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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第一章、始まりのダンジョン
52/206

魔法陣

少しだけ、短くなりまました。



 攻略拠点での騒動も収束した翌日、仁達は生まれた子供達の世話をオーク達に教えていた。


 生まれた時は赤子だったが、現在は小学生くらいの子供に成長しているので、然程問題は無い。


 ゴブリン達の時も、小学生くらいまでに育っていたので、余り深くは考えていなかったが、普通に赤子のままだった場合を想像するだけで、薄ら寒いものを仁は感じるのであった。


 実際、ダンジョンの謎は幾らでもあるが、 現状に不都合はない。

 どちらかというと、都合が良い面の方が多いのである。


 ここに住めと云われたら、直ぐさまお断りするが、仁のようなスキルがあれば、自己鍛錬をするにはもってこいの場所なのだ。


 モンスターが尽きなければ、レベルは上がるし、素材が尽きなければ、武具やアイテムは幾らでも、補充がきくので、仁にとっては、やり甲斐のある職場であった。


 子供の頃からゲームにハマり、課金ゲーに涙しながら引退したことも、頻繁であった。

 それらに比べれば、この境遇は天国も同然であり、不老不死となり何時までも遊べるゲームのように、思っていたのである。


 だが色々と経験と実験を繰り返し、前に居た世界よりも厳しい環境に晒され、仲間が居なかったら、とっくに折れていたと、仁は実感していたのである。


 楽しいことはある。

 しかし、それ以上に胸くそ悪い状況もあり、なぜ自分が?と思う事もあるが、仲間たちと困難に立ち向かい、クリアしていく達成感が大きく仁の心に影響を及ぼしている。

 ここが俺の居られる場所と、仁は神に感謝していたのだった。



 「なんとかなったな」

 「はい、どうなることかと一時思いましたが、やれば出来るんですね」

 「そうですな、主が居なければ、どうなっていたかと思うと、正直惨状しか思い浮かびませんな」

 「ええ、お世話できなければ、幾つの生命が失われていた事か、分かりませんね」

 「…………、持ち上げられても、何も出ませんよ。皆で頑張った結果ですよ」

 「そうですな、皆が協力することで成せたことですな」

 「ええ、私も頑張りました」

 リッチとアリアの言動が、何かおかしいと仁は思った。


 「分かりました。何が欲しいのですか?」

 「あら、催促したみたいですね、申し訳ありません。ですがここはお言葉に甘えて、パーティーでもしませんか?日が変わりましたが、誕生日と皆さんの慰労会と云う事で……」

 「なるほど、良いですね。第1の子供達も呼んで、盛大にやりますか」

 「良いですな、主の気苦労も晴れますしな」

 「ちょっと、何をバラしているんですか!」

 「え?……」

 仁は乗り気だったが、様子が変わった。


 「アリア様、主はこういう事には疎いのです。回りくどく居ると、将来、横からトンビに油揚げで、攫われるやも知れませんぞ」

 「そんなあ!」

 「お前ら、なんの話だ?」

 リッチの言葉に嘆くアリアの様子に、仁は二人に問い掛けた。


 「まだ解りませんか?アリア様が主の心労を気遣ってらっしゃるんです。主はもう少し、女性と関係を深める努力をですなムグ……」

 「お止めなさい!それ以上は赦しませんよ!」

 アリアはリッチの前に立ち、口元を掴み黙らせた。


 「…………、すみません鈍感なもので、アリア様、ありがとうございます」

 仁がアリアに気遣われていた事に気付き、素直な気持ちを伝えたのだが……

 「い、いえ、私はそ、その……」

 「あ………」

 仁は走り去るアリアを見ても動けなかった。


 「主殿、追い掛けなくても良いのですか?」

 「すまん、俺には無理だ……」

 「そうですか、残念です」

 「うん……」

 「主の女性に対する、心の回復には時間が掛かりそうですな」

 「な、何故知ってる!?」

 「観ていれば分かります。某には目が有りません故に……」

 「…………、そ、そうか」

 「アリア様のフォローはしておきます」

 「すまん、よろしく頼む、色々とありがとう」

 「いえいえ、主とアリア様の御子を観たいですからな」

 「な!なんだと!?…………」

 ハッハッハッと笑いながら去るリッチに、仁の頭を下げることしか出来なかったのであった。



 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 仁達は、第1の子供達を連れて来て、攻略拠点の子供達と会わせた。

 若干、第1の子供達が大きいが、仲良く遊びだしたので、問題はなかった。

 子供達が遊んで居る内に、パーティーの支度に取り掛かる。


 カレーライスやハンバーガー、エビフライやメンチカツ、から揚げやフライドポテト、ピザにサンドイッチとサラダを色々と作り、飲み物はオレンジジュースにソーダ水、大人用にビールやスパークリングワイン、シャンパンなどを揃えた。


 勿論、特大バースデーケーキも作り、大盤振る舞いであった。


 拠点内の広場に、これでもかと盛られたご馳走から発せられる匂いに釣られた子供や大人たちは、既に目の色が違っていた。


 彼等の前に立ちはだかるオッグ達。

 そして、仁がその前へと進み挨拶を開始する。


 「良く聞け、今日は子供達の誕生と、今回のお前たち全員の努力と働きに対し、俺達からの礼としてささやかだが料理を用意した。存分に味わってくれ。以上だ」


 仁の挨拶が終わると同時に、オーク達が歓声をあげて、料理へと向かった。


 子供たちは目を輝かせ、から揚げやハンバーガーに夢中でかぶり付き、もきゅもきゅと食べ笑顔を見せていた。

 大人たちは、酒を手にして、乾杯を繰り返し、揚げ物をガツガツと食べ、酒をあおりガハハと豪快に笑いあっていた。

 「お前ら!野菜も食え!」と仁は怒鳴ったが、終始笑顔であった。


 「やはり主は、これ以上にない支配者となるでしょう」

 「ええ、彼等は仁さまといる事が、幸せなのでしょうね」

 「そうですな、某は主に仕えられて幸せです」

 「私は……、少しだけ不安です。あの方の魂は、未だに疲れきっています」

 「やはり、そうでしたか。しかし、我々は主を支え、いつか癒されるその時まで、共にあるとしましょう」

 「そうですね、私も頑張ります」

 「その意気ですぞ、御子を授かるその日を誰もが待って居るのです」

 「もうイヤですわ」

 と、アリアがリッチをバシン!と叩き、砕け散った。


 ガラガラと散乱したリッチの躰がカタカタと集まり、復活を遂げた。

 「いやあ、死ぬかと思いましたぞ」

 「すみません、つい……、でも既に死んで居ますよね」

 「そうでしたな、これは失敬」

 ウフフ、ハッハッハッと笑い声をあげ、遠くから眺めていた仁が首を傾げて居たのだった。


 そして在ることに気付く

 (やべぇ、回収拠点の奴らを忘れてた)

 テレポートで迎えに行き、無事確保して会場へと合流し、ヘコヘコと謝り、飲み食いをするのであった。



 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 「あー、頭いてー……」

 「飲み過ぎですな」

 「状態異常無効なのに頭痛いとか、おかしいだろ……」

 「何故でしょね……?」

 「解りませんな」

 「むぅ、ガマンするか。う~ん、柿とかバナナが効くんだっけか」

 「柿とバナナですか?」

 「確か、カリウムとかタンニンとかが効くとかあった筈です」

 「ほう、やはり主はもの知りですな」

 「うろ覚えだからなぁ、正確じゃない……、もっとちゃんと勉強すれば良かったな……」


 仁は柿とバナナ、ミルクとハチミツでジュースを作り飲んだのだった。

 仁が甘過ぎたと感想を漏らすと、アリアも気になり飲んだが、残ったジュースを全て飲まれてしまった。


 以後、アリアは様々なフルーツ牛乳にハマり、しばらくの間、朝の飲み物になりました。



 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 仁は魔法陣の本を読んでいた。


 大賢者の称号で読めるようになった仁は、食い入るように読みふけっていた。

 ちょっとだけ読もうかと思い、既に4時間経っても飽きずに読んでしまっていた。


 「仁さま、そろそろお昼ですが、如何しますか?」

 「ん、もうちょっと……」

 仁は生返事をかえした。


 「はぁ、仁さま、本を読まれるのはいいですが、お身体を壊してしまいますよ」

 「うん……」

 アリアは魔法陣の書を仁から取り上げた。


 「あ!ちょっ……」

 「もうお昼です、休憩にしましょう」

 アリアは仁を睨み、腰に本を抱えて「メッですよ!」と指さしポーズを決めていた。

 「はい、すみません」


 子供のようにあしらわれ、皆に苦笑いをされる仁であった。



 「随分と熱心にお読みでしたな」

 「ングっ……うん、中々に興味深い魔法だと思ってな」

 仁は食事をしながら、魔法陣の内容を考えていた。

 「ほう、どの様なモノなのです?」

 「そうだな、一言でいうと魔法の原型かな?」

 「魔法の原型ですか……」

 「ああ、今使っている魔法は詠唱が必要だろ?それを図式に替えれば魔法陣になるんだよ。逆に魔法陣を詠唱にすれば、今の魔法になるってこと、分かるかな?」

 「ふむ、よく解りませんが、魔法の原型と云うことは、古代の神々が関わっているのですね」

 「そうだ、魔法陣は詠唱が要らない代わりに、古代の言語が書けないと使えないみたいだ」


 アリアは中々食事が進まない仁に注意した。

 「仁さま、お話は後にして食事を済ませて下さい」

 「あ、すみません」

 「リッチ、あなたも仁さまの食事の邪魔をしないで下さい」

 「はい、申し訳ありません」

 「魔法陣のお話は、後で私もお聞きしたいので、お願いします」

 「「はい」」

 仁はアリアの云うことに従うのだった。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆


 「なるほど、魔法陣はそういうモノでしたか」

 「やはり、某程度では使えませんね……」

 「古代の文字を解読した上に、数式.理学.生物と、様々な学問が必要らしい」

 「難しいですね。仁さまは使えますか?」

 「今は、簡単な魔法陣が書けるくらいですね」

 「流石です。仁さまなら出来るのではと、思っていましたが、既に魔法陣を書けるのですね」

 アリアは身を乗り出し、仁にすり寄った。


 「ちょっ!ち、近い近いって……」

 「あ、失礼しました」

 アリアはしょんぼりと萎れた。


 「書けるといっても、生活魔法の基礎部分しかないし、生活魔法が使えるので、使えるレベルじゃないですから」

 「それでも、書けるのですよね?見せて頂いても、よろしいですか?」

 「ええ、良いですよ。ちょっと待って下さいね……」

 仁は、紙と筆をだし、墨のような物を創りだし、筆に染み込ませ、紙へと集中しだした。


 思考加速により、あらゆる感覚が鋭敏になっていく。

 そして、仁は瞑想にはいり、()()()と接続された。

 仁は接続された()()()と思考を重ね、創造する。


 『火種の魔法陣』【原初の炎】と呼ばれ、あらゆる世界にある炎の力を産み出す魔法である。

 その初歩である火種を創る魔法陣であった。


 トランス状態の仁は、紙へと魔法陣を描き出す。

 30分程掛かり、一枚の魔法陣が完成したが、仁はパタリと倒れ、その場で気を失った。


 「仁さま!」

 「主殿!」

 「スゥスゥ……」

 アリアは駆け寄り、仁の状態を鑑定した。


 「MP切れでしたか……、ベッドへ運びましょう。オッグさんお願い」

 「ハイ」

 オッグは仁を両手で抱き上げ、ベッドへと運んでいった。

 「あ!その手がありました!くっ……」


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 仁がベッドに寝かされ、アリアは傍らで呟いた。


 「生活魔法クラスの魔法陣で、大賢者以上のMPの持ち主である、仁さまでこの結果ですか……、恐ろしい魔法陣(もの)ですね」

 「……、凄まじい魔法ですな」

 

 だが創られた魔法陣は特別で希少な上に、()()()()という果てしない時を経て、生み出されたものであった。

 その結果、仁は丸二日間眠るという事態になったのであった。



 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 「…………、2日?マジで?」

 「はい、丸二日間、眠っていらっしゃいました」

 「今は使わぬ方がよろしいかと思いますぞ」

 「えーっ、せっかく描いたのに使うなとか……」

 「ダメです!反対です。また寝込んでしまいますよ」

 「分かりました……」


 仁は渋々と諦めたが、【原初の炎】という魔法陣にもの凄く興味を抱いていたのだった。


 「ちょっとだけでも……」

 「ダメです!」

 「そこをなんとか」

 「…………」

 「ご免なさい……」

 アリアは仁のおねだりにクラッときたが、心を鬼にして踏みとどまり、仁は完全に諦めたのである。


 尚、『火種の魔法陣』は神界に送られ、研究される事となったのである。


 【原初の炎】は創造神様が天界より授かり、この世の世界にもたらしたものであった。


 そんなものをダンジョン内で使うとか、正気の沙汰ではなかったからであった。




経験と知識がないのに、なにかと繋がるとか、色々とやらかす仁でありました。

次回は12/20(木)17時を予定しております。


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