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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第一章、始まりのダンジョン
46/206

仁の女難


 オークキング達を倒して、第1拠点にやってきた仁達は、子供達やオオカミ達と戯れた。

 仁はここが帰る場所だなと呟いた。

 風呂に入り、うまい食事を皆と食べる、ただそれだけで癒されていった。

 その日の疲れせいか、仁はぐっすりと眠りについた。




 ─── ─── ─── ─── ───




 あ、またか……

 「えっと、こんにちは……」

 「…………、あーあー、繋がったかな。改めて、ん、こんにちは、仁君」

 「こんにちは、えっとゼノス様ですか?」

 「ああ、そうだ。それでどうだいそちらは?加護はうまく機能してるかな?」

 (やっぱりゼノス様のだったか)

 「えっとですね、大賢者とか辞めて下さい。ネタを知ってての事でしょうが、チート級の称号じゃないですか、ただでさえ不老不死なのに、これじゃあバケモノですよ」

 「ハッハッハッ、そうかバケモノか、それは重畳、重畳、それでだな、今回こうやってまた連絡できたわけだが、娘のアリアのことだ」

 「えっ?もう決まったのですか?」

 「ん?不服なのか?」

 「いえ、まあぶっちゃけますと、現状無理なのですが……」

 「何か問題があるのか?」

 「……、えーとですね、アリア様がこちら来るのは構いませんが、居場所が無いのです。現在、ダンジョン内を放浪している上に、常時部下たちと行動しているので、娘さんの身を危険に晒すことにですね……」

 「ああ、構わんよ、娘のアリアはそっちの世界の生物はおろか、魔獣さえ勝てないくらいだしな、問題はないぞ」

 「えっ?……、あの、それってヤバいとか言ってたことではないので?」

 「うん……、まあなんだ、ちょっとな男性不信な所があってだな、うん、まあ君なら大丈夫だ、たぶん……」

 「な、なんすか?そのたぶんとか?」

 「ハハ、まあ会えば判るよ、それに娘は美人だし、真面目で何でもそつなくこなすからな、何なら貰ってくれても構わんぞ」

 「えっ!?ど、どういうことです?俺は女性と付き合った事も、話したりするのも苦手なんですよ、それなのに貰うとか、犬や猫じゃないんですよ?」

 「ハハ、まあまあ、気に入ったらで良いんだ、娘も此方に居るより、そっちの世界で見聞きする方が、よっぽど為になると、私が思ったんだ。だから仁君、娘のアリアをよろしく頼むぞ。以上だ、またな……」

 「えっ?ちょまっ……」




 ─── ─── ─── ─── ───




 仁はまた汗だくで飛び起きた。



 「おはようございます」

 仁は聞き慣れない、女性の声が聞こえ方へと振り向いた。

 「えっ……」

 仁はその女性の顔を見て、固まった。

 「お初にお目に掛かります、田中仁さまでしょうか?」

 「…………」

 「あの……、(わたくし)、父ゼノスの命で此方に伺いました、アリアと申します。父より仁さまと行動を共にするようにと云われていますので、ふつつか者ですが、宜しくお願い致します」

 仁は固まったままであった。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 仁は風呂に入っていた。

 汗だくで寝起きなのもそうだが、アリアの顔を見れないからである。

 ゼノスがいっていた美人とは神の基準であり、底辺の仁には正に女神であった。

 神の子であるアリアは文字通りの女神なので、当然であるが仁は免疫がない故に、観ることすら適わず、風呂に逃げ込んだのであった。


 「あの、お背中をお流ししましょうか?」

 「結構です。間に合ってます」

 「では、バスタオルでお身体を拭くのを……」

 「間に合ってます!自分で拭くし!構わないで下さい!」

 仁は困惑していた。

 (男性不信じゃねぇのかよ!なんでぐいぐい来る!話が違うぞ!)


 仁は風呂からあがり脱衣場に入ると……

 「ひいぃーー!な、なんでいる!で、で、出ていけー!」

 「え?あ、あのお身体を……」

 「さ、さっきいらんと言っただろう!さっさと出てけよ」

 「分かりました。ではバスタオルはここに置いて行きますね。お召し物は如何しましょうか?」

 「は?いいよ、全部持ってるし、自分で着れるから、構わんでくれ!」

 「承知しました。なにか在りましたら、お呼び下さい」

 アリアが居なくなった事を確認してから、仁は浴場から脱衣場に入った。

 仁はいそいそと体を拭き、服を着たその時「お食事は如何しますか?」とアリアが乱入してきて「ひぃ」と飛び上がり、仁は気絶した。



 仁は目覚め、頭があった場所に気付きテレポートで脱出した。

 非常に危険で甘美な場所《膝枕》は、母にしかされたことがないので、危うく触るところであった。

 触れば、如何様に料理されるか判らない青春時代を経験した仁には、まさに地獄の入り口であったのだった。

 《膝枕》それは仁には、してはならない行為である。

 (やべぇ、ケツの毛まで持っていかれるところだった)


 「貴様、アリア様の偽物だな!」

 「は?何言ってんだこいつ……あ、いや、オホホホ、(わたくし)は正真正銘、アリアでございますわ、オホホホ」

 「むむ、やはい偽物か!本物のアリア様を何処にやった!」

 「はあ?あんたバカなの?私がアリアだって言ってるでしょ!」

 「な、なに?俺は馬鹿だが、騙される程馬鹿じゃないぞ!男性不信なアリア様がお前みたいな〇ッチじゃないはずだからな!」

 「な、なんですって!?あたしの何処が〇ッチなのよ!これだから男って信用ならないのよ!いつもいつも人のこと見た目だけで判断して、どうして父様はこんなあんぽんたんをあたしに宛がうのよ!!」

 「ああ?何言ってんだこいつ、お前がアリア様で在るわけなぇし、人の入浴時に乱入するビッ〇の訳ねぇし、アリア様の父ゼノス様はちゃんと娘を愛して心配している父親だし、お前みたいな跳ねっ返りのビッ〇の親父は可哀想だな、お前ちゃん親父と話してないだけだろそれ」

 「な!な……わ、わたし……」

 アリアは父親を思いだし泣き始めた。

 「あ、あれ?…………な、なあ、どうした?」

 「あっちいって!」

 「お、おう……、すまん、なんかきつく言ってしまったな、申し訳ない」

 アリアはそっぽを向いて俯いたのだった。

 仁は昔のように対応してしまった事を悔いたのだった。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 仁は仲間たちの朝食を作り、食べさせ、アリアがくるのを待った。

 (まさか本物なのか?)

 しばらくすると、アリアがダイニングに来たので、プリンアラモードを出し、席に座らせた。

 「すまなかった、これでも食べて、話せる事情なら聞かせてくれ」

 「…………、こんなんで許すと思ってるの?」

 「良いから食え、食えば落ちつくだろ、それに許してくれなくても良いからな、親父の悪口だったら俺も許さんからな」

 「いただきます……」

 アリアは一匙口に入れ、涙を流した。

 「お、おい大丈夫か?」

 「……、美味しい……グスッ」

 「は、なんだそれ」

 アリアは幼い時の父と母を思い、両親の愛を思いだしたのだった。

 甘くて柔らかな食感は、その記憶を呼び覚ましたのだった。


 アリアの食べているプリンアラモードを子供達が見詰めていたので、仁は全員分のプリンアラモードを作り一緒に食べた。


 オークの子供達やゴブリン、コボルトやオーク、オオカミ達が仁を囲んで嬉しそうにプリンを食べる姿は、アリアには理解できないくらいに衝撃的に映ったが、仁が笑い楽しそうな顔に、父と母の顔を見た気がしたのだった。


 アリアは仁に襲われたら還るつもりだった。

 だが予想外の仁に言われた「お前ちゃん親父と話してないだけだろ」という言葉は、まさにそのままであった。

 アリアは言われて気付き泣いてしまい、初めて他人しかも、ただの人間に見られたあげくに、食べ物で釣られ大事な事を思いだすという、アリアにとって初の屈辱であった。


 アリアは誓う、仁をメロメロにして、振ってから還ろうと……


 やはり〇ッ〇であった。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 「えーと、アリア様は第1拠点で子供達の世話をお願いします」

 「……、イヤよ」

 「駄目です。ここで留守番をしていて下さい」

 「なんでよ、父様は行動を共にしろと云われてるんだから、あんたの命令には従えません」

 「分かりました。ならついて来られたら、許可します」

 仁はテレポートでアリアを残し転移した。

 「あ!ズルい!私から逃げるなんて出来ないんだから!」

 アリア全力で仁達を追って走りだした。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 仁達は、ゴブリンの集落へと転移してきた。

 「まったく、かなりの厄介者だな」

 「いいのですか?ゼノス様のお嬢様を無碍にして、後でなにかあったら恐ろしいのですが」

 「う、だがあんなのと居るくらいなら、まだ罰を受けた方が楽だろ?」

 「まあ、そう言われればそうですが、仕返しも怖いですな……」

 「…………、俺にどうしろというんだ!」

 「そうですね、我慢ですね……」

 「ぐ……、ん?な、なんだ?」

 4階に地響きが起きていた。


 ドドドドドドドドドドドドドド

 地響きが徐々に大きくなり、何者かが近づく足音と、叫び声が仁達へと迫ってきた。

 「いたーーーー!!まちなさーい!」

 「げっ!!もう来たのか!」

 「見つけたからには、ついて行くんだからー!」

 「ちっ、しょうがないな、と言うと思うなよ!」

 仁達はまたテレポートで転移した。

 だが、仁は吹っ飛ばされたまま転移した。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 「ぐはっ!」

 「捕まえたー!」

 「ぐぞ、なんというパワーだ……」

 「フフフッ、私から逃げるなんて1万年早いわよ、もう逃さないからね……、あれ?」

 仁はぐったりとして、動かなくなった。

 この世界で最初の死亡だった。


 「ちょっと、なに寝てんのよ……、し、死んでる……、ちょっと!あんた不老不死なのに、なんで死んでるのよ!根性みせなさい!」

 アリアは女神なので、全力で仁を攻撃したら死ぬことに気付いていなかったのだった。



 ─── ─── ─── ─── ───



 アリアは大急ぎで、神界の父の元へとやってきた。

 「父様!た、大変なの、ひ、仁が……」

 「どうしたアリアよ、仁君がどうかしたのか?」

 「えっと、その、殺しちゃった……」

 「…………!!バカも--ん!」

 「キャッ!」

 「お前は何しに行ったのか、判らんかったのか?」

 「えっと、お見合い?」

 「…………、お前は………、まあ、彼なら許してくれるだろう、もう戻れ、いいな」

 「え?イヤよ、あんな所戻りたくない!」

 「判った、ならお前とは親子の縁を切り、神界追放の刑に処する」

 「な、なんでよ!あいつが悪いのになんで私が追放されないといけないのよ!」

 「彼が、あの世界の神の尻拭いをしていると言ったであろうが!それを殺して、許されると思うお前は、神々からどう映ると思うのだ?」

 「え?…………、分かりました、戻ります」

 「そうしてくれ、仁君があの世界でどれだけ頑張っているのか、少しだけでも知っていればこんな事にならなかったはずだ。彼がなぜ選ばれたかをよく考えるんだな」

 「はい」

 ゼノスは頭を抱え、溜め息をついた。



 ─── ─── ─── ─── ───



 「ぐはっ!!ハアハアハア………、何が起きた、あれ?、なんでここに居るんだ?」

 仁はこの世界に来た、最初の地で復活したのだった。


 「なんでだ?俺は…………、あ!もしかして死んだのか?え?不老不死で死ぬと…………」

 仁はステータスを開いた。






















 田中 仁 Lv1

 ダンジョンマスター

 HP.5000/5000

 MP.500/500

 DP.50000/50000

 STR.10

 VIT.10

 DEX.10

 AGI.10

 INT.25

 MND.10000

 LUK.1

 スキル

 通常.メニュー.マップ.情報.召喚Lv1.作成Lv1.分解Lv1.鑑定Lv1

 戦闘.なし

 耐性.全属性90%無効.状態異常無効.精神異常無効

 加護.異世界の神(不老不死)


 「ま、マジでかぁ」

 仁のステータスはLv1に戻っていたのだった。



新たな幕開けです。

仁の女難は前世では筆舌に尽くしがたいものです。

この程度は日常茶飯事であり、大丈夫なので、今後も頑張って貰いましょう。(合掌)

次回は、12/4火曜日17時投稿予定です。



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