試験開始
で、あれから広い広い学校の奥へと進んでいき、校長室? のような場所までついていった。道中に学校を見て回ったが、どうも中は、迷路みたいになってて正直居心地はあまり良くない。
まぁ、内装は綺麗に仕上がっていると思う。正直、ホグワー○かと思った。
「さてと、学校はどうだった? 君がこれから入る学校だ。見ておいて損はないだろう? まぁ、試験に受かればだけど」
「で、その試験とやらはいつあるんですか?」
「今日だよーん」
は? 今日? この男今、今日って言ったか? まだこの世界の説明もろくにされてないよ?
「今日ですか?」
「うん、えっと今が8時だがら……2時間後だね。10時から編入試験開始! 準備はいいかい? イェーイ!!」
「よくねぇよバカヤロウ」
(よくねぇよバカヤロウ)
あ、また本音がそのまま出ちゃった。
「はっはっは、まぁわかるよ? 君の言いたい事も。でも、学校の試験くらいささっとクリアしてもらわないと君に期待できないからね。実力を示す機会とでも思ってくれ」
「はぁ、わかりましたよ。でも、試験ってなにするんですか?」
僕が尋ねると、嫌味な笑い方をしながら答えてきた。
「ま、やればわかるよ」ニッ
こいつが、この顔をする時はろくなことがない。本当に性格が合わなそう。
〜〜2時間後〜〜
「よし、筆記始め!」
試験官の合図と共に、皆がペンを握り紙と向き合い知識をぶつけ合う。
なるほど、確かに試験って感じだ。
だがしかし、僕は魔法の知識がない。勿論カンニングをしようと思えばいくらでもできる。
例えば、テレパシーで頭の思考を除いたり、透視で見たりと他にも能力を使えばいくらでもできる。
だが、これは僕の人生に泥を塗る行為だ。僕のプライドと尊厳が許さない。
問題も難しいとはいえ、ラノベで少しは知識がある。見ればちょっとはわかるかも。
『魔法』
・問題1 下級魔法〈火弾〉の詠唱を答えよ。
・問題2 初代勇者の名前を答えよ。
・問題3 中級魔法 〈魔城壁〉の詠唱を答えよ。
・問題4 初代剣聖の名前を答えよ。
・問題5 エルフと協定を結んだ年号を答えよ……
うん、一つもわからないな。勇者の名前なんて知ってるわけないじゃん? 来たのつい最近だよ?
くっ! どうする? カンニング? いや、それはダメだ! 考えろ。えっと…………
***
「そこまで! ペンを置いて一旦待機だ。休憩が終われば、実技闘技場に来い。そこでは、体術テストを行う」
そう言い、試験官は去っていった。そんな事より、どうしよう、テスト一問も書いてない。まぁ、次の体術テストで挽回すればいいか。
「おーい、雑魚共ォ! 注〜目ゥ!」
髪が黒、目は赤の少年が試験室の教卓の上にのり、なにやら偉そうに目立ってる。とりあえず今後、あれとは関わらないでおこう。
「俺はハザード・ドレイク。この学校で一番になる男だぁ。この学校に入学するかもしれねぇお前らに言っとく。こんなかで、俺より強い自信があるやつは、いつでもかかってこい。楽しみに待ってる。以上ぉ」ニッ
なるほど、宣戦布告か。こんな、安い長髪乗る奴なんてそうそういないーー
「上等だやってやる!」
「そうだ! テメェなんかコテンパンにしてやるよ!」
「そうよ! 偉そうにして後悔しても遅いわよ!」
引っかかりすぎだろ。教室内のほぼ全員の目がメラメラと燃えてるな。あーヤダヤダ。ん? そういや僕も、あのメガネに挑発されてここに来たんだっけ?
「あれぇ? お前は案外反応薄いなぁ? 俺に勝とうとかって思わないわけか? えっと、名前は……シンジ・アラカワ? 変な名前だなァ」
おい、僕に話しかけてくるな。と言いたいが、めんどくさいことになりそうだ適当に流すか。
「別に、君に勝とうなんて思わないし、君と関わりたいとも思わない。一位が欲しいなら勝手にやってくれ」
「へぇ……面白いなお前。他の有象無象共とは違いそうだ。他の試験、期待してるぜ」
そう言い、僕の肩にポンと手を乗せ、教室を出ていった。
シーン
教室は静かになった。
かと思われたが、2秒後にはあいつの悪口が飛び回っている。
「なんだ! あいつ! 誰が有象無象だ!」
「許せない! 見返してやる!」
「ぶちのめしてやる!」
ギャーギャーギャー!!
ここは地獄かな? いるだけでストレスだな。そう思いながら待っていると、教室内に放送が鳴り響いた。
『教室内に残っている受験生は闘技場に移動せよ』
さてと、第二ラウンド開始だ。
***
〜〜闘技場〜〜
「ここでは、体術テストを行う。内容は主に試験官と一対一の組手をしてもらう。名前を呼ばれたものから順に、始めてもらう。なお、このテストでの魔法の使用、その他魔道具などの使用は一切禁止だ」
何? ということは超能力も禁止か? 言われてないけど多分、怪しまれる。いや、100%怪しまれるな。じゃ消せよって話なんだろうが少し難しい。
常時、僕の超能力は5%の出力にしてる。
5%以上出せば、地球が僕に耐えれない。
そのため常に5%の出力を保っている。
だが、これが裏目に出てか、これ以上あげるのも下げるのも結構きつい。
とりあえずやってみよう。
ふっ!
<出力>0%
あ、出来た。
***
「20番 ライカ・ラング前に出ろ。」
「はい!」
お、女の子だ。まぁ、組手と言っても安全性は配慮してあるだろうし、多少の手加減はしてくれるだろう。
どれ、試験管の心をのぞいてみよう。
「では、始める。いつでも来い」
(手加減は一切せん、本気でいかせてもらおう)
訂正、手加減無し。
いや、だが相手は女性だ。手加減しないと言ってもそれなりの配慮はあるだろう。
「はぁぁ!!」
お、女性が動いた。動きはなかなかいい。鍛錬をしているのか実に筋のいい拳だ。
その拳を試験官はいとも簡単に流し、首に手刀を入れ気絶させる。
流石に場をくぐった者は動きが違う。
「よし次、23番ハザード・ドレイク。前に出ろ」
「はぁーい」ニヤ
こいつは、確か教室で目立ってたやつ。
「よし、ハザードいつでもいいぞ?」
「んじゃ、お手柔らかに……頼むゼェェ!!!!」
会話が終わった途端、試験官とハザードの間にあった間合いが即座になくなる。
ハザード……素のスペックでこれとはすごいな。
経験があるのか攻撃が実践的で、試験官の人も苦戦してる。
荒々しい攻撃に試験管が防戦一方だ。間違いなく試験官よりも上手だな。
「オラオラ! どうしたぁ? もっと楽しませろよ二軍騎士様よぉ!」
「くっ!」
「ちっ、この程度しか出せねェんならとっとと退場しろォ! 二流がァ!」
そう言い、ついに試験管に攻撃が当たった。恐らく、人間が繰り出せる威力を越えたであろう拳で殴られた試験管は、闘技場の観客席まで吹き飛ばされて行った。全く、試験管をKOとはとんでもないやつだ。
「あれ? 騎士様が居なくなっちまったが……てことは俺って合格ってことだよなァ? どうなんだ? もう一人の騎士さんよォ」ニヤ
ニヤリと笑いながら記録をつけている、女性の試験官に問い詰めているようだ。性格が歪んでるんだろうな。
「はい。23番合格です」
「おー、そうかそうか。じゃあ、俺は次の会場に行くぜェ。雑魚の、じゃれ合いなんざ見ててもつまんねぇしな」
そういうと、またテストが終わってすぐに出て行った。多分、自分以外を全員雑魚だと思ってる傲慢タイプだ。友達ができにくいタイプだろう。ブーメランだが。
「試験官交代します。では、「僕がやろうかー!!」
そう言い颯爽と現れたのは、この学校の一番上の存在。魔導師長こと、学院長だ。
「え? 学院長!? いけませんそんーー」
「皆まで言わずともわかってる……でもすまないね!やると決めた以上はやるよ僕は! て事で後始末大変だろうけどよろしくね!」
「ぐっ! はぁ、ったくこの人は……わかりました……給料上げてもらいますからね」
あー、なんだろう。あーいう大人にはなりたくないな。
「じゃ、残りのみんなは一気にきていいよ。本気で来ないと、危ないかもしれないから注意してね〜」
バカなのだろうか? 魔力なしの状態。つまり、数で攻めれば落とせる状態。流石に無謀だ。魔導師の中では強いんだろうが武術となればそれなりの技術があってもこの数を落とすのは難しいはず。
「魔導師長様だ……でも、魔力はなしのはずだ! いける……俺たちなら行けるぞ!」
「「「「「「おぉ!!!!」」」」」
えっと……これ全員行くの? え? 僕も?
「「「いくぞ!!!」」」
おお、大勢で囲んで戦う戦法か。悪くない。ひょっとしたらいけるかも……
◆◇◆
嘘のような光景を見ている……襲い来る生徒たちを圧倒し、蹂躙していく魔導師長を僕は眺めている。なんて事だ、武術でさえここまでの差とは。
まず、生徒たちの攻撃が一発も当たらない。近くに来た生徒を、軽くいなし投げたり転がしたりとめちゃくちゃだ。合気ってやつか?
「ほら! どんどん来てよ!」
うーん……この光景、地獄絵図に近い。数の利をものともせず、素手で蹂躙していくその様は、魔導師長と呼ばれるに相応しい強さなのかもしれない。
「さーて、残りは君だけだよ真司くん」
「はぁ、僕もやるんですか?」
「当然」
はぁ……仕方ない。胸を借りる感覚で行くとしよう。
「うぉぉぉぉ!」
ドンっと、僕の鼻の辺りに強い衝撃が加わった。
痛いと感じる間も無く僕の意識は途絶えた。と同時に痛感した。超能力外したら僕は、ただの一般人だということを。