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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
序章、見習い冒険者マーク
23/206

逃亡者


 「どうだ?」

 「ん……、3人か?」

 「残念、5人だ」

 リッキーに色々と調べて貰ったが、どうやら間者が居るらしく、マークが監視されているそうだ。

 マークはまだ経験が浅いので、こういったスパイが居る事を知らない。

 「アレクは左から、リッキーは右からな、俺は正面から行く、後退するなら追わん、もし此方に手出しするようならやってしまおう、いいな開始は3分後、行け」

 「おう」「あいよ」


 少しの間をおき仁は立ち上がり、隠れているであろう場所へと近寄っていく。

 「そこに誰か居るのか?居るなら出てこい、話しがあるなら聞くぞ……」

 「…………」

 「そうか、残念だな……」

 仁は懐から球を取り出し、木々の間に投げ込んだ。

 投げ込んだ数秒後、激しい音と目の眩む強烈な閃光が発生し、暗闇からうめき声がして、静かになった。


 「もう良いぞ、アレク、リッキーは確認と捕縛をしてくれ」

 「えっと、終わりですか?」

 「ああ、たぶんな」

 「しかし、何いまの球は?」

 「閃光炸裂弾ってやつをアレンジした閃光音響爆弾だ、俺しか作れんがな、しかしあっさりだったな、量産したらダンジョンがヤバい」

 「えっと、なんでです?」

 「あんなの自爆しかしないだろ、光るだけなら何とかなるが、耳がやられ敵がくるから、待ったなしのピンチだな」

 「な、なるほど怖いわね」

 「お待たせ、とりあえず手足縛って猿ぐつわ?ってやつを付けて転がしてある」

 「そうか、あとは尋問だが、どうすっかな……」

 「……面倒だな、ギルマスに任せるか?」

 「んー、迷惑だろうな貴族絡みだろうし、しゃあない連れてくか尋問しないと意味ないな」

 その後、アリアさんが馬車で回収し、ダンジョンに運ばれた。



 回収されテレポートで、ダンジョン10階にある牢獄に運ばれた。


 「さて、これから尋問するが、なにも言わないのだろ?」

 「…………」

 「まあ、そうだろうな、だから何も答えなくても良いからな、さてアリアあれはもう与えてあるんだよな」

 「はいマスター」

 「そうか、なら問題はないな」

 「あ、薬といっても軽く睡眠薬だし、そろそろ効いてきたろ」

 「……………」

 「よし、寝たな始めるぞ」

 「はい、準備はできてます」

 「まずは鑑定……ふむ、ここの領主?カーラント?……とりあえずメモしとこう、次はメニュー情報の解説だったか?」

 「はいマスター」

 「よし、ふむ、なるほど、ここの領主が、マークの監視とスパイの捕縛が目的らしい」

 「えっと、マジですか?」

 「ああ、ダンジョン関連でかなり国外から間者が侵入したらしい」

 「まあこれ以上の情報は無理だな、というかバレすぎ、よっぽど諜報関連の組織とか人材が居ないんだな」

 「諜報関連?な、何ですかそれ?」

 「………そこか、そこからか、なるほど、えっとスパイは説明したよな」

 「はい、余所の国とか敵対している組織?が情報を集めたり、技術を盗むんですよね」

 「まあそんなとこだ、でだな何故スパイが情報や技術を集めるかは、それが豊かさに繋がるからだ」

 「ですね、分かります」

 「通常は個人、組織はスパイを雇うんだが、国絡みは専属の組織を作るんだよ、出ないと国もしくは領地から人も情報も技術も全て余所の国に持って行かれるからだ、人材確保は国防の要だからな」

 「国防?」

 「ああ、国や領地、人や財産を守るという事だよ」

 「な、なるほど、その諜報関連の組織と人材確保が重要って事なのね」

 「ああ、まさか直接、領主から依頼とか鑑定にでて、困惑したぞ」

 「確認なんだが、ここの領主はアルフレッド・カーラントか?」

 「はい、アルフレッド・カーラント公爵様です」

 「そうか、他の連中も調べてから、ガイアさんに持ってくか、こいつら」


 捕縛した5人を馬車に乗せたが、ギルドに向かう途中に門があるので、ダンジョンの素材と一緒に通す作戦だったが、何故かなんの検査もなく通されるというなんとも言えない顔で通る事になった。

 「どうなってるんだ、ここの警備は?ダメだろう」

 「まあまあ、今はいいじゃないですか、このままなら助かるんだし」

 「そうですね」

 「本格的に諜報関連はなんとかしないととか以前の問題だな………」

 「そろそろ着きますよ」

 「おう」


 ギルドに到着し、受付でギルマスのガイアに面会を申請したのだが、直後にガイアの執務室に通された。


 「よお、お疲れさん」

 「こ、こんにちは、来ることは判ってましたか……」

 「ああ、昨夜捕まえた連中も居るんだろ」

 「ええ、馬車に積んであります」

 「ほう、積んであるんだな、なら換金してくれるんだな?」

 「はい、そのつもりで来ましたから」

 「そうか、それは有り難い、少し色を付けて買い取るとしよう」

 「有り難う御座います」

 「あ、それとな今度領主様が来るんだが、マークとの面会を整えろと言われた、マーク構わないよな」

 「……はい、分かりました」

 「うん、頼む、日時は領主様が到着しだい、報せる」

 「一つ良いですか、マークだけですね?」

 「お、おう、マークだけだな……」

 「分かりました、ではこれで失礼します」

 「ああ、またな……」



 「どうやらギルドも噛んでたみたいだな」

 「そうなんですか?」

 「ああ、マークに託けて俺を引きだそうとして、クギ刺されてしまって、歯切れが悪かっただろ、まったく………」

 「あ、なるほど、えっ?色々バレてるんですか?」

 「まあな、最初からこうなるのは想定していたしな、その為にぼろ出しても拘束されないように契約したんだ。それでも捕まえるなら、遣ってしまえば良いからな」

 「マーク、世の中はこういった危ない連中、まあ俺もだが、こういった駆け引きは力を持つ者にはつきものなんだ、覚えておけよ」

 「はい」

 「よし、換金して帰るか」

 「ほーい」「はい」

 「子供たちに土産でも買うか」

 「良いね、酒も買いたいな」

 「良いぞ、マイクさんとこで今夜呑もう」

 「よっしゃ」


 領主到着と面会の報せは3日後にあった。

 「それで面会はいつになったんだ?」

 「はい、明日の午後です」

 「午後か、それだけ?」

 「はい、それだけです」

 「そうか、時間は向こう側次第ということか、なら明日はマークには悪いが休日としよう」

 「おう、子供たちにも言っとくな」

 「よろしく」

 「ヒトシさん、あの……明日僕は面会として、なにをしないといけないんですか?」

 「ん?特にないぞ、領主様と会い適当に対応するだけだな」

 「それだけですか?」

 「ああ、それだけだ、余分なことは適当に正直に話せばいいし、ダンジョンと俺関連は契約で話せないから、マークに任せるよ」

 「はい、分かりました」

 「不安なのは分かるが、成るようにしか成らないからな、なにが起きても正直に有ればいい、もし向こう側が何かしようしても、俺はお前達とあり続けるから、安心して行ってこい、たぶんだが神は見ているはずだ」

 「はい」

 マークの頬にひとすじの涙がこぼれ落ちた。


 翌日の昼前、マークはマイクさん達家族に見送られ、カシムの町の公邸に訪れた。

 マークが公邸に到着したのが、お昼の12時前で、面会の為に待たされた部屋に入ってから、既に5時間が経ったのだが、未だに対応が無い状態であった。

 マークはひたすら我慢して待ったが、もう日が傾いて空は赤くなりかけていた。

 さすがのマークでも、これ程待たされることは無いだろうと、廊下に出たが誰も居ない以上どうすることも出来ない。

 仕方なく待ち続け、もう面会は無いだろうと諦め部屋を出た所で取り抑えられたのだった。


 翌日、カシムの町の広場には、謀反人として、マークの罪状が綴られた高札が立っていた。

 町は上へ下へと大騒ぎとなり、翌日の昼に処刑となる報せがなされ人々は驚愕し、ギルドや公邸の前で抗議の声を叫びあげ泣くことしか出来ずにいた。


 その頃仁は無言で、公邸を望める場所から一点を見詰めていた。

 「ヒトシさん、どうすんだこれ?」

 「ん?どうすると言われてもな」

 「そうなんだが、マークはここに居るし、どうすんだ?」

 「まあ、向こう次第かな、しかしどうするんだろうな領主様は」

 「そうだな、肝心のマークはここに居るしほっとくか?」

 「そうだな、バカはほっとくか?」

 「なら帰るか我が家へ」

 「はーい」「あいよ」

 「てっしゅーう」




 時はマークが捕らえられた所まで巻き戻る。


 「マークが捕まったって本当か?」

 「ああ、帰りが遅いから監視してたんだが、マークが部屋から出た所で捕縛されたのを見た」

 「マジかぁ、どうなってるんだ?」

 「うん、調べないと解らんから、とりあえず寝静まるまではこのままで、先にマイクさん達と子供たちの保護かな」

 「ならオレが行って準備しておくから、ヒトシさんはマークを助け出してくれ」

 「ああ、マイクさんに詳しく説明するなよ、ただ危険だと説得して連れ出してアリアと合流するようにしよう」

 「分かった、上手く誘導するから回収よろしくな」

 「おう、こっちも準備始めるか、いやアリアと打ち合わせだな」

 「それじゃ、行きましょ」

 「おう」


 マークが捕まってから2時間程経ち、マイクさん達家族を説得し、子供たちを連れ出した所に兵士たちがやって来た。

 あと数分違えば、マイクさん達も捕まっていただろうと呟くアレクにマイクさんが問いただそうとした時、さっきまでくつろいでいた我が家に火が掛けられた。


 マークが帰宅せず、アレク達に危険だと言われても分からず、それでもヒトシさんも避難をしろと子供たちに指示をだした以上、危険だと思い家から家族を連れ出した所で起きた現実に、憤るよりもヒトシさんの警告にマークの身になにかがあったのかと思うと不安は拭えないのである。

 ただ無事で居てくれと祈ることしかできない。


 アリアと合流し避難場所についたが、そこで待って居たのがマークと仁である。


 「父さん、皆無事で良かった、捕まった時はどうなることかと………」

 「マイクさん、ご無事でしたか、ご家族も無事なようで何よりです」

 「ヒトシさんの警告のお陰で何とか無事でした、それよりマークになにかがあったと思っていたのですが、何があったのでしょう?」

 「それなんですが、どうも領主様になにかがあったらしく、マークが捕らえられたと報せが入り、調べたのですがそれが事実だと分かり、手をうってマークを助けだし、ここまで逃げてきたのです」

 「恐らく我々は無実であっても、こうして逃亡した罪は逃れられないかと、なのでしばらくは私が使っている根城に隠れて様子を見ようかと思っています」

 「幸いに食料や物質は十分あるので数カ月はもつと思います」

 「宜しければ、マイクさん達も様子見をおすすめしたいのですがどうですか?」

 「出来れば子供たちだけでも、助けたいので、ヒトシさんの言うように様子をみようと思います」

 「それには私も同意ですので、お互い頑張りましょう」


 こうして仁とマークやアレク達、マイクさんの一家と子供たちの逃亡者生活が始まるのだった。



体調が悪く、しばらくは投稿が遅れるかも知れません。


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