ミスリルの武具
4階の探索を開始し、東にある通路に向かうのだが、ウルフはついて来るとしてオオカミはちょっと困る。
拠点に居るようにと、家族は留まりついては来てないが、他のオオカミ達がぞろぞろと後をついて来ている。
このまま通路までついて来るなら、追い返すことも面倒なのでウルフも拠点に戻って貰うことにする。
流石に数十頭を連れていくのも、ウルフだけ連れて行くのもよろしくないと仁は思った。
東の通路が見えてきたがまだついて来ている。
やはりウルフは群れと一緒に拠点に帰って貰うかと思ってオッグに命令させようとしたのだが、ウルフがひと吠えするとオオカミ達が足を止めた。
なるほど、流石について来ると困る事をウルフは察していたようだ。
ならこの先ウルフにもついて来てもらうことにする。
オッグにはウルフと行動を供にして貰うとして、連携をどうとれるかが問題だと思う。
まあウルフは頭も良さそうだし、後はウルフの行動を見て判断するしかないかなと仁は思った。
今回、先行するのは仁、その後ろにオッグとウルフになる。
流石にオッグに先行させ、ウルフが突っ込んで行かれたら、何が起こるか分からなからという理由だ。
とりあえず仁が判断して、行けそうなら行く感じでいく事にした。
現在、東の通路に入ってから道なりに北へと進んでいる。
あれから2回ほど戦闘になったが、オッグとウルフだけで戦闘は終わった。
敵はオークだったが、オッグとウルフは問題なく倒せた。
最初、オッグは大丈夫だがウルフがオークを倒せるかは分からなかった。
オッグと同じ種族のオークを迷わず倒したところで、ウルフに対する懸念は消えた。
まあ同じ種族でもオッグの格好は完全に戦士なので、普通の敵であるオークは裸同然だから、分かるのも当然かと思った。
で、この先なんだが何やら様子がおかしい。
焦げ臭いにおいが強くなっていくのだ。
オークが火を使っているのか、それとも火事でも起きているのか分からないので進んでみるしか無いのだ。
なにせこの道しかないのだし………
だいぶ進んで来たが、煙がうっすらと充満している。
火事ではないようだが、何かを燃やしているらしい。
洞窟内で燃やすとか、空気はあるが煙いのは止めて欲しいと、布を鼻と口にあて我慢をしているが、目も痛いのでもう限界である。
ウルフはずっと匍匐でついて来ているのがやっとのようだ。
やっと目的の火元を発見。
どうやらオークの集落が焼き討ちにあったらしい。
オークの死体が彼方此方にあり、とてもじゃないが近寄り難い事になっている。
見た目も酷いが、腐臭が酷い。
いったい何があったのか分からないので、進むのは断念し拠点に戻る事にした。
やっと拠点のある大洞窟にでて安堵した。
拠点に戻ってきたが、あの状況だとかなり時間あの状態だったはずだ。
オーク達の死体の状況だと焼き殺されたのが原因だろうし、死後10日位かそれ以上か、どちらにしろ火が消えスライムが片づけてくれないと病気とかが怖いし、オッグやウルフ、ゴブタロとコボジロがすでにウイルスを貰っていたらと思うと、もう一刻も早く離れたかった。
とりあえず病気とかはポーションで治すとして、しばらくあの場所には行かない方が良いだろう。
火を使うモンスターか、火の魔法なのか分かれば良いのだが不安は尽きないのだった。
当分やることがないので、風呂を作ろうと考えてみた。
問題は排水する場所が無い、なら排水した水をスライムで浄化出来ないかを検証してみる。
まずドラム缶を出し、お湯を入れていく。
次に、それに入りじっくりと暖まり、中で体を洗った。
メッチャ垢が出たので、ドラム缶の中にスライムを召喚してみる。
1時間後、ドラム缶の水がどうなったかを確認する為に、ガラスのコップをだしドラム缶の水をすくう。
白いボードの前にそのコップを置きライトで照らす。
うん、色も汚れていないので、次は黒のボードの上に置く。
ライトで照らすコップの水は無色透明だなと思った。
ここまでスライム浄化が出来るなら、浴槽を造りを実行する。
後は場所を何処にするかだ。
トイレとは反対側、拠点の横に3m×2m四方の場所を確保し、つるはしでザクザクと掘り起こす。
その後、適当にならしてその上に木製の浴槽を召喚して設置した。
良い感じになったので、浴槽の周りに囲いを造り、露天風呂風にしてみた。
洗い場は造れないが、まあ良いだろうと思った。
その日の残り湯は凄く汚れていたが、スライムを一晩いれていたので綺麗な水になっていた。
スライムには汚れを残さず食べてくれと命令したのだが、浴槽の周囲までも綺麗になっていた。
召喚スライムは有能であった。
因みにお湯は、水を作成でお湯にするだけです。
その後数日は素材を集めをして過ごし、のんびりと過ごした。
オークの集落を見つけた日から3日経ち、様子を調べに再度向かった。
結果、煙や臭いは無くなっていた。
集落跡地は遺体ごと無くなっていて、地面に跡だけが残っていた。
あのオーク達は奥から来て、ここに集落をつくったのだろうと思った。
燃やされ煙が充満していた時とは違い、拠点の大洞窟ほどではないが、ここも大きな洞窟だった。
高さもあり、広さもある洞窟。
ここならオオカミ達を連れて来ても大丈夫だと思い。
仁達は拠点に戻る事にした。
「オオカミ達を呼びに戻るぞ」
と仁が一言いうと、皆は肯き歩きだした。
だがウルフが前に周り、ワフッ!と吠え走り出した。
え?と仁がオッグの顔を見たが、はい?的に首を傾げている。
うん、迎えに行ったのかもと少し待ってみた。
15分位でウルフがオオカミ達を大勢連れてきたのだった。
オオカミ達を数えたら、丁度100頭を連れて来ていた。
何ともまあと感心していると、オッグに頭を撫でて貰っているウルフをみて仁はふっと笑ってしまった。
オオカミ達が居るので、ここの洞窟を探索をしようと思い歩き出すと、此方に何が飛んでくる音が聞こえ、見ると火の球が見えた。
「避けろ!」と仁は叫び立ち塞がった。
後ろではゴブタロ達が動けずに仁の背中を見詰めていた。
オッグが楯を構え前に出ようしが、火の球は仁に命中し燃え上がった。
驚愕したオッグが仁に近づくが、熱で近付けない。
すると炎が治まり始め、仁が立っている。
「ほう、あれを耐えるのか」
声の先には、ボロを纏った骸骨がいた。
リッチ【守護者】Lv25
備考.この階層の守護者。
仁は鑑定結果を見て、オーク達の集落を襲った犯人、もとい敵と判断した。
「お前がオーク達を焼いたのか?」
「そうだ、何の許可も得ずに勝手に住み着き、居座って目障りだから燃やした」
「そうか、なら俺も焼かれそうだな」
「焼かれたいなら、焼いてやるがね」
ふっ、と仁は笑いオッグ達全員に手を出すなと命令し、リッチと向き合った。
オッグ達は下がり、仁の動向を見守ることにした。
「もう別れは良いのか?なら始めるとしよう」
仁は肯き歩きだし、バッグから蒼白い盾をだし構えた。
眼前に飛んでくる火の球を盾で受け止め耐える。
すかさずミスリルの剣を握りしめ走り出した。
炎の中を飛び出し、走りくる仁を見てリッチは驚愕し、接近を許してしまった。
仁はリッチの顔面にミスリルの剣を叩き込み、「舐めすぎ」と一言いいリッチは崩れていった。
「貴様は何者だ……」
「ダンジョンマスターだよ」
聞こえたかどうかは分からないが、リッチは跡形もなく消え去った。
後ろに控えていた者達は、主人の勝利に雄叫びあげ歓喜した。
仁はカッコつけたが、心臓は痛いほどドクドクと激しくなっていた。
(し、死ぬかと思った)不老不死に未だに慣れない仁だった。
初めて魔法で攻撃してくる敵と戦ったが、オッグ達の装備では耐えられないと気付いた。
仁は魔法耐性が高いので、ほぼ無傷だったが、熱はそのまま熱くキツいのだ。
おそらくオッグ達の装備は燃やされ、身体ごと焼くと思った。
仁はミスリルの防具を造っていた。
ミスリルを糸状にし、シャツに混ぜた。
次にミスリルのチェインシャツを作り、ミスリルの胸当てを作り全てを装備していた。
そしてミスリルの盾を作り準備をしていた。
なぜこの浅い階層にミスリルが在るのか?
不安はオーク達の集落が焼かれていた事で、ミスリルの武具を揃えておこうと思ったのだった。
今回、リッチの放つ魔法の炎はミスリルの防具で耐えることは出来た。
だが熱は通り焼かれる事が分かったので、最低ミスリルのチェインシャツは必要だと思った。
出来れば全員にミスリルの防具を用意しようと思ったのだが、皮革が足りない。
仁の分だけ作った理由である。
前にも思ったが、何でもやりたい放題はヤバい、感覚がマヒしたら駄目だと仁は思うのだ。
だが、防具の実証実験ができ、防具の耐性が全てにある訳ではなかった。
たまたまミスリルがあり、だが準備できないで焼かれていたらと思うと、死ぬのは仁ではなく、オッグやゴブタロ、コボジロ達なのだ。
なら、足りない物は召喚する事を解禁し、素材を揃えていくことは必要だと思ったのだ。
命が大事、生き残る事が優先、出来る限り必要だと判断できれば、拘る必要はないと学んだからだ。
善は急げと、足早に拠点に戻る仁達だった。
まだ4階でうろうろしている作者です。
すみません、まだ続くんです。




