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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第一章、始まりのダンジョン
51/206

5階探索 後編

お待たせしました。

昨日の続編です。

書き立てですが、投下します。




 昼食後の休憩も終わり、東側へと探索を再開した。


 東側の壁にたどり着き、南側へと

進む。

 途中に鉄鉱石を発見し、サンプルを回収。

 ここでオーク達に回収させれば、また一歩、野望に近づくなと仁はほくそ笑んだ。

 アリアは首を傾げたが、ゴブタロ達はニヤリと笑っていたのだった。


 更に南下すると、東側へと進む通路を発見したが、仁は南へと進んだのである。

 その先には例の壊滅した集落があった場所なのだが、ジェネラル討伐優先で、全く探索していない事を思い出したからだった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 壊滅した集落方面の探索をした仁は、ホクホク顔であった。


 集落の跡地は何も無く、変わり映えもなかったが、周辺を探索したところ、薬草やキノコ類を発見したのである。

 鑑定したところ……


 月光草【薬草】

 月の光りを集め、MP回復薬の元になる月の雫が採れる薬草。


 青キノコ【霊芝】

 薬効成分を増幅させる効果のあるキノコ。


 白キノコ【霊芝】

 様々な薬効があるキノコ。


 色々と面白素材を発見したのだった。

 普通の薬草や、食材になるキノコもあり、仁は上機嫌になっていた。


 「楽しそうですな」

 「ん?そうか?」

 「ええ、ずっと笑顔ですし」

 「そうでしたか、それはすみませんでした。自分だけ楽しんで」

 「いえ、嬉しそうなので、かまいません」


 仁の頭の中では、このダンジョンを支配下にした時の事でいっぱいだった。

 どんなダンジョンにしようか、想像するだけで、ワクワクしていたのだった。

 「ああ、楽しみだな。頑張らないとな……」

 「何をですかな?」

 「ん、なんでもない。ただの独り言だ」

 「夢がひろがりますね」

 「え?なぜ分かるので?」

 「何となくです」

 アリアはニッコリと微笑み、仁は顔がひきつっていた。

 (ま、まさか、読まれているのか?)

 仁は心に誓った、()()()()()は考えないようにしようと。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆


 仁はここに回収拠点を設置しようと考えた。

 皆と話し合い、設置することを許可して貰えたのだった。


 まず工房の土台から造る事にした。

 今回は土魔法もあるのでさっと造ってしまおうと仁は予定地の地面を分解してみた。


 やはり分解のレベルが低いので、分解された面積は少なかった。

 だが数回こなせば足りる事なので、問題ないと仁は繰り返し地面を分解していった。


 分解で回収された土を砂利と砂に変え、分解で空いた穴へと敷き詰めていった。

 オッグ達に表面を均してもらい、平らになった所で、仁が土魔法で硬化させて、その上に土魔法で石材を造り、作成でタイル状に加工して並べ、土魔法でタイルを接着し完成である。

 後は、土台の上に作業台を作り、設置して工房の完成である。


 仁は拠点の建設予定地脇に、土魔法でブロック状の石材を並べ、オッグ達に後を任せた。


 設置用の角材と金具類を召喚と作成で造り工房の脇へと積み上げ、壁パネルの作成にかかる。


 壁パネルは木材を主に使い、角材にはめ込む形に造り、壁パネル同士も同様にはまるように加工していく、何時ものパターンである。

 仁は黙々と建材を造り、組み立てては、工房脇へと積み上げていく。


 一方、オッグ達も予定地を均して、決められてる大きさに石材を並べ、いつも通りの工程を熟し、土台を完成させた。


 必要な壁パネルを造り終えた仁は、完成している土台に、角材を並べ土魔法で接着していく。

 次に柱になる角材を立てて、壁パネルをはめ込み、土台の角材にはめ込んでいき、金具を差し込みボルトでガッチリ固定した。

 後はこの作業を繰り返して、一周すれば壁の完成である。


 壁が完成し、次は屋根である。

 今回の屋根は既に骨組みとして、完成しているので、壁パネルの上にのせ固定するだけのものだ。

 あっと言う間に設置完了し、屋根パネルを張り付けて完成であった。


 数をこなしていた分、必要のない工程を省略して、その分材料と時間の節約になったのであった。


 「流石ですな、いつ見ても手際がいいですな」

 「そうだな、もう慣れたよ」

 「は、早すぎませんか?」

 「ですよね。我ながら早すぎるとは思っています……」

 「スキルがあって出来ると言うには、早すぎですな。偏に主の知識と腕による賜物かと思いますぞ」

 仁の言葉を先読みしたリッチが被せて語り、アリアは納得して頷くのだった。


 仁はこれでもまだ、手間を掛けてる分、時間をかけて建てたのだが、リッチはまだ本気をだした仁を知らないのである。


 何故なら、設置場所を造れば、召喚で全てが終わるのだ。

 そんな物を造っても達成感が無いので、仁がやらないで黙っていたのだった。


 内装やベッドを設置して、簡易の宿泊所に。

 そして、少し離れた所にトイレとシャワーを設置した。

 これで最低限の施設になるだろうと、仁は攻略拠点へと戻ることにした。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 攻略拠点に到着した仁は、オークリーダーの元へと向かった。

 オーク達に採集の仕事を依頼する為である。


 東に発見した鉄鉱石を渡し、場所を地図に書き込み、リーダーに詳細を説明をする。

 翌日、数名を連れて行き、現地で仕事の説明をすることにした。


 後は、南にある素材回収拠点に、10人程派遣して欲しいと頼んだ。

 リーダーは迷っていた。

 ここで鉄を回収し装備を作り、南の素材回収拠点の薬が揃えば戦力も増強出来ると説明をして、なんとか納得してもらえた。


 出来れば、補給基地へと向かい物資のやり取りをしたいが、それは補給基地側の輸送部隊にお願いする事にする。

 最悪、仁がテレポートで転移しても良いよなと思いこの日の話を終えたのだった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 翌日、オークリーダーが連れてきた作業員を引き連れて、鉄鉱石のある場所で回収の仕事を教え、その足で南の拠点へとやってきた仁達は、ここで働くオーク達に拠点の説明をするのだった。


 彼等に一通りの施設の説明を終えたが、やはり使用を遠慮していた。

 仁的には、彼等が働き、疲れを癒す場所を提供しているに過ぎないので、使って貰いたいのだが

 彼等は支配下にあり、支配者の所有物に手を付ける行為自体に、抵抗があるようだ。


 まあ、彼等の生活に関してどうこう言わないが、仕事をきっちりして貰う対価なので、オッグ達に説得してもらい、使用のことはなんとか了承させた。


 以前から、分かっていた事ではあったが、仁と彼等の価値観の隔たりは、仁の居た世界にもあったものだ。


 雇い主、または雇用者のそれと、似たような関係というとアレだが、雇われている以上、立場的に同じであるのだ。

 そう考える仁にとって、職場環境や衛生面、住環境、物資提供は至極当たり前であり、気持ちよく仕事をして貰うための投資は、とても大切だと、仁は思っていたのだった。


 これを彼等に説明しろと云うと、はっきりいって無茶苦茶なことであるのだ。

 常日頃から、なんの教育もなく、生きる術が限られ、なにも分からないまま、支配者に使い捨てにされている社会なのだ。

 そこへ突然現れた新たな(しはいしゃ)に、今までの生き方をぶち壊す生活を押し付けてくるのだから、彼等に抵抗感がるのも、また受け入れ難いのも至極当然であるのだ。


 もう半ば諦めようかと思うこともあるが、第1拠点の子供たちを想うと、許せない仁であった。


 オーク達の了解も得て、仕事場の説明と道具の使い方を教え、素材の回収と保管場所の説明をした。

 保管とは別に、物資の供給に関しても説明し、了解が得られたので、実際の現場での回収作業を行い、これで全ての説明が終わった。


 回収拠点に一旦戻り、休憩を取る仁はやっと終わったと、コーヒーを飲んでほっとする。


 「仁さま、それは何ですの?」

 「ああ、これはコーヒーと言って、私の世界にあるお茶と同じく、一般的に飲まれている飲み物です。まあ紅茶と一緒で、西洋の飲み物ですね」

 「なるほど、紅茶と同じものなのですか」

 「いえ、全く違います。私の世界で趣向品として流行り、広まった飲み物……、飲みます?その方が分かると思います」

 「はい、頂けるのでしたら」

 「分かりました。少々お待ち下さい」

 仁はテーブルと椅子をちゃんとしたものに変え、ティーセットをコーヒーカップに変え、ドロップ式のコーヒースタンドと専用ポットを揃えた。

 豆の焙煎はしたことが無かったので、市販品のレギュラーコーヒーでコーヒー淹れた。


 「スゥ、香ばしく刺激的な薫りですね」

 「ええ、朝一番で淹れると、目が覚めますよ」

 「え?そうなんですか?」

 「飲めば、その味を覚えてしまい、覚醒作用が働くそうです」

 「まあ!そんなにですか……」

 「止めときますか?」

 「いえ、いただきます」

 「では、用意しますね」

 仁はカップを温め、砂糖とミルクを用意した。

 淹れたてのコーヒーをカップに注ぎ、アリアの前に置いた。

 「どうぞ、初めてなので、こちらの砂糖とミルクを入れて、お飲み下さい」

 「はい、ありがとうございます」

 仁はアリアの前で、自分のカップにコーヒーを注ぎ、砂糖を1杯、ミルクをチョロッと垂らすと、スプーンでかき混ぜ、カップを手に持ち、スゥとひと嗅ぎしてから、コーヒーを楽しんだ。

 「はぁ、うまい……、やはり淹れたてはうまいな」

 それを観察していたアリアも真似をして、飲んでみた。


 アリアは、カッ!と目を見開き、もう一度香りを確かめ、ひと口啜った。

 「これがコーヒー……」

 アリアは、衝撃を受けた。

 苦くて香ばしく、脳へ達する刺激的な味わい、もう後戻りは出来ないと思う程であった。


 「どうです?私が言った意味が分かりましたか?」

 「はい、分かりました。……この味わいは忘れるなんて出来ませんね。仁さま、責任をとって貰いますね」

 「はい?な、何をですか?」

 「もう、コーヒーが飲めないのであれば、(わたくし)は生きて行けませんもの……チラッ」

 「そうきたかぁ……」

 仁はガックリと項垂れ、アリアはチラチラと伺い、頬を両手で抑え赤く染まっていた。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 休憩を終えた仁達は、残る5階の探索を1日かけて調べたのだが、特には何も無く、ジェネラルの悪行があちこちに痕跡としてあっただけであった。

 帰り際に、ジェネラルさんに物理攻撃(あいさつ)をしてから、回収拠点へと帰るのだった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 翌朝、仁はコーヒーを淹れて飲んでいた。

 「まったく()()()は腹立つ事しかしないな」

 「そうですな、いっそ殺してしまってはどうです?」

 「いや、あのままが彼奴の末路として、相応しいからな」

 「そうですか、しかし、よく()()で生きてられるモノですな」

 「そうだな、キズは治ってるし、エサ(しょくじ)が有れば生きていけるという実験(こと)だな」

 リッチは嗤い、肯いている

 「朝食が出来ました。仁さまは、本当に要らないのですか?」

 「はい、ちょっとムカついて気分的にムリです。すみません」

 「いえ、あんな事に成っているとは知りませんでしたし、仁さまのかんに障る芋虫(あのひと)が悪いのです」

 「まったくですな、汚物(あやつ)が悪いのです」

 「もういい、止めよう、食事時にする話じゃないし、飯がマズくなるぞ」

 「すみません。コーヒーのお代わりは如何ですか?」

 「はい、お願いします」

 「某も頂けますかな」

 「飲めなくても、欲しがるとか、お前もだいぶ太くなったな」

 「はい、主のおかげであります。某は幸せ者ですな」

 「そうですよ、仁さまですし、当然です。では、淹れてきますね」

 「すみません、よろしくお願いします」

 アリアは、仁とリッチのコーヒーカップを持ち帰り、新しく淹れたコーヒーを持ってきてくれた。


 朝の一時をゆったり過ごし、昨日見つけた採取結果を考え、今後の予定をメモして、攻略拠点へと向かうのだった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 攻略拠点へと到着し、今後の計画をリーダーと話し合うことにした。


 リーダーの元へと向かい始めたのだが、また子供たちが突然生まれ始めたのだった。


 2度目のことで仁達はびっくりしたくらいで済んだが、アリアとオーク達は、パニックに陥ったのである。


 突然の出産は、何処だろうと大変なことである。

 しかし、突然200体のオークの赤ん坊が出現したら、どうなるかは見ての通りの結果になるのは当然であった。


 「アリアさま!落ちついて!とりあえず、湯と産衣を出しますから、対応お願いします」

 「そ、そうですね、分かりました。取り乱してすみませんでした」

 「今は手を動かしましょうか、私は即座に風呂と、産衣を用意をしますので」

 「はい、では取り掛かります」

 「よろしくお願いします」


 仁達はそれぞれ動き出し、仁は緊急時なので、分解>作成>土魔法>召喚で風呂場を一発建築してのけたのだった。


 「凄いですぞ主!召喚でこんなことも出来たのですね!」

 「うるさい!仕事しろ!指示ぐらいできんだろ!」

 「すみません、興奮しすぎました」

 「いいから働け!」


 バタバタと走り廻るオーク達や、赤子を風呂に入れたり、産衣を着せたりと大忙しであった。

 まだゴブリン達の時は女子や老人が居て、スンナリと対応できたが、野郎だらけの厳つい場所は、てんてこ舞いであった。


 数時間後、仁達は泥のように眠るのだった。




少し書き直したので、変な所があるかも知れません。

書き直す場合は、追って報告を上げますので、よろしくお願いします。


来週の更新は、活動報告でお知らせしたように、火木土の17時に予定しています。


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