泥試合は嫌いだ
「は?」
勝負? ここでか? 一体何を考えてるんだ。こんな所でやり合えば早々に誰かが来るなり止めるに決まってる。何より、僕はメリットのない事は極力やらん。そして、何よりめんどくさい! つまり、この答えはノーだ。
「まぁ、ここじゃバレるだろうしぃ。そうだなぁ。あそこに行くか」ニィ
ん? おい、なんか1人で盛り上がってるが、やるなんて言ってないぞ。
「おい、僕はやるなんて「<上級魔法>強制転送〜」
僕の言葉を言い切る前に、魔法の類を使われてたのか、僕はさっきいた場所でなく、別の平野に立っていた。
しかしなるほど、超能力に似た魔法もあるのか。これは勉強になるな。メモメモ。
シュッ!
遅れて、ハザードもやってきた。自分も瞬間移動できるのか。中々、便利だな。
「うっし、場所も確保したしやるとするかァ。なに、ここなら魔法結界の純度も高けェし、暴れても多少の事じゃ壊れねェよ」
いや、そんな事は聞いてないが……と、それより早く逃げなくては。こういう場面に陥った時、馬鹿に乗ってはいけない。元いた世界でも、喧嘩を売られた際は、相手に何かさせる間もなく姿を消していたしな。
僕のような平和主義者は、常に無駄な諍いを逃げ切れるかを考えるのさ。
「悪いね、ハザード。僕は、無駄な争いは本当の本当に嫌いなんだ。こんな、場所まで用意してくれたのは結構だが……受ける気は無い。じゃあね<瞬間移動>」
悪いな、そんなに戦いが好きならサンドバックでも買ってもらってくれ。とりあえず、僕は瞬間移動でこの場を離れ……てない!?
「ん? ああ、転移系の力を使おうとしたのか? なら無駄だぜぇ? この場所には、高度な結界を俺が張った。つまり俺の意思以外では出れねぇよ。まぁ、そんなに出たけりゃ俺を倒すんだなァ!」
こいつ、全くめんどくさい事を……しかし、こうなっては仕方がない。なら少し思い知らせてやろう。超能力者の恐ろしさを。
「安い挑発だが受けてやる。怪我しないように硬いバリアでも張っておけ」
「へっ! 面白くなって「<サイコキャノン>!」
何か言い終わる前に僕は攻撃をした。
え? 卑怯? バカ言っちゃいけないよ。先に喧嘩を売ったのはあっちだ。こちらもやり方なんて選ばない。サイコキャノンはサイコキネシスを応用しビーム状にしたものだが、出力は1%ほどに抑えてある。当たっても……まぁ、2、3日土手っ腹を抑える日々が続くだけ。死にはしない。
「いやぁ、おいおい。見かけによらず酷いことするなぁ。俺じゃなかったら、やれてたかもなぁ。ククク、惜しい惜しい」
……馬鹿な。並みの超能力者がいたとしても、今の攻撃ならワンパンだぞ。
「あ、そうだ。さっきの返すぜ。えっと、<サイコキャノン>だっけかぁ? まぁいいや。ドーーン!」
奴の叫びと同時に、僕が先ほど放った、サイコキャノンがそっくりそのまま帰ってきた。馬鹿な! どういう原理だ?
「くっ! バリア!」
ドーン! と、どでかい音が僕のバリアを中心に響き渡る。ま、バリアは無傷だが。……奴め。どんな能力だ?
「おぉ! 防いだ防いだ。やるなぁカンジくんよぉ。へへっ、どうしたぁ? 自分の技が跳ね返されて、わけわかんねぇってツラだな 」
僕の名前はシンジだ。腹立つな。まぁいい、能力は僕が見つけてやる。<テレパシー>
「まぁ、能力なんてそう簡単にはわからんがな」
(吸収&放出……見抜くのにまだ暫くはかかるだろ)
「なるほど、吸収と放出か」
「何?……やるじゃねぇか正解だ。心でも読んだのかァ? おもしれぇよマンジくん」
さっきからわざとだろこいつ。まぁ、いいさ。能力はだいたいわかった。そして解決法も。
「僕を間違った名前で呼ぶな。そして、ふざけてられるのも今のうちだ。もう、君の倒し方も分かった。君を倒すには、僕もある程度やる気を出さなきゃいけないみたいだ。<出力20%>」
「ははっ! やる気になったのは結構だが、俺を倒す方法があるとは聞き捨てならねぇな。いいぜ、全部無駄ってことを教えてやるよォ!」
言い切ると同時に、光にも等しいスピードで僕に接近してくる。接近した刹那、魔力を浴びてるであろう拳が僕に目掛けて繰り広げられる。
が、これを僕は紙一重でよける事に成功した。出力を上げてなければ今のでやられてるな。
「へぇ、光速にも対抗するとは……中々筋いいぜお前!」
「これならどうだ。<サイコレイガン>出力20%」
光を超能力で凝縮し放つ光線。出力は20%まで高めてある。地面に当たれば、星なんて簡単に消し飛んでしまう。
「無駄だ! 吸収して終わる!」
まさに、その通りだ。奴の体に当たった途端に極太のビームは消えて行く。
だが、これでいい。何故なら、これこそが作戦なんだからな。そもそも、吸収といってもできる量には限りがあるはずだ。打ち続ければ、そのうちパンクする。どれまで、耐えられるか我慢対決。
「まだまだ、あるぞ。もっと食え」
僕は、放ち続けた。やつも吸収で応戦。さぁ、我慢比べだ!
「……なんだよ、お前もかよ。この手のやつはバカで困る」ボソ
なんだ? 何か言ったのか?
***
まずいな。もう、10分も撃ち続けてる。そろそろ、体力の限……界だ。
シュ〜……
くっ! こっちががガス欠だ。体力の限界で、手を止めてしまった。だが、奴はどうだ? 食いすぎでもう、パンクしてるはずだが……
「あれ? もう光線技は撃たないのか? 残念。もう少し、欲しかったんだがな」
砂煙が晴れ、奴は姿を表したが、信じられない事に全くの無傷であった。その上に、いくらか余裕が見られる……馬鹿な……ありえない! あれだけ撃って……化け物か何かなのか?
「お前の間違いを教えてやろうか? 1つは、お前は俺の限界を決めてしまった事。2つ、心を読めるくせに最後まで人の心を読まなかった事だ。ま、わかるぜぇ? お前強いだろ? 故に油断する」
ちっ、こんな奴に説教じみたことをされるとは。たしかに、僕は見通しが甘かった……が、あまりにもこいつは……
「聞いてもいいかな? 君の力……本当にアレだけ?」
僕がそう聞くと、ハザードはニヤリ笑い僕の質問に答えた。
「いい所に目をつけた。そうだなぁ、俺以外の人間が、この魔法を使ってるならお前のパンク大作戦でも勝てたろうぜ」
ちっ、気づいたのか。
「知ってるかぁ? 人間が処理できる情報量ってのは、個人差はあるが一定で決まってるんだ。これを超えるとは絶対にねぇが、仮に無理やり詰め込まれても必然に忘れるし、勝手に消えて終わるだけだ。そこで俺なんだが、俺には一度に情報を処理する限界が……ない。つまり、無限に情報の処理演算を行える特異体質だ」
「それと、能力はどう繋がる?」
「まぁ、落ち着け、 話してやるから。そこで、俺の能力なんだが、吸収と放出。これは、吸収した時点でかなりの情報処理がいる。並のものなら一回吸収すれば次にインターバルを置かなければ脳が処理に追いつかず、能力の使用が行えない。俺はあいにく特異体質で、インターバルはいらない上、通常魔法を一回吸収すれば、知らなかった魔法でも情報が頭にくるため、使えるようになる。固有魔法も、オリジナルまでとは行かねぇがぁ、ある程度は使えるになるんだよなぁ。勿論、さっきみたいに吸収した攻撃をストックしてそのまま返したりも出来るぜ。強化してぶつけたりもな」
説明を聞いて僕はゾッとした。脳に留められる情報量が無限だって? それはつまり、どんな攻撃も吸収し、そのままカウンターで返す上に、奴に技を盗まれどんどん奴は強くなる。これ以上ないくらいの最強の組み合わせ。まずいぞ、想像よりも厄介だ。
「なるほど……それなら、今の僕じゃ敵わない」
「なんだぁ? なら負けを認めるかぁ? ま、それでもいいけどよ。だとすれば、俺の見込み違いだが」
ふっ、馬鹿が。舐めてくれるな。
「見込違い? 自惚れるなよ。僕はめんどくさがり屋だが、それ以上に負けず嫌いでもある。侮ったのは謝るが、こうなった以上勝ちを譲る気はないぞ」
「ほーう……いいねぇ! もう一度改めて聞いてやるよ名前は?」
「荒川真司……ただの超能力者だ。覚えなくていい」
「そうかぁ、今度は完璧に覚えたぜシンジ!」
さて、久しぶりに力を上げていくとしようか……
「しかし、お前が不利なのは変わんねぇぞ。強がってるのもいいがそのままで勝てる気じゃねぇよな?」
「お前は確かに強いが、無敵じゃない。結局のところそれも魔法だろう? なら、吸収と放出の時に魔力が減ってるはず。つまり、お前の魔力切れまで俺が付き合えばいい」
そうだ。結局は魔法だ。魔力を媒体として使ってる以上、それを使い続ければいずれ消える。
「なるほど。だが、ガス欠はお前の方が早いのはさっき証明されたが?」
「さっきまでの話ならね。出力許容上限解放40%<実像分身>」
分身で、僕は5000人ほどに増えた。これだけ数がいれば多少は時間稼ぎにもなる。
悪いが……勝つのは僕だ!
「いいねぇいいねぇ! 最っ高だねぇ! ここまでの高揚はひさしぶりだぁ! もっと魅せてみろぉ! シンジィ!」ゾクゾク
いいだろう。さじ加減間違えて死んでも責任は取らないぞ。
「「うぉぉぉ!!!」」




