ホブゴブリンの願い
6階の攻略開始です。
仁達は、5階からの階段を下り、6階へ到達した。
「まだ洞窟タイプか、リッチ、前は如何だった?」
「そうですな、正確には覚えてませんが、6階から変化していったと記憶しています」
「そうか、よし、いつも通りに行くとするか、ジェット頼むぞ」
ウォフッと、ひと鳴きして索敵を開始した。
通路と少し広め部屋が彼方此方にあり、マッピングをしていった。
「まったく別物ですな、某が来たことのないタイプです」
「だいぶ前なんだよな」
「はい、申し訳ないですが、覚えてない程の昔故に……」
「仕方ないさ、ダンジョンだしな、変わるものなんだろう」
ウォフッと、ジェットが警戒して姿勢を低くしていく。
「また来たか……、警戒!」
仁の声に無言で了解した、オッグ達は戦闘体勢をとった。
オオカミ Lv25
HP.75/75
6階に入り、頻繁にオオカミ達と遭遇している。
余り強くはないが、素早く数も4~6頭と多く、油断出来ない戦闘が続いていたのだった。
「しかし、弱いが多いな、皆も気を抜くなよ、特にリッチは狙われているからな」
「了解です。某の躰にまっしぐらですからな」
ハッハッハッとリッチが笑い、仁が呆れていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
マッピングである程度のパターンが判明し、東の奥まった処に宝箱の部屋を発見した。
宝箱【中級】
罠が掛かった宝箱。
中には武具がランダムで入っている。
「またか、今度こそ罠には掛からんからな!」
「そうですな、主は毎度引っ掛かってますからな」
「な、何故知っている!」
「皆から聞きました故」
むぅとむくれた仁は、宝箱の蓋に仕掛けを施し、部屋を出た。
「準備は出来た、いくぞ!」と、仁は紐を引いたが、宝箱の蓋は開かなかった。
「ん?………ぬぅ、くっそ重い……」
「どうしました?」
「……、重くて開きません。……、どうなってんだ?皆は入るなよ」
仁は部屋に入り、宝箱を調べた。
「な、なんだと、蓋じゃないのか!?……、何処だ?」
仁は宝箱の構造を調べ出した。
「ん?なにこれ……!?」
仁が宝箱の蓋部分の突起を押したのだが、押したと同時にふっ飛んだ。
「ぐぬぬ、なにが起きた……」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です。それより宝箱は?」
「あら……、見当たりませんね」
「え?…………、あ、あった」
仁は真上を見詰めていた。
「またか、何がしたいんだ!!」
「埋まってますな……」
「舐めやがって、設置した奴出てこい!」
怒りの余り、宝箱の中身はどうでもよくなったのだった。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
仁達は、宝箱の部屋で休憩を取った。
「毎度だが、頭がおかしい奴なのだろうな」
「そうですな、武具を渡したくないのですかね?」
「如何でしょう?必要性はないと思いますが、罠にはめて笑っている気がしますね」
アリアは真上を指差しながら、憤りの笑みを浮かべていた。
「ぐぬぬ、まあいいか、もう開けなければ良いだけだしな」
「そうですな、そうしましょう」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
部屋から出て、探索を再開した仁達は順調に攻略していた。
「どうだ?」
「この近くに在るそうですぞ」
「そうか、慎重にいこうか」
「「はい」」
仁達は、ある場所へと向かっていた。
「あれか?」
「ハイ、あそコデス」
「なら、先ずは偵察だな」
仁達は、目標となる連中から、隠れながら移動した。
ゴブリンキング Lv40
HP.720/720
「いたぞ、キングLv40か……、40は初めてだな」
「40ですか、主の魔法なら大丈夫ですぞ」
「…………、よし覚悟を決めようか、向こうがやる気なら、最初に一発カマスから、フォローよろしく」
「「「「リョウかい」」」」
仁は皆を引き連れ、集落へと向かった。
集落に近づくと、オオカミ達が仁達を威嚇しだし、ゴブリン達が集まりだした。
「やはりここから来てたのか……」
「結構倒しましたが、これは多いですな」
「とりあえず手は出すなよ」
仁は皆に指示をだし、ひとり前へと進み、声をあげる。
「俺は田中仁、ダンジョンマスターだ!ゴブリンの長と話しがしたい!」
オオカミ達が吠え、ゴブリン達が武器を掲げ襲ってきた。
仁は呆れ、ゴブリン達の中心へとテレポートで転移する。
「君たちにプレゼントだ」と仁は大量の水を頭上に生み出した。
次の瞬間、仁がかき消え、水が降り注ぐ
ダッパーーン!!と地上に叩きつけられた大量の水が一気に拡がり、ゴブリン達を洗い流していった。
「おお!凄いですな」
「綺麗になりましたね」
「まだ臭いけど、まあ仕方ないか……」
仁達は、集落の外へと流れていくゴブリン達の姿を眺め、落ちつくまでキングの出方を探った。
「動きませんね」
「……、同じなのかも知れませんね」
「まあゴブリンの王ですし、変わらんのでしょうな」
「もう良いか、ちょっと行ってききす。残党をよろしく……」
「「はい」」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
仁は、ゴブリンキングの居場所へと転移した。
「よう、こっちから来てやったぞ」
キングは驚きもせず、仁を見詰めていた。
「ん?あいそのない奴だな。俺は田中仁、ダンジョンマスターだ、よろしくな」
「……、ダンジョンマスター?」
「……、それだけか?」
「…………、フン」
「はあ、まあいいか。ここはホブゴブリン達の居場所だったそうだな、明け渡して貰いたい。と言っても、行き場がないのだろ?」
キングは怠そうにしている。
「どうした、具合でも悪いのか?」
「………………、ダッタラドウスルノダ」
「ん?待て本当に具合が悪いのか?ちょっと触れるが良いか?」
「…………、フン」
キングは目を瞑り、動く気はなかった。
仁は鑑定し、情報を探った。
「これは……、ちょっと待ってろよ」
仁は第3へとテレポートした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
第3に転移してきた仁は、工房にて薬の作成準備を開始する。
「えっと、白と青と……、角?まあ召喚でいいか」
あれこれと素材を揃え、解呪薬を作り始めた。
キングは、筋力低下の呪詛を受けていたのである。
「よし、ディスペルポーション完成、30回に1つか、作成レベル上げないとな……」
仁は呟き、6階のゴブリンキングの居る場所へと、テレポートした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
キングの居る広間に転移して来たが、そこにはアリアが待ち構えていた。
「仁さま?ご無事でしたか」
「ええ、ちょっと薬を作りに第3に行ってました、あれ?」
ゴブリンキングは、土下座していた。
「え!?何してんすか!」
「はい?ゴブリンキングの治療をしただけですが?」
「……、ん?治療ですか?解呪ではないので?」
「はい、ヒーリングで十分です」
「な、なんだと……、女神の力か、マジかぁ」
仁はガックリと項垂れたのだった。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
「どうかな、具合は」
「カナリカイフクデキ、アリアサマニハ、カンシャシテイル」
「そうか、ではまた日を改めて来るので、今日の処は養生してくれ」
「オキヅカイ、アリガタイ、アリアサマニモ、オレイヲシタイト、ツタエテホシイ」
「分かった、伝えておくよ。ではお大事に」
仁は、ゴブリンキングの元を辞去し、皆の居る場所へと向かった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「待たせたな、今日は帰ろうか」
「キングは如何するのですかな?」
「そうだな……、アリア様、治療ありがとう御座います。でもひとつ問題が、キングがお礼を言いたいといっていました」
「はあ、それで何が問題なのですか?」
「なるほど、惚れて居るのですな」
「そうです。キングは貴方に忠誠を捧げたい様子でした」
「え?それは困ります。私は仁さまと居たいのです。それなのに、ゴブリンキングと一緒では、機会も減ってしまいます」
「…………、気持ちは分かりますが、此ばかりは私では、どうにもなりませんので……」
「そんなぁ……」
「治療が徒になりましたな」
「そうだな、もう少し待って頂けたら、避けられた事です。申し訳ない……」
「…………、如何したら良いのでしょう?」
「貴方の言葉と対応しだいとしか、ですが、余り期待できないと思います」
「そうですか、はぁ……」
仁もアリアと同時にため息をついた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
仁達は、ホブゴブリン達を第6へ送り、ゴブリンキングと交渉出来そうだと長に伝え、中央拠点へと帰還したのだった。
「面倒な事になったが、ホブゴブリン達には朗報になったな」
「そうですな、アリア様の献身の賜物ですな」
「……、イジメないで下さい」
よよよと、アリアは悲しむフリをする。
「褒めてるのですよ?」
「そうですぞ、アリア様でなければ、ゴブリン達を殲滅した可能性すらあったのです」
「交渉もし易いでしょうし、私ではとてもすんなりとは、行かなかったでしょう」
「意地悪です!どうせ私は嫌われて居るのですね……」
シクシクと泣くマネをするアリアである。
「すみません、嫌っている訳ではないのです。ただ面倒になってるだけで、意地悪を言って困らせようともしていません……」
「……、!?ふぇ?」
仁は拗ねてるアリアを引き寄せ、呟いた。
「今はこれ以上は出来ません。許して下さい」
「はい……」
アリアは仁の胸の中で、甘えたが心はヤッタ一!と叫んで居たのである。
しかし仁は、これでしばらくは大丈夫だよなと、考えて居たのであった。(やっぱ俺には、まだ恋愛は無理だよ……)
そんな仁とアリアを監視しているギャラリーの存在がいる場所で、激しい闘いが起きて居るとは思いもしない事である。
─── ─── ─── ─── ───
「此だから男はダメなのよ!」
「うっせえ!女も似たようもんだろが!」
「なんですってぇ!?」
「ああ!?やんのか!?」
「ヤレヤレまたか……」
「まあ何時もの事だ、ほっとこう」
「そうだな、退散するか」
「どうせ吞みたいだけだよな」
「いいね、いこいこ」
「じゃあ、後はよろしくー!」
二柱の神を残し、神々は避難して行くのであった。
─── ─── ─── ─── ───
数日後、仁達はゴブリンキングとの交渉の為に、ホブゴブリンの長達を連れて、6階のゴブリン集落へと訪れるのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
仁はホブゴブリンの長を連れて、ゴブリンキングとの挨拶に向かった。
「やあ、元気そうで何よりだ」
「ア、アリアサマハ、ドウシテイラッシャラナイ」
「まあ待て、アリア様は今此方に向かっている」
「ソウカ、デハマトウ」
「そうしてくれ。まず先に紹介をしようか、今回はホブゴブリンの長も連れて来ている」
仁は長を促し、話しだした。
「おハツにおメにカかる、ワシがホブゴブリンのオサだ。コンカイはアイサツにキたが、ヒトシドノはワレワレホブゴブリンのオンジンである、ブレイなタイドはユルせないとシれ」
どうやら長は、キングの態度に憤り、堪えられなかったようだ。
「待て待て、今日は挨拶だけにしような、仕事だと思え。キングも分かるよな、もうすぐアリア様も来るんだ、挨拶ぐらい構わんよな?」
「アア、カマワン、ソレデイツ、アリアサマハクルノダ」
「はあ、もうそろそろだと思う……、来たようだ」
「オオ!」
キングは立ち上がり、仁と長を押しのけ、アリアの出迎えに向かった。
キングはアリアに近寄り跪いた。
「ワガアルジ、アリアサマ、ドウカ、ワレノチュウセイヲ、オウケトリクダサイ」
「嫌です。お断りします」
アリアは即答し、キングは驚愕した。
「ナゼデス、ワレノチュウセイハ、アリアサマダケノモノデス」
「私は仁さまのものです!貴方の忠誠は必要ありません!」
「ナ、ナン、ダト……」
キングは固まり、仁も固まった。
こうして、キングの心は折れてしまったが、仁も流れ弾で大ダメージをくらい、共倒れのようだ。
仁がへたっている場所に、アリアは駆け寄り腕を差し伸べる。
「あの仁さま、酷くありませんか?あの抱擁は嘘だったのですか?」
「え?そ、それはハグ……、黙秘権という事でお願いします」
「では、今夜は二人きりで過ごすと云うことで宜しいですね?」
「な、なんだと!?うぅ、分かりました」
「ありがとうございます♪」
「ぐぬぬ、解せぬ……」
「なにか仰いました?」
「いえ、何も……」
仁はまんまとアリアの策略…、もとい恋のかけひきに掛かり、誤魔化す事すら出来なかったのである。
思いの外、ゴブリンキングのダメージが酷く、また後日という事で交渉はせずに、その日は拠点へと戻ることになった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
中央拠点で、アリアと仁の二人きりで過ごすという約束は果たされ、翌日のアリアはツヤツヤで、仁はシナシナの萎れた状態だった。
因みに、トランプで神経衰弱を一晩中プレイして、仁が負ける度にハグをするという、バツゲームを与えられたからである。
(女神の運に、俺が勝てる訳ないじゃないか!)
仁とアリアのイベントはまだ始まったばかりで、アリアの圧勝でありました。
次回の更新は今のところ未定です。
活動報告にて、投稿のお知らせは致しますので、よろしくお願いします。




