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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第一章、始まりのダンジョン
57/206

閑話.新年会

明けまして、おめでとうございます。

今年も、よろしくお願いいたします。





 「今年もあと少しですね、マスター」

 「そうだな、今年は少し休みたいな」

 「そうですね、やっとここに戻って来られたのですから、ゆっくり過ごすのも良いかと思います」


 「230……、235年前か?」

 「ええ、235年と335日前になります」

 「すげえ、よく覚えてるよな」

 「それは、仁さまとめぐり逢い、生まれ変わった、私と仁さまの始まりの日ですし、当然の事です」

 「…………、ブレないよな、俺の何処が良いの?未だに納得出来ないんだが」

 「それは仁さまですから、それ以上の理由は在りません」

 「…………、意味分かんないんですけど、というやり取りも、毎年してるしな……、今年ぐらいは休もう」


 という会話をしているが、アーストエルドには、四季も無ければ、1年間の気温も20度前後と余り変化もない。

 それ故、年末年始という概念も無かったのである。


 ただ1年を365日と仁が決め、それをこの地の人族の王に伝え、年間の予定を管理しなさいと、言った事が()の始まりだったのだ。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 「うーん、暇だな」

 「はい、暇ですね」

 「子供たちは仕事だったよな」

 「そうですね、仕事だと思います」

 「よし、なんか作るか」

 「はい、お手伝いします」

 「んー、ならお節料理は任せていいかな?俺は餅つきの支度すっから」

 「分かりました。あんこは如何します?」

 「ん、両方かな……、好き嫌いあるしな、そういえば醤油とかはまだあるかな?」

 「そろそろ、補充した方が良いかも知れません」

 「分かった。他の補充もしようか、砂糖もかなり使ってるしな」

 「よろしくお願いします」


 休むと決めた仁だが、何だかんだと仕事をしだすのであった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 仁とアリアは、マーク家を訪れ餅つきのイベントを開始する。


 「すみません、お手伝いまでしてもらい、お仕事は大丈夫ですか?」

 「大丈夫ですよ、この時期は暇ですし」

 「そうですか、ではよろしくお願いします」

 「「「「はい」」」」


 仁は、餅つき用の臼と、大人用と子供用の杵、もち米を蒸かすせいろやかまどを設置した。


 「まず湯を沸かしましょうか」

 「分かりました。どれ位必要ですか?」

 「そうですね、餅つきはお湯が欠かせないので、餅つきが終わるまで、何度でも沸かさないといけませんので、餅つきが終わるまでですね」

 「ふむ、それは大変ですね」

 「ええ、餅つきは大変な仕事ですが、大変だからこそ、新年のご馳走や年神様へのお供えとして、欠かせない行事なんです」

 「そうなんですか、では気合いを入れないといけませんね」

 「まあ初めてでしょうし、最初は私がやりますので、見ていて下さい」


 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆


 仁は、かまどの釜で湯を沸かし、せいろの準備をする。

 せいろの中には木綿の布が敷かれ、そこへ一晩水に浸したもち米を入れ、布で包みもう一段せいろを乗せ、中に布を敷きもち米を乗せ、同じように包み、もう一段同様にせいろともち米を入れ蓋をした。


 「これで大体45分ぐらい蒸かします」

 「45分ですか?」

 「ええ、もち米に芯が無くなれば出来上がりですが、気温で蒸かす時間が変わりますね。因みにもち米を水に浸す時間も変わるので、それも忘れないで下さい。大体、一晩が目安なんで、寒ければ時間を伸ばす感じで問題ないでしょう」

 「「「「分かりました」」」」



 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 「もちをつく前に、臼と杵は水で一晩、つく前はこうやって湯で温めて下さい」

 仁は臼に入っていた湯を捨てて、さっと水分を拭った。


 「そろそろもち米を上げても、いい頃合いでしょう」

 仁は、せいろを一段とり、中にあるもち米を包んだ布ごと、臼に放り込んだ。

 「こんな感じです」

 仁は、蒸し上がったもち米を味見させた。

 「これ位に蒸かしたもち米を、手早く潰します」

 仁は、臼の中にあるもち米を、杵で満遍なく、もち米を潰していく。

 「こうして、潰れて粒がなくなり、粘りが出るまで杵で潰します」

 「ほえ~」

 「で、ここからが本番です、アリア」

 「はい」

 アリアが臼の前に屈み、お湯の入った桶に手を浸け、潰れたもち米をまとめお湯をひと塗りした。

 その間に仁は杵をお湯で濡らし、軽くもち米を突いていく。


 アリアがもち米をまとめ、仁がすかさず杵で突く、そしてアリアがまたもち米を返して、仁が突く。

 村人がその繰り返される作業を見詰め、しばらく無言で見守った。


 「そろそろいくぞ」

 「はい」

 「はっ!」

 トスッ!ともち米に振り落とされる杵が、次の瞬間仁の頭上へと振り上げ、その合間にアリアが餅を真ん中へと被せるように形を整える。

 「はっ!」と仁が発すると、餅へと杵が振り下ろされ、また振りかぶる。

 その流れるような動きに、仁とアリアは一体となり、次第にもち米は餅へと変わっていった。

 村人達は、唖然として仁とアリアを見詰め、感動していた。


 「そろそろいいかな?」

 「はい、十分かと思います」

 「ん、それじゃ、あげようか」

 仁は、大きめのボールに餅取り粉を塗し、つきたての餅を鏡もち用と試食用に分け、試食の支度をする。


 「つきたての餅は柔らかいので、注意して下さい」

 仁は、餅を粉を撒いてある台の上に乗せ、湯で濡らした手で餅を捻り出し、一口サイズの団子にしていく。

 粉の上に転がり粉が付き、アリアがそれを回収して、お皿に並べていった。

 そして、事前に用意していた、特製の醤油で餅の試食をする。


 「うん、上出来だな。どうぞ皆さんも試食して下さい」

 「え?、もう食べるのですか?」

 「どうぞどうぞ、つきたては旨いですよ」

 「では、頂きます……」

 「この醤油に軽くつけて食べて下さい」

 マイクさんが餅を一つ取り、醤油をつけて一口囓った。


 「ん?んん!?……、こ、これは旨いですね。柔らかくモチモチとして、お米と違う香りと甘さがあって、この醤油ですか?香ばしくて、ほんのりと酒の香りがしていて、より餅が美味しく感じますね」

 「ええ、つきたての餅は、この醤油で食べるのが、一番旨いと思いまして」

 「餅とは、こんなにも美味しいものなのですね」

 「お気に召したようで何よりです」

 村人達も餅を試食して、つきたて餅を堪能したのだった。


 仁は皆が試食している合間に、取り置いた餅で鏡もちを作り、保管場所に移した。


 「さてと、次は皆さんの番ですね」

 「あ、はい……、私達でも出来るでしょうか?」

 「大丈夫ですよ、人数もいますし三人一組なら、そんなに難しくないでしょう」

 「分かりました、頑張ります」

 「では、まずマイクさんとジークさんで餅を突く側、ミアさんが餅を返す側でやりましょうか」

 「「「はい」」」

 「アリア、もち米はどうかな?」

 「はい、もう準備は出来てます」

 「よし、なら始めようか」

 「「「よろしくお願いします」」」

 仁とアリアは、先ほどの工程を指導して、三人に餅つき体験をして貰った。



 「どうです?初めての餅つきは?」

 「はい、難しいですが、楽しかったです」

 「ちょっと怖かったですが、ちゃんと声かけすれば、出来るものなのですね」

 「そうですね、餅つきは互いの意思疎通が大事ですね。後はリズム感も重要ですね」

 「リズムですか?」

 「ええ、ダンスと同じですよ。相手のリズムに合わせないと、上達はしませんよね」

 「「なるほど」」


 「では、皆さんもやってみましょうか」

 村人達も、それぞれの組みで餅つきを始め、餅つきを楽しんだのだった。



 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 「はい、お汁粉できたよー」

 「はーい」

 「あべかわ餅下さい」

 「あいよー」

 「おれ、磯辺巻きで!」

 「あいよ、君は?」

 「えーと、全部下さい!」

 「「「食い過ぎだろ!」」」

 子供たちも餅をつき、それぞれが自分たちでついた餅を、それぞれの食べたい味で、餅を味わった。


 「甘いのも、しょっぱいのも美味しいよね」

 「お団子も、お汁粉も旨いと思う」

 「黒いので巻いたお餅も良いよね」

 「はあ、お腹いっぱいだよ」

 「うん、もうお腹いっぱいだけど、もう少し食べたいな」

 「「「「うん」」」」


 仁は、餅をたらふく食べた子供たちを眺めて、和んでいた。


 「やっばり良いな、子供たちが幸せそうにしているのは」

 「そうですね」

 「もっとちゃんとした世界にしないとな」

 「順調に計画は進んでいます。後は、あの子達が何処まで成長するかですね」

 「そうだな、出来うる事はして行かないとな」


 仁は考える。

 もっと人々は、強く成らねばならない。


 彼奴らの復活は、あと800年をきり、目覚めの時が来るのだ。


 始まりのダンジョンは、試練の始まりを意味してる。


 仁が降り立ち初めて支配した。

 そして、各地へと旅立ち、仲間たちと共に闘い始めた、約束の地なのである。


 各地の封印と攻略により、大半の仲間は散っていった。


 だが、彼等のお陰で、かなりの時間を稼ぐ事ができ、この世界はやり直すチャンスを与えられた。


 この世界が生き残るには、各地の封印に眠る魔獣を倒さねばならない。


 その為に、ここから巣立った仲間たちが、各地のダンジョンで、奮戦中なのだ。


 後は、人族、獣人族、魔人族を団結させ、魔獣を討伐し、魔神の闇の力をそぎ落とし、この世界を立て直す事が目的なのだから。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 仁はとある場所にいた。

 「まだ生きているか?」

 「…………」


 「ふむ、生きてはいるが、やはり駄目だな」

 「如何しますか?」


 仁は、顎に手をやり考える。

 「闇に魅入られたとはいえ、こいつも哀れだな」

 「魔神の眷族になれば、致し方ないことです」

 「分かってはいるが、人族は弱すぎるんだよ、肉体も精神的にも脆弱すぎる」

 「欲望むき出しですと、つけ込み易いでしょうね」


 「人を騙し利用し、中から壊していくのは、戦略的に容易いからな、特にそいつが馬鹿なら他人を巻き込んで、未来まで祟り自爆するから厄介だよな。俺の居た世界が、そういう世界だったと、あの方は教えてくれたよ」

 「滅ぶ世界の典型例ですね」


 「この世界も同様に滅んだしな、人族にはもっと強くなって貰わんと、せっかくの可能性が台無しだよ」

 「獣人族のパワー、魔人族の強かさ、人族の可能性は神から与えられた祝福ですが、人族だけが未だに駄目ですからね」

 「それな、やはり寿命の短さがネックだよな。いま40まで生きれば長生きとか、短すぎて学ぶ前に死んでしまうからな。獣人族が80で魔人族が120だからな、差があり過ぎるよな」


 「獣人族や魔人族の方達は、仁さまの言い付けを守ってますし、だいぶ改善されましたね」

 「まあ、彼奴らは基本タフだし、元から弱い人族は、闇にのまれやすいんだよ。こいつの場合がそうだ、己を過大評価し、他人を見下すことで快感を覚えると、あっという間に闇に落ちる。幼少期に優秀だと、尚更評価が気になり、他人を貶めてでも自己愛に突っ走るからな、魔神が眷族として利用し、内部崩壊の使徒に使うのは当然だよな」


 「エルリック・カーラント、元公爵家の次男ですか、如何しますか?」

 「……、とりあえず眷族化は封印したが、馬鹿は治らんしな、この状態だと何時テロに走るか分からんし、このまま様子を見よう」

 「分かりました、マスター」



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 「「明けまして、おめでとうございます」」

 「え?あけまして?」

 「ん、新年の挨拶な、年明けに、おめでとうってことだな」

 「なるほど、明けまして、おめでとうございます」


 仁達は、マイク家に顔をだし、新年の挨拶を交わし、新年会に誘って子供たちと合流した。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 「「「「明けまして、おめでとうございます!」」」」

 「はい、おめでとうございます」

 仁は、子供たちにお年玉を配り、ひとりずつ挨拶を交わした。


 「スゲえ、銀貨1枚だ……」

 「初めて見たな……」

 仁は苦笑いをしていた。

 「お前たち、普通に仕事で稼いでいるのに、本当に銀貨で良いのか?」

 「うん!銀貨で買うことなんてないし、落としたら怖いもんな」

 「そうだよね、落としたら怖いよね」

 「そうか、なら良いが落とすなよ」

 「「「「はーい」」」」


 「では、これより新年会を始めます。皆さん、明けまして、おめでとうございます。今年も、宜しくお願い致します。色々とご馳走をたくさん用意してありますので、遠慮なく食べて、飲んでいって下さい」

 「「「「ありがとうございます!」」」」

 「では、かんぱーい!」

 それぞれが手に持ったグラスを掲げ、飲み物を飲み新年を祝った。


 「なんだこれ!?」

 「うわっ!かっけー!」

 「た、食べれるのかな?」

 「真っ赤だし、硬そうだぜ、無理じゃね?」

 子供たちは、伊勢海老を見て、それぞれが感想を述べ合う。

 仁は伊勢海老をむんずと掴み、頭部と尻尾を持ち、折り曲げ引きちぎり、殻を剥いて子供たちに差し出した。


 「おお!す、スゲえ、バックリ割れるとか、流石に思いもしない展開」

 「食べれるんだ……」

 「いただきます……、う、うまあ!」

 「マジか!」

 子供たちが伊勢海老を掴み、仁のやり方をまねして、食べだした。

 大人達も伊勢海老を食べだし、絶賛するのだった。


 「なら、これはどうかな?」

 仁は、ズワイガニを丸のまま出した。

 「え?デカっ!」

 「スゲえ、また違うのがあんのか……」

 仁は、脚をもぎ取り、包丁で切り目をいれ、すっと殻から身を引き出し、醤油を少しつけて子供たちに渡していった。


 「「「「………………………」」」」

 子供たちは、涙を流していた。

 「う、旨いよ……、母ちゃんに食わしてやりたい……」

 「うん、弟たちにも食べさせてあげたい……」

 「…………、うぅ…………」

 効果は絶大だった。


 「す、すまん、やり過ぎだったな」

 「あ、あの……、私達も頂けますか?」

 「え?カニの刺し身をですか?」

 大人達は、生唾を溜め飲み込む程に、興味津々だった。


 「はい、どうぞ」

 「「「「ありがとうございます」」」」

 一人一本ずつカニの脚をもち、醤油をつけて食べてみた。


 「「「「……………………」」」」

 大人達も涙を流していた。

 「くぅ、うめぇ…………」

 「こんな食べ物があるなんて……」

 「母ちゃんに食べさせてやれないのか……」

 「うぅ、もうちょっと長生きできて居れば……」

 仁は調子にのった事を後悔した。

 「すみませんでした!」

 仁は土下座して謝ったのだった。



 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 「いやぁ、仁殿、すまないな」

 「いえ、大勢の方が楽しいですし、酒も食べ物もたっぷりあるので、問題ないですよ」

 「そうだぞ、アルフレッド、何も問題ないぞ、ヒック……」

 「ガイアは飲み過ぎだろ、明日の仕事は大丈夫か?」

 「ガハハ、仕事などリカバリー一発で問題ないぞ、それよりここの酒は吞まないと、次何時呑めるのかが問題だぞ、だから呑むのが正解ってもんよ!ガハハ」

 「そうか!そうだな、よし吞もう!」

 ガイアが乱入してきたかと思いきや、領主のアルフレッド・カーラント公爵本人が来るなど、マイク家並びに村民達は平伏し、仁は苦笑いするしかなかったのであった。


 後日、公爵家から金貨100枚が仁の処へと贈られたが、流石に突っ返すことも出来ず、村の土地を借りているので、村の開発資金として、村長に預かって貰った。

 当然、村長は受け取ろうとは為なかったが、子供たちの為だと言い含め、受領して貰ったのであった。

 実際、この年の子供たちの人数が増えたので、結果オーライであった。



年末年始のPV一桁とか、笑ってしまいましたが、マイペースで行こうと思い書きました。

まだまだ2ヵ月ですし、予定の1割以下なので頑張ります。

次回は、来週の1/8(火)予定です。



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