冒険者見習い
二人目の主人公の登場です。
人類国家のひとつ、エルトランド王国。
それは大陸の南西部にある、比較的温暖な気候で穀倉地帯が広がる国である。
人口はそれ程多くはなく、一〇万人前後の小国である。
全人類、千数百万人程の世界では、一〇万という数字は少ないと思うが、生きること自体が難しいこの世界では大したものである。
何故なら、この大陸の中央北側には危険な魔物たちが棲む、誰も近寄れない大樹海がある為である。
そんな小国の小さな町カシムに、マークという少年が住んで居ました。
彼は、まだ一二歳の子供ではありましたが、家が貧しいので働いています。
マーク 冒険者見習い
まだ体も小さく頼りない印象の彼ですが、一生懸命に働く少年です。
彼の夢は冒険者として活躍し、いずれは英雄になることです。
少年として誰もが一度は思う夢、『英雄になりたい』と想い、冒険者見習いを選んだのでした。
そんな彼を大人たちは、暖かい目で見守ります。
「おはようマーク、今日も元気だな」
「おはようございます!」
畑のあぜ道を走るマークに、知り合いのおじさんが声をかけます。
「今日は何をするんだい?」
「はい、アレクさんのパーティーで荷物持ちです」
マークは一度立ち止まり返事をします。
「そうか、気ぃ付けて行くんだぞ~」
「はい、行ってきます!」
マークは、おじさんにお辞儀してから走りだした。
◇ ◆ ◇
カシムの町の東門に到着した。
町に入る為に一度止まり、兵士に一礼をすると、マークはまた走りだした。
本来は、身分証を提示しなければ通れないのだが、マークは隣村の住民であり冒険者見習いなので、顔パスで通れてしまうのである。
そして町の中央、北側にある冒険者ギルドを目指します。
◆ ◇ ◆
冒険者ギルドに着いたマークは、あたりを見渡しアレクを探します。
「アレクさん、おはようございます! 今日も、よろしくお願いします!」
マークは、受付カウンターにいたアレクに元気よく挨拶をする。
「おう、おはよう今日も早いな」
「皆さんは、北門ですか?」
「ああ、いつも通りの北門だな」
「何か持っていく荷物はありますか?」
「いまは特に無いな、オレは手続きしたら行くから、先に行っていいぞ」
「分かりました、では先に行きますね」
「…… 毎度律儀なこった」
走り去るマークの背中を見送り、アレクは呟くのだった。