カシムの町で
アレク達は鉄を持って帰っては来たが、門前で騒いでる連中がいて足止めされてしまった。
「なんだこの行列は? なにかあったのか?」
「ああ、王都の冒険者達がな……」
「ん? どういう事だ、入れないのか?」
「分からん、だがなんかドワーフが居てな」
「ドワーフ? ちょっと見てくる」
門前に行くと、一人のドワーフが門衛と揉めていた。
「オレはダンジョンがどこか聞きたいだけと言ってる」
「何度も言っているが、ここでは教えることは出来ない、冒険者ギルドか職人ギルドにでも行けば良いだろう」
「ぐぬぬ……」
「なんだ、どうしたんだ?」
「ああアレクか、このドワーフがごねて困ってるんだ」
「なんだ? ギルドに知らせは?」
「知らせには行ったが、戻って来ないんだ」
「ん? 戻って来ないのか?」
「ああ……」
門衛は困っていた。
「オレがギルドに報告をしに行っていいか?」
「そうしてくれるか?」
アレクは仲間たちに断ってギルドに向かった。
冒険者達がギルド前に溢れていた。
「なんだこれ、ちょっと通してくれギルドに伝令があるんだ通して欲しい」
ギルド前に溢れていた冒険者達は文句は言ったが、通した。
「こりゃ酷いな……」
ギルド内も、冒険者達でいっぱいだ。
何とか受付までたどり着き、受付嬢に門前の報告をした。
「しかし酷いな、ギルマスは居ないのか?」
「いらっしゃいますが、面会中で今はちょっと……」
「そうか、伝言を頼んでいいか?」
「はい、それなら」
「鉄を採ってきた、それからおやっさんの所いくと伝えてくれるか」
「はい、ではお待ちを」
受付嬢は、面会中の札が掛かった部屋に入って行った。
「お待たせしました、入室して欲しいそうです」
「判った……」
アレクは受付嬢に案内され入室した。
「よお、どういう事だアレク、鉄採ってきたってのは」
ギルマスとおやっさんが居た。
「なるほど、おやっさんが居たのか」
「アレク、鉄採ってきたってことはダンジョンか?」
「……。 何処からでも良いじゃねぇか」
「まあお前らならいいが、マークもか?」
「如何する? 今日はやめた方がいいか?」
「そうか、ならゴードンとこに持ってけ、構わんだろ?」
「ああ、恩に着る助かる」
「しかしなアレク、もうちっとは上手く誤魔化せバレバレだぞ」
「すんません、あと門前で足止めされてるんで、そっちもお願いします」
「判った、すぐ対応する」
「ありがとうございます」
「俺も暇する、鉄の件頼んだ」
「ああ、任せろ」
「アレク、店に居るからな」
「判った」
アレクはおやっさんとギルド前で別れ、仲間達のもとへ急いだ。
「どうだった?」
「ああ、ギルドでギルマスとおやっさんが居てな、なんとかなった」
「よかった、けど何でおやっさんが?」
「鉄の件がどうたら言ってたから、交渉してたか依頼だろうな」
「お!動き出したぞ」
「やっとね、流石に疲れたわ」
「だな、おやっさんが待ってるし終わったら美味いものでも喰おうぜ」
「ああ、エールが飲みてぇな」
「全くだ」
しばらくして門を通過して去ろうとした所で、門衛に感謝された。
「おやっさん、居るかい?」
「おうアレクか、待ってたぞ」
「何処でだす? かなりあるんだが」
「ん? そんなにあるんか? ならこっちだ」
アレク達は作業場に通された。
「ここに頼む」
「判った」
アレク達は採ってきた鉄鉱石を全てだしたが……
「マジかぁ、どんだけ入るんだそれ?」
ナターシャ以外はかなりの量を詰め込んだのでかなりの量だった。
「全部で170㎏だな。 おいどうなってんだ?お前ら」
「実は……」
アレクは事情ははぐらかしながら、ヒトシとの面会をお願いした。
「まあお前らだし、マークの恩人なら俺もあってみてぇな、明日なら何時でも良いぞ」
「ありがとう、頼みます」
「良いって、どんな奴か見てやる」
ヒトシとの面会を約束した後、鉄の代金は一人当たりの金額が1万G超えた為、ギルド経由の支払いになりました。
翌朝、ダンジョンに訪れたマークはおやっさんとの面会の話が約束出来たと伝え、そのままマークと一緒に町へと向かったのだった。
「だいぶ大きな町になったんだな」
「あ、そうですね…… 来たことあるんでしたね」
「おう、182年振りらしいがな」
「どんな町だったんですか?」
「ん? 町じゃなく、数件のあばら家しかなかったな。 畑もなくて、開墾前の荒れ地だったんだ」
「そうでしたか……」
「お! すごいな、めっちゃ人が居るなぁ」
「はい、殆どが冒険者らしいです」
「ん? そうなのか? まあいいか」
「えっと、ヒトシさんは如何しましょうか、商人は…… た、旅人ですかね無難なのは」
「そうだな、無難が一番だな、それで行こう」
「では、僕が案内してきたといった感じでいきましょう」
「おう、よろしくな」
こうして仁は町へと入れたのだった。
「ヒトシさんここです」
「おう、じゃ入るか、よろしくな」
「はい」
マークが入店した後を、仁はついていく
「ゴードンさん、いらっしゃいますか?」
「おう、居るぞこっちだ」
ゴードンが奥の部屋から顔だした。
「そいつか、俺に会いたいって奴は」
「はい、ヒトシさんこの人がこの店の店長であり、カシムの町の鍛冶職人の一人でもあるゴードンさんです」
「おう、よろしくな、でそっちは?」
「はい、僕がお世話になってるヒトシさんです」
「はじめまして、田中仁といいます。 よろしくお願いします」
仁はお辞儀をし、握手を交わした。
「ふむ、なるほど要はマークやアレク達の装備面を改善したいということだな」
「そうです、ご協力願えないだろうか」
「良いぜ、だが今は無理だ、材料がねぇしダンジョンのことで忙しくて手が足りねぇんだ」
「そうですか、そうですね無理言ってすいません」
「いや、構わねぇよ今が無理なだけだしな、そういった話しは大歓迎だからな」
ガハハと笑うゴードンは確かに親父と呼ばれるだけの豪快なおやじだった。
「引き受けて貰えたということで、これを置いて行きますね」
テーブルに銅や鉄、錫や亜鉛など鉱石のサンプルと一冊の本を置いた。
「これはまだ出回ってない、インゴット作製に関する本です」
「な、何だと!」
「その本の内容をどうするかはお任せします」
「い、いいのか?」
「ええ、マークや子供たちの未来に役立つなら安いものなので」
「あ、ありがてえ、手が飽き次第取り掛かるぜ」
「あとこれもどうぞ」
子供たちでも装備可能な軽装鎧のサンプルや少し小さめに出来た改良型の剣と盾に槍のサンプル、現行武具の改良型製造の本など
「マジかぁ……」
「初期投資と思っているんで、どうぞ使って下さい」
「おう! やってやるぜ!」
やる気は十分に出たようだ。




