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【2】空飛ぶ猫

3話目です

背後の頭上から声がした。上を見ると猫が飛んでいた。


「ええええええええええええええええええーーーーー!!!!!!!!」(湊)


「うわぁぁぁぁぁあああああああああああーーーーー!!!!!!!!」(薫)


「ふぉへぇぇぇぇぇぇえええええええええーーーーー!!!!!!!!」(白猫)


「うるさーーーーーーーーーーい!!!!」(看護師)


そう。白猫だ。あの時助けた時の白猫が胸ポケットのついた青いジャケットの様な服を着て突然現れた。


「湊!猫が!猫が飛んでるよ!服着てるよ!なんか喋ってるよ!」


寝起きドッキリみたいな感じになったが断じて違う。僕の叫び声がうるさいと怒られたがこの際どうでもいい。看護師には猫が見えていないようだった。


「よーし、薫、まずよだれを拭いて」


それを聞くとハンカチを貸す前にゴシゴシと袖で拭いてしまった。・・・JKとしてそれでいいんかでいいのかと言いたくなる。


「僕の頬をつねってみてくれないだだだだだだだだだ!」


言い終わる前につねられ、またおもわず大きな声が出てしまった。また看護師さんに怒られた。怒られている最中も薫はずっとお腹と口を押さえて声を抑えて笑っていた。


「もう、せめて言い切ってからやってよね」


「ごめんごめん。でも、湊面白かったよ」


「僕は全く面白く無い」


「まあまあそんなに怒らないで、じゃあ次はちゃんとやるからさ」


「あの、すみませ「そぉ、じゃあ次はちゃんとやってよ」


「あの、そろそろ」


『バチーン!』


「僕のこと忘れてま」


「いったーーー!なんでビンタするのさ!僕はつねって言ったんだよ!そもそも勉強中もいつもハリセンで意味もなく殴ってくるしさ、あれ結構痛」


「あの!そろそろいいですか!」


「「・・・・・・」」


「あなた達は寝ぼけているかどうかの確認をしていただけなのに本来の目的忘れて楽しまないでくれませんかね!?今僕すっごく仲間外れ感あって寂しかったんですけど!だいたい服を着た猫が人間の話を話して尚且つ宙を浮いてるんですけど!?こんなに無視されたのは生まれて初めてですよ!無視された側の気持ちわかります!?分かるでしょうよ!小学校思い出してくださいよ!」


「「・・・・・・」」


ゼェハァと肩で呼吸をしながら言い切った。突然大きな声を出され、ご立腹の様子で、反射的に姿勢を正して文句を黙って聞いている。


「・・・いつまで黙ってるんですか。早く話してくださいよ。なんとか言ってくださいよ。・・・ねえ!ごめんなさい!僕が悪かったですからなんとか言ってくださいよ!」


何も悪いことをしていないのに完全に白猫が悪い空気になっている。


「・・・ね、ねえ、湊。あの猫なんか勝手に話初めて泣きそうな顔で謝ってるんですけど、私はどう反応すれば正解だと思う?」


「薫、そういう痛い人、この場合は猫だけど、には関わらないほうがいいよ。触らぬ神に祟りなしって言うし完全に傍観者になりきるんだ。」


「おいお前ら二人ちょっと表出てください。軽くボコしていいですか?ヒソヒソ話してるつもりだろうけど全部聞こえてるから」


そろそろ寛大な猫にも限界がきたのか口元が引きつっている。湊と薫は顔を見合わせて少しの間見つめあって、同時に静かに頷いた。


「わ、わあ!ビックリだなー!猫が服を着て宙を飛んでいるー、初めてみたなーこんなの。ちょっと写真撮ってSNSにあげよーかなー」


「ほ、ほんとだねー。猫が服を着て飛んでいるー。って湊ー、SNSにあっぷしても友達少ないから意味ないでしょー」


「あー、それもそうだね。僕ったらあはははははー」


「しっかりしてよ湊ーうふふふふふー」


棒読みで演技する気など微塵も感じられない寸劇を演じた。白猫はもう諦めたように肩を落とし長い溜息をついて「なんでこんな人に入っちゃったんだろう僕」と文字通り猫の額に手を当てる。


「ちょっと待って白猫、今僕の体に入ってるって言った?」


「?はい。そうですけど・・・」


「・・・・・・出てけよ!何勝手に入ってんだよ!しかも意味わかんないし!」


「そうだよ!あ!そう言えば!あなた事故の時の白猫でしょ!お礼も言わずに消えるなんて礼儀知らずじゃ無いの!湊の中に入居希望ならまず私に許可をとってくれないと!」


「いやそれもおかしいよ。僕の体なんだから。・・・まあいいや。散々いじっておいてアレだけど、そろそろ始めてくれない?話。僕は納得してないから。」


「やっと話が通じたと思ったら上から目線すぎるでしょ。まあ僕も勝手に体を使わせて貰ってるわけだし、これからはこんなこと無しにしてくれると助かるよご主人様。」


「・・・その言葉はせめて女の子に言われたかった。まあいいや。努力するよ、・・・えっと名前なんだっけ?忘れちゃった。暗記力には自信があるんだけどな」


「安心して、湊。得意教科暗記系科目全部の私も忘れたから、影が薄い猫がいけないのよ。」


「いろいろ言いたいことがあるけど話が一向に進まないから無視します。えー、改めまして初めまして。異世界からの使者、の白猫です。名前は古くからのしきたりとしてご主人様にお決めいただいておりますにゃ。取りあえず名前を決めてくれると助かりますにゃ」


「・・・ねえ湊、痛いこと言ってる上に、なんか語尾についてる『にゃ』が可愛いすぎるんですけど」

「お、落ち着くんだ薫。さっきの暴言を思い出すんだ。アレが本性だ」


今度は猫に聞こえないぐらいの大きさで話す。白猫は首を傾げて「にゃ?」と言う。この時猫が可愛いと初めて思った二人だった。


「ご主人様?どうかしましたか?」


「い、いや、なんでもない。名前だったか?えっと、薫、なんかあるか?」


「待って湊、名前を決める前に目的を聴かないと!さっきまであんな暴言吐いてたのに急に『にゃ』とかあざとい鳴き方し始めたんだし、絶対裏あるよ!」


今までのふざけた態度が嘘のように真剣な表情をしていた。


「へぇ、薫さんは賢いんだね。心理戦で負けたことあまりなかったんだけどね。では僕もちゃんと話すことにします。」


発声練習をして、話す準備にはいる。


「ごほん!・・・我輩は猫であるにゃ。にゃ前はまだにゃい。僕のいる異世界には魔法が存在してて、この世界とは大分違うんですにゃ。普通の学校の代わりに魔法学校があって飛び級制度もあるので年齢に関係なく仕事に就くことができるのです。誰でもある程度の魔法を使うことはできますけど、その中でも体の中に猫を持っている人の魔法はとても強く、一国の軍事力に匹敵すると言われてます。」


「「・・・・・・」」


ここで一旦話が途切れる。猫はまだついていけていない二人を待っていた。何分経ったのか、時計の針の音だけが病室に響く。


「・・・・・・ねえ薫。僕の耳がおかしいのかな?」


「あれ?奇遇だね。わたしも今目と耳がおかしいの」


「おかしくなんかないにゃ。現実を受け入れなさい」


その後、自分たちは正常ということにしておいて、少し話をすることにした。


至らぬ点があれば是非に

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