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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第一章、始まりのダンジョン
30/206

魔法入門書


 3階の探索を再開した仁達は、通路を奥へと進んでいる。

 マップで確認したところ、降りて来た通路を北周りに西へと向かっていた。


 どうやら、3階はかなり広い階層になりそうだと仁は思った。

 くねって時々戦闘になるも、通路は広めなので支障はない。

 だが先頭は仁でないと、コボジロにはヤバいので生死に問題ない仁が大変なだけであった。

 俺に任せろと言いたくても、どれだけ戦っても一向に戦闘スキルが生えないのが悔しい仁である。


 そこそこ進んだ所で、また横道があり2つ目かと期待して横道に入った。

 奥にはやはり部屋があり、宝箱もあった。

 前回同様確認作業をし、部屋へと入る。

 宝箱を鑑定すると


 宝箱【初級】

 ランダムでアイテムが入っている宝箱。


 以前見たことがある宝箱だった。

 今度はなにが入っているのか期待しつつ開けた。

 中には一冊の本があった。

 鑑定すると…………


 魔法入門書

 誰でも読める魔法入門の本。

 生活魔法を始め、属性魔法、時空魔法、空間魔法、召喚魔法、治癒魔法など、魔法全般を解説。

 ※適性が無い場合は使用できません。


 仁は固まった。

 待ち焦がれた魔法が使えるかもと、ずっとリュックにしまったままの魔法書を大事に取って置いた仁に、念願の魔法を覚えられるかもしれない魔法書であった。


 「イヤッホォーーー!」

 思わず叫んだ言葉はこれであった。

 仁は魔法書入門書を開いた。

 よ、読める、わ、判る、こ、これが魔法というものかと思ったが、何も起きないのだった。


 読めたが覚えた訳ではない。

 覚えるには読んで理解しなければ魔法は使えないのである。

 だが仁はそれが分からなかった。

 先入観が読むと覚えられると思って居たからだ。

 ゲームのようでゲームでは無いので、読めたところで魔法が使えるはずが無いのであった。

 それに気付いた時は、穴があったら入りたいと本気で思い穴を掘り出した程だった。


 落ち込んで部屋の片隅に膝を抱え座った仁を見つめるゴブタロとコボジロは、主人を慰める術を知らないのでただ見守ることにした。


 30分ほど経って仁は本を読み始め、何やらブツブツと呟き真剣な表情で本を読み進めた。


 徐に立ち上がり、手を見つめて何やら集中しだし、ボッと手のひらに小さな火が揺らめいていた。

 仁が行ったのは、生活魔法の初歩、火起こしであった。

 「で、出来た!」

 ゴブタロとコボジロが拍手をした。

 二人は素直に主人は魔法使いだと思ったからだった。

 仁は生活魔法の初歩をしただけだったので、恥ずかしく思った。

 端からみると、変な光景だがお互いに相手を想った行動である。

 その日は、部屋に籠もって魔法書を読み進めた。

 休息しては、食事や仮眠をとり、起きてまた魔法書を読むを繰り返し、結果は生活魔法全般と治癒魔法のヒーリングのみであった。

 因みに仁は属性魔法全般、時空魔法、空間魔法の適性はあるが基礎となる訓練方法が判らず使えないのであった。

 本の説明にある通り解説書なので、攻撃や事象に干渉する実技は記されていなかったからである。


 1日程休みが取れた仁達は、食事を取ってから、残りの探索を再開した。


 治癒魔法のヒーリングを覚えた仁はずんずんと進んでいった。

 敵に遭遇しては果敢戦い、傷が出来ても気にせずごり押し倒していく。

 ヒーリング万歳!と言わんばかりにそれぞれの怪我を治していった。

 慢心である。

 何があっても魔法があると、以前の死なないが、怪我をせずに戦い方を工夫し、何事も慎重だった仁は何処にも居ない。

 そんな仁を諫めたのは、ゴブタロであった。

 ゴブタロは魔法で何でも解決する主人にそれは違うとばかりに首を横に振った。

 仁は何するものぞと強引だったが、ゴブタロは首を横に振り続けた。

 仁はそんなゴブタロを理解しなかったが、コボジロも同様に首を横に振った。

 仁はなにが起きてるのか、考えたが原因が己のこととは判らずに居た。

 そんな時にそれが起きた。

 ゴブタロの後ろから大きく振り落とされる攻撃が見えた。

 次の瞬間、コボジロが蹴り倒されるのを止められなかった。

 襲ってきたのはオークというブタ面のモンスターだった。

 ゴブタロは血を流し倒れ動かない、コボジロは蹴られ壁にもたれ動かない、無警戒からの不意打ちで残るは自分のみという事実に気付き己の慢心に思考が止まった。

 仁は飛んでいた。

 自らではなく、オークの蹴りを喰らい吹き飛んだからだ。

 走馬灯のように流れる思考に全滅の二文字が過ぎり、己のせいだとはっきりと自覚した。

 気付いた時には剣を片手に、オークに切りかかっていた。

 次に見えたのは、驚いたブタ面だった。

 無我夢中でブタ面のモンスターをズタズタに成るまで切りまくり、剣が折れたところで我に返った。

 辺りを見渡しゴブタロ達を見つけて駆け寄った。

 そこには血溜まりで動かなくなったゴブタロと壁際で首が折れ死んだコボジロが居た。


 どれ程経ったか判らず佇む仁が目にした物は、スライムがゴブタロとコボジロを溶かし終わったあとの地面だった。

 もう何無い、在るのはゴブタロの血溜まりとコボジロの溶かされた跡だけだった。


 バカだった。

 後悔先に立たず

 失って初めて気付いた己の慢心

 それを諫め正そうとしたゴブタロとコボジロは跡形も無く居なくなった。

 なぜ魔法が使えるくらいでこうなった?

 なぜこうなると教えて正そうとした者が死ななければいけないのか?

 すべては己の慢心のせいだった。

 泣こうが喚こうがもうあの二人は帰って来ないのだ。


 俯き嘆き地面を叩き崩れた己の目にはメニューの召喚の文字が光っている。

 訳も分からず押すと、ゴブタロとコボジロの文字が光っていた。


 あれ?ま、まさかと震える手が思わず伸び空ぶった。

 気を取り直してゴブタロの文字を押す………

 ボフンと召喚されたゴブタロが居た。

 思わず鑑定までして確認したが、間違いなくゴブタロだった。

 ならコボジロもと召喚すると、ボフンとコボジロが現れ、鑑定確認して仁は泣き崩れたのだった。


 仁はゴブタロとコボジロに土下座をした。

 だがゴブタロとコボジロはなにがあったか分からない。

 その理由を仁は知っていた。

 二人ともレベルが2下がっているからだ。

 理由はもう一つあり、鑑定確認時の備考欄に時間逆行という文字があったからだ。

 要は無かった事にするからレベル低下位はいいよね?ということだろう。

 謝る事すら出来ないどころか、謝る意味が消えたことで、謝っても駄目な事があるんだぞと、神の御心を見た気がしたからこその土下座であった。

 もう二度と慢心しないと神に誓う仁であった。


 その後、仁は慎重な行動で通路を進み3階をくまなく探索をしたが、オークに会うと全力で攻撃をし何もさせないで仕留めていたのは、八つ当たりであった。


 4階への階段はもう見つけてあるので、一度宝箱の部屋に戻り食事と休息をする事にした。


 部屋に到着した仁達は、荷物を整理をして一旦休憩にした。

 色々やり過ぎて反省しないとやり直せないと思ったからである。

 今のゴブタロ達には、無かった事になってるので仁が独りで反省しないと意味すらないのだ。


 反省もそうだか、もう拘りは辞めようと召喚から、ある物を呼び出した。

 それは回復のポーションとマジックバッグだった。

 なぜポーションとマジックバッグかは、いざという時の為である。

 今回咄嗟の行動が出来なかった理由のひとつに、荷物を持ちすぎていたのが原因である。

 動いていたら止められなくとも、ひと太刀でも与え手を遅らせる事も出来たはずだった。

 なのでマジックバッグはゴブタロやコボジロの荷物を減らすのに必要だし、もっと素材を集めて武具作成をすべきだと思ったからである。

 まあそこも召喚で調達すれば良いとも思うがやはり可能な物は調達した苦労が無いとつまらないからだ。

 要は我がままであり戒めみたいなものだ。

 死んでもレベルが下がるだけだよなんて言えないのと一緒である。

 可能なことはやる、だがどうしても必要なら出来うる限りはやるということだ。

 今回は己の慢心が原因だったのだから、締めるところは締めて行かないといけないと思うのだった。

 いざという時の回復薬と動きを阻害させないように重量軽減のマジックバッグなのだ。


 全員の荷物を整理して、必要ものをマジックバッグに入れていき、必要ない物は素材だけ残し置いて行くことにした。

 ポーションは仁が管理して、ゴブタロとコボジロに3個づつ持たせた。

 荷物整理も終わり、食事の支度をする仁は、メニューも出来る限りは良いものを食べようバランスも取ろうと思い、ご飯に豚汁、根菜と大豆の煮物、漬け物数品にしてみた。

 ゴブタロとコボジロはスプーンで食べて貰うがどうだろうか?和食は口に合うか分からないと思ったが、予想外に漬け物をバリボリと食べていた。

 一安心したところで仁も久し振りに和食を堪能した。

 久し振りの豚汁にブタ面が思い浮かんだが、豚汁にしてやると思い喰らった。



仁のトラウマ回でしたが慢心はダメです。

たとえやり直せてもダメです。


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