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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第一章、始まりのダンジョン
47/206

アリアの想い

早く仕上がったので投下します。


 全てがリセットされた仁は呆然としていた。


 「あの……、大丈夫?」

 アリアは神界から戻ってきた場所に居た仁に話しかけた。

 まさか仁が居るとは思ってもいないアリアには、その言葉が限界であった。

 そんな言葉に仁は反応できず、徐に立ち上がり

 「お前なんか、嫌いだ--!」と言い放ち、泣きながら走り去ったのだった。


 アリアは呆然と見送り、仁の言葉を聞き呆れた。

 「馬鹿みたい。生き返ったんだから、何も問題ないくせに」

 アリアは仁のステータスリセットを知らずに、いつも通りの調子で呟くのだった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 「くっそーー!俺は負けん!こんな事で、負けるなど……、バカやろ一一一一!!」

 仁はダンジョンに全力で向かった。


 ダンジョンの入り口に飛び込み、通路であったスライムやゴブリンを殴り倒し、2階に降りた所で力尽きた。


 仁は血塗れだった。

 装備やアイテム、食糧さえ何も持っていなかった上に、召喚もリセットされ、ゴブタロが居なくなってた事も、ひとつの要因でもあった。


 文字通りのリセットで全てが奪われ、自棄になっていた。

 仁はもう女難には慣れたが、流石にゴブタロ達ともう逢えないのは、如何しても諦められず、ただ進み続けたのである。


 「バカみたい、なに必死になってんのよ」

 アリアは呆れ、仁に話しかけたが返事は無かった。

 「モンスターの仲間を()べばいいでしょ?なにこんな所で倒れてんのよ」

 仁は立ち上がり、アリアに背を向け言った。

 「死んで全てリセットされた。何もかも失ったんだ!もう彼奴(あいつ)らとも逢えなくなった」

 「えっ?…………、何それ」

 仁は去り、アリアは呆然と見送り、仁を追うことは出来なかった。



 「くっそー!負けてたまるかー!」

 仁は血塗れで、モンスターを拳で殴り倒し続けていく。

 失ったものが還ってこない事より、もう一度だけ彼奴(あいつ)らに逢いたいと想い、拳を叩き込んでいくのだった。


 どれ程の時が経ったのかも判らず、飲まず食わずで挑み続け、3階に到達して動けなくなった。


 3階の通路上で眠りについた仁は、泣いていた。

 その仁の姿を見ていたアリアは、何も言えず、見守る事しか出来なかった。


 「バカみたい……」

 アリアは、自分自身に呟いた。

 必死になって、闘う男の姿は眩しく想えた。




 数時間後、仁は起きたが体が鉛のように重く、自分の異常を確認する為に、ステータスを開いた。



 田中 仁 Lv8

 ダンジョンマスター

 HP.1499/6000

 MP.80/160

 DP.12500/25000

 STR.12

 VIT.12

 DEX.8

 AGI.8

 INT.16

 MND.5040

 LUK.2

 スキル

 通常.メニュー.マップ.情報.召喚Lv1.作成Lv1.分解Lv1.鑑定Lv1

 戦闘.なし

 耐性.全属性45%無効.状態異常50%無効.精神異常50%無効

 加護.異世界の神(ステータス半減.不運)


 HPが回復してない事に気付き、加護にステータス半減と不運を見つけ、LUKが2しかない事に愕然とした。

 「な、なんで…………」

 仁は自分に何が起きているのか判らず固まった。


 起き上がり動かなくなった仁を見たアリアは声をかけた。

 「どうしたの?」

 「…………、回復しなくなった」

 「え?なら私が回復するわね、ヒーリング」

 アリアの魔法は発動しなかった。

 「え?な、なんで……?」

 仁は立ち上がり、通路を進み始めた。

 「ちょっと待って、し……」

 アリアはそれ以上言葉に出来なかった。


 仁は闘い続けて血塗れになり、回復出来ないまま進み続けた。


 もうこれ以上見ていられなくなったアリアが手助けしようと仁に近付いたが、仁に近付くにつれ力が抜けていく。


 アリアは己の異常に自身のステータスを確認すると、仁に対する行動阻害、接近禁止、神意反転の3つの戒めがあった。

 これでは何も出来ないと覚り、アリアは祈る事すら仁を呪う結果になると理解したのだった。


 父に行動を共にと云われたが、これでは近寄るだけで、仁のステータスに影響を及ぼす事に気付き、アリアはその場から離れることにした。


 アリアは父に言われた言葉を思い出し、考えたが分からない……

 何故彼が選ばれたか……

 どうしてあそこまで行動するのかすら分からないのだった。


 普通の人から見ても、仁の行動を理解するのは困難である。


 だが、仁にしてみれば単純であった。

 そこにある大事なものを求めているだけである。

 仲間たちの記憶、あそこに在るはずだという想いに、突き動かされているに過ぎないのであった。




 仁は願う、逢いたいと……




 「お前ら待ってろよ!もうすぐだ!」

 仁は渾身の力で敵を倒し、突き進む。

 やがて、4階への階段にたどり着き、階段を降りた所で足がもつれて転がり落ちていった。


 意識が朦朧(もうろう)とする中で、仁が見たのはウルフとオークの子供達であった。


 仁はやっと逢えた仲間たちに涙し、そのまま気を失ったのだった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 「主が見つかったと云うのは本当か?」

 「はい、だいイチきょてんに、ホゴしたとウルふがいッテイます」

 「おお!そうかでは我らも向かおうぞ!」

 「りょウカいです」

 こうして、仲間達に連絡がつき再会へと動き出したのだった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 アリアは第1拠点を眺めていた。

 「やっと逢えたのね……」

 アリアはやっと理解した。


 仁が何故選ばれたかは、彼でなければ起こせない(きせき)が在るからであると


 アリアは涙し、良かったと心底思うのであった。

 こうして改心したアリアに光が降り注いだ。

 『汝の戒めを解こう、そして彼と共に歩むがよい』

 アリアは神々に感謝した。

 そして、アリアは歩みだし、仁が居る場所へと進んで行くのだった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 仁が起きたのは3日後だった。


 「お前たち、元気だったか?」

 「∀у∂∵∮∽△∝Й∋♯♭£☆@§¶#ζ」

 「うん、何言ってるか解らんが元気そうだな、良かった」

 「主よ、ご帰還されたこと、心より感謝致します」

 「おかえリナサいアルジ」

 「おう、ただいま!」

 ゴブタロとコボジロは泣きながら、言葉にならない言語で語りかけてきた。

 「お前たちには心配をかけてしまったな、俺の軽率な行動のせいで済まなかった」

 アリアが突然話しに割り込んだ。

 「あの、ごめんなさい。私が全て悪いのです、どうか私を罰して下さい。お願いします……」

 アリアは頭を下げ、懇願してきた。

 「アリア様、頭を上げて下さい。そして先ほど私が述べたように、此方に非があるので罰するなど不要で、逆に私が謝罪したいくらいです。私も今回は流石に堪えました、これが神罰だと覚り、貴方に対し非礼な態度をとった事を、後悔しました」

 仁はアリアの前で土下座をした。

 「心からお詫び致します。申し訳ありませんでした」

 アリアは仁の土下座に困惑した。

 「いえ、私はその……」

 「アリア様、某が口を開く事をお許し下さい。主が云うように今回は我等に非があるのです。どうか主の謝罪をお受け下さい」

 「わ、分かりました。ですが私にもいわせて下さい。すみませんでした」

 アリアは深く頭を下げ、仁達に謝罪したのだった。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 その日は一日中ゆっくりと過ごす事にしたのだが、アリアが仁の世話をすると言いだし、仁は断ったが誰も調理が出来ないことが判明し、仕方なくアリアの世話になることになったのだった。


 さすがゼノス様が(おっしゃ)ったように、そつなくこなすアリアは嬉しそうに、仁の世話をするのだった。



 仁はアリアや皆に礼や謝罪を兼ねて、夕飯を振る舞う事にした。

 子供達は喜び、カレーライスが食べたいとオッグが通訳をしてくれたので、仁は特製煮込みチーズハンバーグカレーを作り、アリアや子供達に食べさせたのだった。


 牛挽肉のハンバーグの中にチーズを入れて表面をしっかり焼き、ビーフカレーのル一でコトコトと煮込み、1時間冷まして食前にもう一度温めた。

 皿にライスを盛り、チーズハンバーグをライスにのせ、そこへカレーをかける。

 仕上げにスライスした根野菜を油で揚げ、カレーに添えて完成である。

 後は、付け合わせに福神漬けとらっきょうの酢漬けをだし、デザートにはバニラアイスを用意して「いただきます」と手を合わせてから食べだすのだった。


 子供達は早速カレーを一口食べた。

 モグモグと味わい飲み込んで、幸せそうに笑みを浮かべる。

 次に狙うはチーズハンバーグであった。

 しっかり焼き目の着いたハンバーグを匙で割り、中からトロリと流れ出たチーズに声をあげ、ハンバーグを頬張った。

 芳ばしく焼けた肉の表面とビーフカレーで煮込んだコクとスパイシーな味わいで子供達の顔はトロけ、至福の表情は得も言われぬものであった。


 アリアはその一部始終をみて、己の唾を飲み込み、カレーを一匙すくい味わった。


 牛のうま味が口に拡がり、牛挽肉のハンバーグが微かに醸し出す焼いた肉の味と香りが、何とも絶妙な味わいを堪能させてくれるのだった。

 アリアは、はぁ…とひと息もらし頬に手を当て至福の時を楽しむ。


 次にチーズハンバーグへと匙を入れて、一口サイズで頂いた。

 表面の芳ばしくしっかりした食感に、コトコトと煮込んだコクとスパイシーな味わいの後に、チーズがブワッと香り濃厚な味が押し寄せ、もうこれ以上にない至福の時を迎えたアリアは恍惚の表情へと至ったのだった。


 仁は皆の食べた様子を眺めて居たのだが、子供達の表情はまだ良かったが、アリアの表情がヤバかった。

 何この人、エロすぐる!と思い、このレシピは封印為ねばと、心に誓ったのだった。


 ラストのデザート、バニラアイスを皆に配り、各々が口へと運ぶ。

 冷たく甘い味と、舌の上で溶けて消えていくなか、鼻から抜けるバニラの香りがカレーとは逆に感じ、より美味しく喉を通っていった。


 子供達は歓声をあげ、アリアはうっとりとし、ピンク色のオーラを発した。

 (なっ!これもか!やべぇ……)



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 翌日、仁はアリアに第1拠点に残るようにとお願いしたのだが、あっさりと了承を得られ、仁は肩透かしを食らった気分で拠点を後にしたのだった。


 今回は仁がレベルリセットにより、ほぼ全てのスキルがなくなって、テレポート出来なくなり、移動はどうしても戦闘込みになるので、アリアには遠慮して貰ったのである。


 この世界()()の存在であるアリアは、神界の神であるゼノスの娘であり、女神である彼女に歩かせるのは、仁の気が許せないのだった。


 オッグやウルフが先頭を歩き、コボジロは敵を探して移動する一行は、仁のレベル上げをすべく歩くので、結構時間が掛かっていた。


 装備面を整え護衛もあり、戦闘は仁がメインで倒す方針なので、複数は抑えてもらい、1対1で戦えることは、仁にとっては有難かった。


 やはり仲間たちが居ることの恩恵は大きいなと、仁は皆に感謝するのだった。


 「どうですかな?そろそろ使えそうですか?」

 「うん、段々マナの感覚が戻って来たよ、あと少しレベル上げをすれば使えるかな」

 「それはなによりです。では某も協力しましょうか、……サモン・スケルトン!」

 ボワン!と骸骨のモンスター、スケルトンが現れた。


 「おお!スケさんか!」

 「はい?スケさんとは?」

 「ああ、スマン俺の世界でのスケルトンの愛称だよ。よくゲームとかでネーミングに迷う人が《スケさん》と名前を付けていたんだ」

 「なるほど、スケルトンのスケさんですか、良いですな」

 「そうか?やはり此方でも使えそうな名前か?」

 「ええ、スケルトン!と呼ぶよりスケさんと呼ぶのは良い感じですし、しっくりきますな」

 「そういうお前もスケさんなんだがな」

 ハハハ、と笑いあい戯れ、レベル上げにスケさんを倒す仁達であった。


 生活魔法の火起こしでも、スケルトンには有効らしく、武器に纏わせた仁は調子にのり、レベアゲに勤しむのであった。



 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆


 田中 仁 Lv12

 ダンジョンマスター

 HP.18000/18000

 MP.860/860

 DP.50000/50000

 STR.36

 VIT.36

 DEX.24

 AGI.24

 INT.43

 MND.10110

 LUK.6

 スキル

 通常.メニュー.マップ.情報

 召喚Lv1.作成Lv1.分解Lv1.鑑定Lv2

 生活魔法Lv3.治癒魔法Lv1

 戦闘.なし

 耐性.全属性91%無効.状態異常無効.精神異常無効

 加護.異世界の神(不老不死)




さあさあ仁とアリアは、この先どんな冒険をするのでしょう?

最強の女神と最低クラスの運を持つ仁、どうなる?仁に迫る危機や受難は止む処か、加速しかしません。

すみません、調子にのりました、自重します。

次回こそ、12/11火曜日17時投稿予定です。


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