5階探索 前編
長くなってしまい、前編となりました。
オーク2つ目の集落に到着した仁達は、ここを正式に第4拠点とし、分かり易く攻略拠点と呼ぶことにした。
5階の攻略に入り、既にひと月近くになっているので、きっちりと攻略しようと、攻略拠点となったのだ。
なんだかんだと、オーク達とのいざこざに、ひと月とか酷いので頑張ろうと思う仁だった。
攻略拠点の物資を補充し、オークリーダーの元へと向かう。
「どうかな、問題はないかな?」
「ハイ、とくニハアリませン」
「そうか、ならオーク達のことは任せるから、よろしくな」
「ありがトウござイマス、がんバリマス」
「じゃあ、何かあったらその時は報せてくれよ」
「ハイ」
仁達は、周辺の探索へと出掛けるのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
攻略拠点の北側の通路を探索する仁達は、早くも例の部屋を見つけた。
そう宝箱の部屋である。
早速、仁は宝箱を鑑定した。
宝箱【上級】
ランダムでアイテムが入っている宝箱。
レアドロップ率.??%
「ん?……、レアドロップだと!」
「どうしました?」
「アリア様、レアドロップですよ!」
「レアドロップ?」
「ほう、ということは運次第で、良いものが入っているのですね」
「え?………、なら俺じゃ駄目だな」
「何故です?」
「私の運は最低値ですし……、コンビニのクジですら当たらないんですよ。ここは数値の高いリッチかオッグだな」
「では某が開けても宜しいですか?」
「…………、やはり俺が開ける」
「分かりました。ではどうぞ」
仁は意を決し、宝箱を開けた。
大賢者の書【レアアイテム】
大賢者の称号が獲られる本。
称号.大賢者が獲得されました。
「な、なん、だと……」
仁は手に持っていた本を落とし、膝から崩れ落ちた。
「仁さま!どうなさいました!?」
「主?本が落ちましたが、ん?……これはこれは」
「何ですの?……まあ!大賢者の書ですか、さすが仁さまです。やはり運はあるのですね」
仁はステータスを確認する。
田中 仁 Lv26
ダンジョンマスター
HP.39000/39000(3s=+3%)
MP.6240/6240(3s=+3%)
DP.50000/50000
STR.78
VIT.78
DEX.65
AGI.65
INT.104
MND.10250
LUK.13
スキル
通常.メニュー.マップ.テレポート.情報.通信.監視
召喚Lv2.作成Lv3.分解Lv2.鑑定LvMAX
魔方陣LvMAX.生活魔法LvMAX.治癒魔法LvMAX
火魔法LvMAX.水魔法LvMAX.土魔法LvMAX.風魔法LvMAX
MP倍加.MP消費半減.HPMP自動回復LvMAX
経験値倍加.思考加速.詠唱破棄
戦闘.なし
耐性.全属性92%無効.状態異常無効.精神異常無効
加護.異世界の神(不老不死)
称号.大賢者
「ヌオォーーーー!またかー!」
再び崩れ落ちた仁だった。
(罠か?よりによって大賢者が返ってくるとか……)
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
あれから1時間、休憩をとり平静を取り戻した仁は、探索を再開する事にした。
宝箱の部屋を出て、30分程の所で6階への階段を発見した。
「やはりあったか。だが5階の探索を続けよう。まだまだ行ってない場所とかあるしな」
「「はい」」
北側に階段があったので、次は南側へと向かう。
通路を南へと進む仁達は、攻略拠点とは別の開けた場所へとたどり着いた。
「どうやら、別の集落だな」
「そのようですな」
「如何しますか?」
「まずは行ってみますか、後はそれからです」
仁が先頭で、アリア.リッチ.オッグ達と続き、集落へと向かった。
集落に近づくにつれ、住人達が出てきた。
ホブゴブリン Lv28
HP.672/672
ゴブリンとは違い躰が大きく、戦闘向きかもと、仁は警戒した。
「ホブゴブリンLv28だ、敵対するかも知れん、警戒しても態度に出さないようにな」
「分かりました」
皆は肯き、仁の後に続く。
仁は集落の手前で止まり、呼び掛けた。
「俺はダンジョンマスターの田中仁という、ここの長と話がしたい」
仁の呼び掛けに気づいた住人達は、騒ぎ出し集落の手前に集まりだした。
ざわざわと単語のみで話す声が聞こえ、交渉の可能性を少し期待した。
しばらくすると、人垣が割れ老人のようなホブゴブリンがやって来た。
「ワシがオサだが、ナニヨウだ?」
ホブゴブリンの老人は、流暢な言葉を使い話し掛けて来たのだった。
「お初にお目に掛かる、俺は田中仁という、ダンジョンマスターだ」
「うむ、してナニヨウかな?オークキングドモのツカイか?」
「いや、オークキングは討伐したので別件できた」
後ろに居るホブゴブリン達が、どよめき大声で騒ぎ出す。
「シズマレ!!」
老人の傍らにいるホブゴブリンが一喝し、騒ぎが止んだ。
「シツレイした、オークキングがシンダとイウことだな?」
「そうだ。今回は探索に来たところ、偶然ここを見つけ、交渉出来ないかと思い、こうしてやって来た。出来れば、穏便に話し合いをしたい」
「ふむ、ナルホド、オークがイタからカンチガイしたとイウコトだな?」
「このオークはオッグという俺の仲間だ。奴等とは全く関係がないが、勘違いをさせてしまったのなら謝罪しよう。すまない、この通りだ」
仁は腰を折り、頭を下げた。
「そうか、オークキングはシンダか、ヨカッた。では、カンゲイしよう。まずサイショに、ワシがミナにカワリ、レイをイウ、アリガトウ、カンシャする」
老人が胸に手を当て、お辞儀をした。
それを見た、リッチは感心し、アリアはうんうんと頷いていたのだった。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
仁達は、ホブゴブリン達に感謝された。
多くの同胞がオークキングらによって殺されたらしく、数で勝てずに居たところを、仁達がキング討伐という朗報をもたらしたからであった。
戦って死ぬか、従順するかで議論中だったらしい。
「我々は丁度良いタイミングできたようですな」
「うん、まあ思うところもあるが、良しとしようか」
「私はモンスターである彼等が、この様に話し合いが出来るとは、思いもしませんでした」
「それは私もですよ。まあモンスターですから警戒は必要ですし、仕方ないのでしょう」
「そうですな、某もモンスターですが、偶々神が我を創造してくれたからですし、警戒は必要でしょう」
「いうなれば、オークキング共が最後に残した僥倖ということだな」
「なるほど、そうですね」
「まったくですな」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ホブゴブリンの長から色々と状況を聞き、南西の通路の先にオーク達の集落があると判明。
情報通りであれば、オークの集落は壊滅しているそうだ。
その情報の確認をする為に、現在その集落跡地に居るのだが、スライム達に処理され、僅かな痕跡しか残されて居なかった。
「だいぶ前に潰れてたんだな」
「何もありませんね……」
「状況からですと数日は経ってますな」
「そうだな、野良のスライム達なら早くても4~5日は経ってるだろうな」
「主のスライム達は処理が早いので、あっと言う間ですからな」
「え?そうですの?」
「はい、補給基地の側にあったスライムプールは凄絶でしたな。あの様な光景は、主にしか創れないでしょうな」
「詳しくお願いします」
「やめろっ!!その話はやめろ!あれは駄目なやつだ!馬鹿が引き起こした、おぞましい事件じゃねぇか!」
「そうでしたな、失礼しました。アリア様、すみませんが、詳細は控えさせていただきます」
「残念ですけど、仁さまが駄目というのでしたら、仕方がないので諦めましょう」
「ありがとう御座います」
仁はあの憤りを忘れない。
己の招いた惨状は、未だ鮮明な記憶として残っていたのであった。
(もっと強くならないと、またアレを繰り返すハメになるじゃねぇか、幾らモンスターとて浮かばれねえし、冗談じゃすませられねえよ)
仁は命がけだった奴らに、黙祷を捧げたのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
仁達は、攻略拠点へと向かう通路を発見し、一旦戻って昼食を取ることにした。
「さて、昼食にしよう思うが、俺は今食欲がないから、皆が食べたいものを作ってやろう、何が良い?」
「あの、大丈夫ですか?」
「ええ、さっきからイライラが止まないだけで、料理作って憂さ晴らししたいだけです。なので何でも良いので、宜しければお作りしますよ」
「そうですか……、でしたらハンバーガーなる物をお願いしてもよろしいですか?」
「ん?そんなジャンクフードでよろしいので?」
「ジャンクフード?何かは解りませんが、皆さまから絶賛されているとリッチ殿から聞いたのですが、駄目ですか?」
仁はリッチを睨んだが、リッチは惚けていた。
「分かりました。でしたら特製チーズバーガーにしましょうか、美味しいですよ」(体には悪いが、旨い方がいいしな)
仁はアリアご所望のハンバーガーを作るべく、食材を揃えていく。
バンズは胡麻付きのもの、肉は100%ビーフ、レタスにトマトやピクルス、チェダーチーズをスライスしたものを用意し、調理を開始だ。
まず食材を下ごしらえしていき、出来たてを食べられるようにする。
レタスは手でちぎり、トマトをスライスし、大量のトマトをソースへと変えていく。
ピクルスは付け合わせとして、一口サイズとスライスにしたものにした。
バンズはハンバーグが出来たらすぐ使えるように、輪切りにしておき、フライドポテトは皮付きのタイプにして、飲み物はコーンポタージュとソーダ水を用意した。
準備は出来たので、早速ハンバーグを作っていく。
ハンバーグは少し粗挽きの牛挽肉にして、スパイスを練り込み厚めのハンバーグにする。
表面を焦がし、熱してある鉄板にのせてオーブン調理をする。
中心部がカタくならないよう、クシで確認し仕上げるタイミングを計った。
半分にきって中をみると、うっすら赤身の肉色にジワリと出てくる肉汁が旨そうだった。
試しに作ったハンバーグをガン見しているアリアだったが、後のお楽しみの為にハンバーグはウルフくんに処理して貰いました。
もう一度ハンバーグを作り、バンズを温める。
そして、ハンバーグが焼き上がる頃に、バンズにレタスを並べその上にハンバーグとチーズを重ね、少量のトマトソースをのせる。
トマトソースがこぼれないようにスライストマトをのせ、バンズにマスタードをぬりのせた。
そして、出来たてのハンバーガーを包装紙に包み、特製チーズバーガーの完成である。
「お待たせしました」と仁はトレーにハンバーガーと、ポテトにピクルス、簡単なサラダとスープを乗せて、皆のテーブルへと配膳していった。
最後に各自お好みでソーダ水が飲めるように、瓶と栓抜きを用意し、「どうぞ、お召し上がり下さい」
と仁が声をあげ、各自が食事を開始しする。
「これが、ハンバーガーですか。美味しそうな香りですね」
「どうぞ、お好みでソーダ水もありますので、お召し上がり下さい」
「ソーダ水ですか?ではひとつ下さい」
「はい、少々お待ちを」
仁はグラスを用意し、ソーダ水の栓をぬいて注いだ。
「お待たせしました」
「ありがとうございます」
アリアは一口ソーダ水を飲み、驚いた。
甘味のあるソーダ水は初めてであり、柑橘系の味と香りがほのかにして、爽やかに口や喉を潤していく。
「このソーダ水は美味しいですね」
「そうですか、お気に召したようで何よりです。ハンバーガーや油ものを食べて、口直しのソーダ水はうってつけですからね」
「なるほど、そうですね。では早速、ハンバーガーを頂きますね」
「はい、どうぞお召し上がり下さい」
アリアはハンバーガーの包み紙をめくり、ハンバーガーを出そうとした。
「待って下さい。その紙は全部剥がさず、包んだ紙でハンバーガーを持ち、少しづつ口でかじり付くように食すのが、食べ方なのです」
「え?……、そういえば、食器がないですね。なるほど、かじり付くのですか、これは初めてです。神界では食すことすら出来ないのも当然ですね」
「まあ、ジャンクフードですし、ファストフードはお上品とは真逆の文化ですから、無理もない話です」
「ファストフードですか?よく解りませんが、頂きますね」
アリアの初めてのファストフードは、ジャンクフードでもあるが、初体験というものは、甘美なものでもある。
ハンバーガーを一口かじり、アリアは目を見開いた。
軽く焼き温めたバンズから小麦の香りと胡麻の味わい、ハンバーグから焼いた肉の味とスパイスの香りに肉汁の旨味が押し寄せ、チーズの濃厚な味とニオイが下卑ているが、すごくマッチしていて相性は最高であった。
シャキシャキレタスとスライストマトに挟まれ食感とジューシーな味わいが、絶妙なものへと昇華させていくのである。
こんな冒涜的で野趣あふれる味わいが許される食べ物に、アリアは当惑し、ただその味わいに身を委ねるしかなかったのであった。
一口かじり、ポテトをひとつ食し、ソーダ水を一口飲む。
「はぁ……、美味しい……」
仁はその姿に怯んだ。
(やべぇ、忘れてた!食わしたらダメな奴だった!見ちゃダメ!〇ロすぐる!)
こうして、昼食は終了しました。
仁の不運が他人にとっては、喉から手が出るほどに幸運であるが、仁自身には苦行であったのです。
おかえり大賢者、そして始まる苦行の旅はまだまだ続くのです。
頑張れ!仁、また明日があるさ!と前向きに生きる仁に、生暖かい目で見守って下さい。
次回はちょっと分かりません。
出来たら投稿するかも知れません。
一応、火木土の更新は予定通りです。




