、主が放つとエクスプロージョンと成るのですよ」
「な!?なんですって!?……、本当ですか?」
「ええ、主のファイアはファイアボールとして、ファイアボールはエクスプロージョンとして放てるのです」
「え?あの時アレはエクスプロージョンではなく、ファイアボールでしたの?」
アリアは仁がケガをした時の事を思いだした。
「やはり認識が違っていたようですな、ですので主の為さるままに任せる方が、魔法使いにとって、革命的な魔法を創造しえるのです」
「そ、それは……、すごいです!ファイアなのにファイアボールを放つなど、あり得るとは思いもしませんでしたわ。なるほど、だからこそ無尽蔵にファイアボールを放っていたのですね」
「そうです、ファイアのMPでファイアボールを放つ、これは正に魔法の革命、魔法使いにとって夢が拡がることまずま……」
「うるせー!!人が頭使ってる時に騒ぐんじゃねえよ!!まったく」
「「すみません」」
アリアとリッチは、仁の邪魔にならないように離れて、仁の魔法談義に花を咲かせた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「いいですか、ここからは来ないで下さい。何が起こるか分かりませんので、絶対近寄らないで下さい」
「「分かりました」」
仁は、目をキテキラとさせているアリアとリッチに釘を刺した。
けしてフリではなく、二人を巻き込まない為に言って居るのだが、いまいち信用出来ずにいた。
「やれやれ、何を期待しているか分からんが、いっちょやってみますか」
仁は瞑想を開始した。
何時もと同じように、集中力が高まり、心音を感じ、辺りのマナを感知していった。
氷結魔法に必要なイメージを創り、ひとつずつ行程を熟していった。
イメージは氷、威力は冷気
ピキキと、空中で固まる氷の粒が幾つも現れ、地面に降り注いだ。
「駄目か、詠唱方法が違うのか?」
仁は再度、氷結魔法を紡いだ。
イメージは氷雪、威力は吹雪
ヒューと風か起こり、前方に小さな氷の粒が飛んでいく。
「うーん、難しいな……」
その後色々と試したが、アイスショットには成らなかった。
「そうか、氷結魔法だし、氷じゃなく凍らせる方だな」
イメージは結晶、冷却、威力は弾数、貫通
ビキキと音が鳴り、無数の結晶が冷気を纏い、地面へと突き刺さりパリリリリと、地面が白く変わっていった。
氷結魔法LvMAXになりました。
「な!?なにーー!!」
仁の叫びがアリア達を呼び寄せた。
「如何しました?あ………、これは」
「流石ですな、ブリザード級ですな」
ブリザード、Lv6クラスの氷結魔法である。
仁はアイスショットの詳細をリッチに聞いた。
「そうか、まったく別物だったか」
「ええ、見た目はアイスショットに近いものでしたが、威力はどう見てもブリザードですね」
「これはこれで良いと思いますぞ」
「いや、俺はアイスショットを覚える。要は弾数を減らし、対象を特定範囲以内に捉えればいいのだろう?」
仁はアイスショットの練習を再開し、最終的には覚えたものの、アイスショットではあったが、威力は尋常ではなかった。
結晶は5つまで減らし、最初は3㎝程のものだったが、着弾した場所では半径1mは凍りつき、結晶は周囲の水分で巨大化してしまい、より周囲に冷気をまき散らした。
「やはり主は、素晴らしい才能の持ち主ですな」
「アイスショットで、フリーズンを可能にするとは、思いませんでしたわ」
「ぐぬぬ、解せぬ」
氷結魔法の代表格フリーズンは、相手を凍らせ動きを止める魔法で、Lv3の氷結魔法である。
仁はチーターまっしぐらであった。
チーターまっしぐらな仁は、あくまでもダンジョンマスターであり、戦闘職のスキルは大賢者の称号頼みのなので、そこはご理解下さい。
詳細はいずれネタバレの方にて……
次回、1/10(木)17時の予定です。




