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苺ジャムと僕  作者: おもひろいひと
3/4

山崎夫婦

山崎さん


それは


僕の


高校の時の

良き先輩だ


僕の


命の"恩人"でもある。


卒業は


一年先だった先輩は


就職しても

僕と連絡は


欠かさなかった


月一度は必ず

会ってるくらい


僕を・・可愛がって

くれている人なんだ


それは


今でも同じで


なんにも

変わらない


先輩は今だって


僕に


優しい人です。


僕は


山崎さんと

知り合えて


ほんとに感謝です。

有り難う、先輩・・



「脩平しゅうへい、ちょっとファスナー上げて?」


夏美が俺を呼んだ


『ん?おっ!俺の出番だな~任せとけっ』


脩平が笑顔で

近づいてきた


「も~そんなに張り切らないでよーただファスナー上げるだけだよっ」


夏美は呆れ顔・・


『だってよ、夏美の大切な体を守る洋服だしよ、大事な仕事だよ!俺嬉しいよ』


と、本気で言った

しかも笑顔だった


☆☆☆


「脩平は大袈裟だよ」

『そんなことないだろ』

「もう、勝手にしてっ」

『何で怒るんだよ━━』


夏美は黙って


ファスナーを

上げてもらうのを


待った


『よしっ!上がった!』


「ありがとう」

『夏美?』

「なあに」

『綺麗だよ』

「うん、あり──」

『大好きだ~チュ』

「もう、あっち!」

『は━━━━ぃ』


夏美は少し旦那に

マンネリ化していた


いつからだろう?


なんか、ダメだった


「私、今日は脩平のプランで出掛けたい」


『え!?夏美が行きたい所に一緒に行こうと思ってたのになーどうしてだよ?その方が嬉しいだろ?』


「もう!だからっていっつも!私が喜ぶなんて思わないでよ、知らない!ふん」


何か、かっかする。


『あ、御免よ?怒らせるつもり俺なかったんだよ?謝るよごめん!じゃあ俺の行きたい所にいこうか!じゃあ~琢磨んとこの店にいこう♪琢磨がんばってるだろうしなっ』


「ぇ?・・琢磨くんのお店に行くの?」


『うん、もうすぐ店も終わる頃だしな!一緒に飯食うかな~』


「うん、いいよ」


こうして


妻の夏美と

夫の脩平は


琢磨が働く店に

行くことになった


「ねぇ、琢磨くんってどんな感じの子なの?私、脩平からちゃんと聞いたことないからさ」


『そうだったか?んーそうだな~琢磨はすんごい!真面目で、モテるし、なのに本人は至って"マイぺース"というか、ゆっくり時間が流れてるような、いつも笑顔だし、何を言われてもな、スポンジのようにスッと受け止める、優しい子かな』


「他には?」


『そうだな?痛みを知ってる分、強いのかもな』


「そうなんだ」


『うん、琢磨は強い子だよ。弱さなんて見たことないかもな・・あの時を除けば・・・・・』


「あの時って?」


『高校の時な?琢磨、自殺しようとしてたんだよ』


「え"」


『俺、ずっと琢磨と仲良かったし、見てれば分かるっていうか・・・琢磨今日危険日だ!って直感したんだよな俺。で、琢磨と居て嫌がられても、帰らなかったんだ』


「ぇ!じゃあ?琢磨くんは助かったの?」


『助かったから、今でも元気なんだろ~』


「あ"そっか、そうだよね」


『琢磨は言ってたな、俺の、死にたかった気持ちを先輩が"俺まだ、生きててもいいんだなって気持ちに"変えてくれたんです!って。死のうって決めた日に俺が、ずっと邪魔したのにな』


「よかった、ホンとに」


『俺は今でも、琢磨を手放せないんだよな。笑っちゃうよなー琢磨がホンとに大好きなんだよな、あはは』


「そっか」

『ん?』

「ううん」


こんな会話をしながら

運転をしていたからか


あっという間に

琢磨の働くお店


に、着いたよ。


「先行ってるね」

『うん、いいよ』


ドキドキ・・・


「いらっしゃい」

『おすすめは?』


客が琢磨に訪ねた


「これかな!オレンジの果肉がゴロゴロ入ってて、すんごく!甘くて!僕も好きなんですこれ♪値段も安いし、つい手が出ちゃうんですよねっ」


『そうなのね、じゃあそれ一つと・・・あのポスターの苺ジャムくれる?あれ貴方よね?ほんと美味しそうね。あの笑顔もいいわ』


と、女性客が言った


「ありがとうございます。あのポスターは僕です、あの苺ジャムはお高いですよ?こちらになります、大丈夫ですか?」


『あら!ほんとね、お高いわーでも私、買いますわよ?だって、貴方に会いたくて遠くからこのお店に、来たんだから。気にしないわっ』


女性客は

笑顔だった


「はい、ではレジで」 


僕は


ジャム二瓶を

箱に入れて


手提げ袋に

それを入れ


手渡した


『ありがとう。ホンと!会えて嬉しかったわ。また買いに来てもいいかしら?』


「それはもう、嬉しいお言葉です!是非また来てくださいねっ♪有り難うございます」


と、頭を下げた


「あの~何かお探しですか?」


琢磨が


店の外から覗く

夏美に声を掛けた


「ぁぁ、いや、私は・・・」


「買わなくても、ぜんぜん大丈夫ですよ。店内も見てくださいね」


と、琢磨は

夏美に言った


「うん、じゃあそうします」


「なにかあれば聞いて下さい、答えますので」


琢磨が笑顔で

夏美に言った


「あの!このジャムはど、どんなっ味がするの?」


「それは、カシスの果肉とカシスのジュースが合わさってるので、すごく酸っぱいですね。甘党な人には苦手かもしれないですね」


「肌に良さそうね」


「良かったら?ご試食されますか」


「え?できるの」

「はい、じゃあ」

「いただきます」

「どうですかね」


「酸っぱいけど!美味しい~何でだろう」


「それはね、砂糖です!果肉とジュースと砂糖の"バランス"なんですよね」


「バランス?」


「はい。美味しさの秘密は砂糖との"バランス"だけなんですよ」


「そうなんだ」


夏美が


手に持ってた

ジャムを棚に


置こうとした

ときだった


「よっと・・・ぁ!」

「危ない!!!!!」

「きゃあ・・・・・」


夏美がバランスを崩し

倒れ掛けた時にはもう


琢磨が夏美を

抱き締めてた


「ぇ」

「大丈夫ですか?」


顔が近い


ガシャン、バリン


ジャムが落下して

割れてしまった。


「私、どうしよう」

「いいんですよ」

「でも、商品だし」

「怪我してなくて、良かったです」


琢磨が倒れ掛けた

夏美を背中から


★手を回し


抱き抱えている。


「あ、ごめんなさい!」


夏美が慌てて離れた


「あ、うん。ほんとに怪我しなくて良かった」


と、優しく言った


その時だった


『琢磨ー来たぞ~!!!ん?なにかあったのか?』


「山崎さん!どうしたんですか?こんな時間に」


『まあな、妻の夏美を連れてきたんだよ!紹介しようと思ってなー』


「初めまして、私が夏美です」


「え、この人が」

『可愛いだろ?』

「ちょっとやめてよ」

「はい!可愛いです」

「ぇ"」

『だろ~へへっ』


琢磨が


夏美を見た


夏美の顔が

赤くなった


「私、可愛くなんてないからね」


「山崎さんの奥さんと、会えるなんて、なんか嬉しいな俺」


『終わったらさ、三人で飯いこうぜっ』


「はい」


琢磨は


割れた瓶を片付けた


「ごめんなさい。代金は?払いますよ私」


「ほんとに気にしないで下さい。割れたものには値段は付けられませんよ」


琢磨がサラっと

笑顔でそういうと


「琢磨くんって、ジャム販売、向いてるねっ」


「え」


「優しいもん、すごく」


『夏美?』

「やだ、わたし何で?」


夏美が泣いている。


「はい、使って?」


琢磨がまた笑顔で

ティッシュを手渡す


『悪いな琢磨』

「ありがとう」

「・・いいえ」


夏美はね、

嬉しかった


やさしくされて


違う、琢磨にそう

言ってもらえたから


『夏美?大丈夫か』

「うん。平気っよ」


「山崎さん?新しいジャム入りましたよ、よかったら奥さんにどうですか」


『おお、じゃあ貰うよ』

「ありがとうございます」


暫くして

店を閉めて


三人は


車にいき

レストランに


着いた


「山崎さん!今日は苺ジャム100瓶売り上げましたよ。嬉しくて今日はなんかお腹空きました(笑)なに食べようかなー」


琢磨が嬉しそうだ


『今まで最高で、苺ジャムは何瓶だったんだ?』


「えっと・・・確か?80瓶が最後ですかね、もうちょっとあるかもですが」


『80か・・・それもまた凄いじゃないか!だってあの店は琢磨一人だもんな?種類も豊富だしな~やるな!琢磨は、あはは』


「はい、店舗が小さいので店員が一人で十分回るんですよね。種類は数千とありますけど、小さい瓶なんで、お客さんは買いやすいですかね?値段は高いのもありますけど。そうですかね?ありがとうございます、先輩!嬉しいな、先輩にそう言って貰えて俺っ」


琢磨が山崎を見る

キラキラした目で


『ばか、そんなクリクリな目で俺を見るな・・・何でもしてやりたくなるだろっ』


照れながら

頭を掻いた


「あの、もしもし・・・私が居るのを、お二人はお忘れじゃないかしら?」


と、夏美が

割り込んだ


「ぁ、す、すみません!ついつい山崎さんと居るとこうなってしまうんです、俺いつも」


申し訳なさそうに

顔が真っ赤かだった


『まなあ、夏美にこんな所見られるなんてな、初めてだったよなーこれが琢磨と俺なんだよっ悪く思うな夏美!あはは』


豪快に笑った


「ふぅん、いいですね!仲良しでさっ私が家で独りぼっちのとき、こんな楽しく遊んでたんだね、お二人はさ」


夏美がプクっと

頬を膨らました


『何だよ、妬いてるのか?』


「妬いてません」

『妬いてるだろ』

「妬いてないよ」


「ああ、あの!俺男だし・・・妬かれる理由ないような、でも、夏美さんごめんなさい、俺気を付けなきゃな」


「琢磨くんは謝る必要ないよ、ごめんね」


『夏美今日はなんか怒りぽくてな。琢磨気にするなっさ!好きなの食べろな?俺の奢りだっ』


「私もいっぱい!食べようかなーいいよね?ふん」


『食え食え♪皆で箸つつくぞぉー』


「ぇ」


夏美が反応した


『ん?嫌か』

「ううん」


「ほら先輩!俺とは初めてだから、箸なんてつつけないですよー」


『そうなのか夏美?』

「つつけるよっ私は」

「ムリしなくても」

「ムリじゃないしっ」



『じゃあ、夏美はつつかなくていいぞっ?』


「はい、俺もそれで」


「もう!二人してさっ何なのよー私は琢磨くんがずっとずっと前から大好きで!大好きで!箸つつくのなんて平気よっあ"私いまなんて?違う、違うからねっ」


「え」


『夏美?琢磨を知ってるのか?知らなかったな・・・大好きってなんだよ』


「あ!先輩!俺これ食べたい!よしっ決まり!注文注文、ピンポーン・・・」


押しボタンで

店員を呼んだ


★お待たせしました

ご注文でしょうか?


「えっと、野菜ソースのハンバーグセットにライス大盛りと、ドリンクバーを三つに玉子サラダを一つに野菜たっぷり肉鍋を一つ下さい」


店員が下がる


『夏美?俺は別に怒らないぞ?いつ知ったんだ?』


「山崎さん、その話は言葉のあやですって。もう止めましょうよ」


「私ね、スマホでツイート見てたのね、そしたら・・・琢磨くんが話題に上がってて、なんとなくで読んでいったのね?そしたら熱狂的ファンの人がいて、ブログを書いてるからって、来てねっ!って誰宛てじゃなかったし書いてたから、覗きにいったの・・・・・スゴくてそれが!?あるポスターが貼ってあってね?私それから"ファンに"なってたの。ごめんなさい」


「ぇ、ポスターってお店のあれですか?」


『あれかー』

「うん・・」


「私、寂しかったのかも。でも、琢磨くんがまさか!脩平の可愛がってる琢磨くんって知らなくて・・・もう、長いよファン歴は?そしたらね、脩平からジャム店で働いてる琢磨くんの話がでてまさか!?と思ったの・・だから、一か八かで買いに行ってもらったの。そしたら、その琢磨くんから電話が来たから。その時は大丈夫だったのに、それから飲みに四人で行った日あったでしょ?女の子とさ?あの日まさかまた!電話が掛かって来るなんて思わなくて、、つい私・・・あの時の苺ジャム!すごく癒されたのっ美味しかったの!お礼が言いたくて!私ね、琢磨くんのファンだから!じゃあ、楽しんでねって、私ファンを"強調して"叫んでたの。パニック状態だったから」


と、夏美は告白した


『そっか。じゃあ夏美はライバルだなーあははははははっ』


「山崎さん・・・」


なんか、分からない

胸騒ぎがしたんだよ


「脩平私ね!脩平と離婚したいっっ」


「ぇ」


ぇええ━━━━━っ"


★お待たせしました。


店員が来た


全てを運び

下がった


「ちょ、冗談は止めてくださいよーもう、夏美さん」


『俺は、夏美と別れないからなっ俺は夏美を愛してるんだ。ばかやろうっ冗談は顔だけにしろよな、あはは』


「本気だよ!」

『止めろよっ』

「止めない!」

『琢磨がいるんだ』

「居たっていい!」

『バンっ止めろっ』


店内に


大きな音が

響いていたが


直ぐに


ザワザワと


客の声に

のまれていった


『琢磨、俺はな?琢磨を大好きだし、琢磨なら、妻の夏美を奪われたっていいって思ってた。でも、それは間違いだ!俺は・・・・・』


いつもと違った

先輩が肩を揺らし


なにかを言いたげに

それを飲み込んでいた


「先輩俺は!先輩から何も奪ったりなんてしません。夏美さんの気持ちは気持ちとして受け止めます。でも、間違っても先輩が悲しむことにはなりません」


『琢磨!ばか言うなよ。俺がさせない・・・』


「私は琢磨くんが好き!」


「夏美さん、いい加減にしてください。俺の大好きな先輩を泣かすことは、俺は許さない!相手が夏美さんだって・・・」


俺は


夏美さんを

睨んでいた


"生まれて

初めてだ"


誰かを


こんなにも


"睨み"


自分が自分じゃ

なくなる感覚が


信じられなかった


この日はもう


楽しめる

はずがなかった


三人は何も箸を運ばず

店をでてしまったんだ


★ありがとうございました。


耳に入ってきた声が

むなしく感じたのは


三人一緒だった



僕と


山崎さんは

この日を境に


連絡を


取らなくなった



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