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魔法なんて存在しない

作者: ヘタマロ

魔法ってイメージ大事ですよね?

俺は異世界とやらに迷い込んだらしい。

なんか、この世界の神様を名乗る胡散臭いじじいに、神様連合会議に参加して地球の神と意気投合して日本に寄ったあと、ここに戻る時にうっかり連れてきちゃったからこの世界で頑張れ的な感じで放り出された。

夢だろう。


「まさか、あんな腐ったような神社に人が来るとか思わんかったんだもん!だからしょうがないよね?」


だとさ。

確かに、管理者の居なくなった神社を巡るのが趣味で、そういえば最後に寄った神社でなんか光に包まれた気がしたけど…そこから夢か…

ついでに、神の使徒レベルの腕力と、物理耐性用意しとくから暇だったら魔王倒しといてとも言われた。

雑過ぎんだろ!


えらくリアルだが…

まあ、夢なら夢で楽しむか…

俺はそう思い、放り込まれた草原を町に向かって歩く。

何故か視界の上の方に地図が見えている…どうやらゲームの世界みたいだな。


「おやぁ?こんな所に人間が居るじゃないか」


早速魔物とエンカウントしたようだ…

どうせここは夢の世界だ、死んだところでどうという事は無い。

俺はツカツカと近づくと思いっきり殴り飛ばした。

神様とかいう奴が、取りあえず力だけは強くしてやろうと言っていたが嘘じゃないようだ…


「ぐはっ!馬鹿な…たかが人間風情が私を殴り飛ばすですって?」


良く見るとなかなかにベッピンな魔族さんだ。

どうせ夢だしエロい事でもしてやろうか?

そんな事を思っているとおもむろにイタい事を言い出す。


「でも人間如きが私の魔法に耐えられるかしらね?喰らえ!全てを燃やし溶かしてしまえ!【メルト】!」


何を言っているんだ?こいつは?

こっちに向かって手を突き出しているが、何かが出る様子は見えない…

俺には何も見えないのだが…


「ちょっくげーき!」


どうやら俺に当たったらしい…

何が?


「おらっ!」


今度は腹を思いっきり殴る。


「イタイ!なんで?なんで魔法が通用しないの?」

「魔法ってなに?何かした?」


俺の言葉に、魔族の女性が驚きを隠せないでいる。


「くっ!全てを切り刻め【ウィンドカッター】!」


魔族の女性がまた手をこちらに突き出す。

良く見ると、俺からちょっと離れた当たりの草が切れているが、なんだろう?

俺には何も見えない…


「えいっ!」

「ちょっ!何するのよ!汚らわしい人間風情が!」


今度は思いっきり抱きしめてみた。

柔らかい…夢なのにちゃんと体温が伝わってくる。

すげー!

俺はいま、モーレツに感動している。

腕の中で必死に魔族の女性が暴れているが、所詮は女の子だなー。

それとも本当は逃げる気が無いのかな?

そんな事を思っている、突如目の前に漆黒のローブを纏った男が現れる。


「俺の娘に何をしている?」

「あっ!パパ!」


慌てて俺の腕を振りほどいて、魔族っ娘が男の方に駆け寄る。

なんだよ、やっぱり簡単に振りほどけたんじゃん。


「おいっ!人間!お前死んだぞ!うちのパパは魔王なんだぞ!」


いきなりラスボス出て来たわ…

なんだよこのクソゲー!

それとも、これは負けフラグってやつか?


「パパ―!こいつがいきなり私に抱き着いてきたの!もうお嫁にいけない!」

「なんだと!人間風情が!可哀想なマリアンヌ…私がすぐに滅してやろう」


確かにいきなり抱き着いたけどさ…すぐに振りほどけたよね?

そんな事を思っていると、お父さんもイタイ事を言い始める。


「フッフッフ、人間如きに勿体ないがわしの全力の魔法で塵も残さず消してやろう…地獄の炎よ、我が魔力を喰らい顕現せよ!目に映る全てを燃やし尽くせ!【ヘルフレア】!」

「わー!パパすごーい!黒龍を従えた時に使った魔法だねー!」


一瞬で俺の周りから一定距離を開けた広範囲が焦土と化した。

凄い手の込んだ事するよなー…火薬を使って形跡も無いし。

俺には何も見えなければ、ただ単におっさんが手を前に突き出してドヤ顔しているだけにしか見えない。

これは手品か何かでしょうか?

実は地面に対してプロジェクション的なもので、映像を映し出してるとか?

でもやけに生々しかったし、舞台装置とかあるのかな?


「そろそろ、煙が晴れるな…完全に消し去ったかのう?」

「パパ…あれ…」


俺を指さして魔族っ娘が口を手で覆う。

魔王も目を大きく見開いて、驚いている。


「馬鹿な!」

「無傷だなんて…」

「オラッ!」


思いっきり、親子共々拳骨を叩き落とす。


「意味不明な事言って無いで、真面目にやれよ!」

「イッターイ!真面目にって…」

「アウチッ!いや、今のは国を一つ滅ぼすレベルの魔法なのじゃが」


アウチッ!ってなんだよおっさん!

調子こいてっと、一瞬でいてまうぞコラッ!

そして、その娘僕に下さい。

それと2人が言ってる事が良く分からない。

取りあえず、もう一発殴っとく。


「あうっ…」

「痛いのじゃ」

「痛いのじゃって可愛いなお父さん!取りあえず、魔法とやらをとっとと見せてみろや!」


俺が怒鳴りつけると、二人がビクッとなる。


「くう、こうなればわしの全魔力を込めた一撃を」

「うわあ、凄い魔力!大地が震えているわ」


いや、全然震えてませんが?

魔力ってなに?全く見えないんですが?


「いいから、とっととやれ!」

「すべてを消し去れ、【アブソリュートインフィニティフレア】」


うわあ…恥ずかしいよー…聞いててこっちが恥ずかしいよ…


絶対無限太陽爆発とか

「ププッ!」


マジ地球滅びるから

「フホッ!」


やめて

「ブフッ!」


「パパ!効いてる効いてる!」

「ふっふっふ、漏れ出る悲鳴まで醜いのう…」


腹イテー

「ブハハッハハハハハハ!」


「なっ!笑っているだと?」

「うそー!全然効いてないの?」

「笑わせんな!ボケっ!」


ガンッ

ガンッ


「イタイ…もうやだ…」

「むう、魔法が効かぬとはどういう事なのじゃ?」

「だから魔法ってなんだよ!見えるようにやってみろよ!」


俺の言葉に二人がキョトンとする。


「おぬし、もしかして魔法が見えぬのか?」

「ああ、見えないね!」

「これは」

「人差し指!」

「…」

「…」

「…」


おっさんが人差し指を立てて聞いてくるから、答えただけなのに辺りを沈黙が包み込む。


「オラッ!」


ボキッ!


いつまでも指立てて鬱陶しいから思いっきり掴んで逆に曲げたった。

思いっきり指押さえて蹲ってやんの…ザマー!


「いってー!指折れた!いってー!マジ信じられん!なんじゃこの野蛮な奴は!」

「パパ大丈夫?ってなにこれ、曲がっちゃいけない方向に曲がってる!」

「でさ?魔法見せてくれるんじゃなかったのか?」


俺が思いっきり二人を睨み付けると、2人がアワアワと後ずさる。


「見せたじゃないか!人差し指に魔法で炎を作り出して纏わせておったのを、お主がいきなり掴んで折ったんじゃろーが!」

「それが見えねーっつってんだよ!魔王ごっこだったら、他でやれよったく紛らわしい!」


俺がそう言って思いっきり二人を蹴り飛ばすと、二人が慌てて離れていく。


「おぬし魔法とはそもそも何か知っておるか?」

「知らねーよ!んなもん存在しねーっつーの!」


俺の答えに二人が可哀想な物を見るような眼を向けてくる。

イラっとしたから、とりあえず殴っておいた。


「そのすぐに殴るのやめよーよ」

「そうじゃぞ、わしらには言葉があるではないか!」

「問答無用で襲ってきた娘と、話も聞かずに襲い掛かって来たその親父が何言ってやがる」


とりあえず、もう一発ずつ殴り飛ばす。


「で魔法ってのは魔力を練って、イメージした形に作り出して打ち出すのじゃ」

「ふーん…」

ホジホジ


「おい!真面目に聞く気あるのか?」

「じゃあ、お前は死ぬ!…………ほらっ、なんも起きねーじゃん!」

「はっ?」

「いや、お前が餅喉詰まらせて死ぬとこイメージしたけど、なんも起きねーじゃん!」

「魔力を使わんと魔法は使えんぞ!というか、いきなり物騒な物を試すな!」

「パパ、もう良いよ…帰ろうよ…」


魔族っ娘が、面倒くさくなったのか親父の服を引っ張る。


「こいつ、絶対変だって…」

「うーむ、じゃが、わしはなんとしてもこいつを魔法で殺したいのじゃ!」

「ふーん…」

ペトッ!


「って、鼻くそつけんなクソがきがー!」


思いっきりおっさんに殴られるけど、思った程痛くねーわ…やっぱ夢だなこりゃ。


「何すんだよ!オラッ!」


バキッ


「なんて理不尽な奴じゃ…魔法は効かぬは、鼻くそは付けるは、すぐ殴るは、魔法は効かぬし…」

「何故魔法は効かぬって二回行ったし!」


「おーい!大丈夫か?」


その時遠くから、兵士が走って来る。


「はあ、はあ、この当たりで膨大な魔力と揺れを感知したが、何が…ってあばばばば魔王!」

「うせろ下郎が!」

「ギャー!」


おっさんが手を翳すと、兵士がもんどりうつ。

んっ?なんで?


「熱い!熱い―!」

「ねえねえ、こいつ何言ってんの?なんともなってないじゃん?」


俺がそう言って兵士に触ると、兵士が正気を取り戻す。


「あれっ?怪我が…もしかして高名な治療師の方ですか?」

「おまえもか!」


バキッ!

思いっきり兵士をぶっ飛ばす。


「何をされるんですか!」

「いや、お前もこのおっさんとグルになって俺を騙そうとしているんだろ?」

「おいおい!そこの人間、お主も説明してやってくれ!こいつは魔法が無いと言い張って聞かんのじゃ!」

「えっ?いま、俺めっちゃ燃やされたんですけど」

「嘘つけ!」

「めっちゃ、燃えてたよねー?」

「ねー!」

「俺の魔族っ娘と仲良くすんなボケー!」

トカッ!


兵士が思いっきり吹っ飛ばされる。

あー、分かった…俺の夢の中だけどこいつらきっと酷いビョーキの人達なんだな…


「誰が貴方のよ!」

「誰が、お主のじゃ!」


2人が同時に突っ込んでくる。

だが、思った…これ以上こいつらとは関わらない方が良いと…


「もういいや…お前ら勝手にやってろ!」

「待て!魔法は存在するのじゃ!」

「そうだぞ少年!魔法ってのは凄いんだぞ!」

「もういいってば!パパも兵士さんも行こーよ!」

「何打ち解けてんだよオラッ!」


バキッ!

バキッ!

バキッ!


思いっきり3人を殴り飛ばす。


「もう怒ったのじゃ!こうなったら、奥の手じゃ!実はわしは変身できるのじゃ!そしたら、魔力も魔法も大幅パワーアップじゃ!ウォォォォ!」


おおー、本当に変身しやがった!

流石魔王、強そうだ!


「わしの実力を思い知るが良い!【エターナルエンドレスフレア】」

「ブフォッ!」

「効いたか?」

「効くかボケッ!」


バキッ!

おー、でっかくなったのに吹っ飛んでったわ。

夢の中の神様良い仕事してんじゃん!

てか、エターナルとエンドレスってほぼ意味被ってんじゃん!

しかも終わらないんだったら、ここずっと爆発し続ける事になるぜ?

もう、世紀末状態ヒャッハーじゃねーか!


「つーか、お前らフレアって100万度とも200万度とも言われてんだぜ?

目の前でそんな魔法放ったらお前らも溶けるだろ!」

「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」


次の瞬間3人が冷や汗を流し始めたかと思ったら一瞬で蒸発した…


「えっ?」


その時目の前に光が現れる。


「なんじゃ、もう魔王を倒してしまったのか?」

「えっ?」


どうやら、人間の町にちょっかいを出しまくる娘を追って、しょっちゅう魔王はお忍びで人の町の近くまで来ていたらしいが、どうもそこにかちあったらしい…ふーん。


「あれ本物だったんだ」

「そうじゃ!もう、魔王倒して平和じゃしその力があれば面白おかしく生きていけるじゃろ」

「うん、まあ…っていうか、あいつら魔法魔法つって変なポーズとってばっかで、全然なんもしてこなかったぜ」

「ん?ん、そういう事もあるかのう…まあ、魔法はイメージが大事じゃからのう…お主は全く魔法を信じておらぬのじゃろ?」

「当たり前じゃん、そんな非科学的な…」

「こんなとこに来てる時点で、非科学的とは思わんか?」

「えっ?だって夢じゃん?」

「フォッフォッ、そうか…そう思っておるのか…まあ、数日過ごして現実を知るが良い」


そう言って神様っぽい奴が消える。

おいっ!ちょっと待て!意味深な事残して消えんな!

まあ、目が覚めたら自分の部屋のベッド上だろう…


3日後…


マジか…俺、この世界で生きてかないといけないのか…

取りあえず、仕事探そう。

結局、魔王を俺が倒したのは神様しかしらない訳だし、誰かに話しても信じて貰える訳も無く、堅実に生きてくことにした。

この力を利用して、傭兵や冒険者がいいな…


後に、マジシャンキラーとして世界に名を馳せ、生涯一度も魔法を喰らわなかった男の話である。

勿論、魔王亡き後、物語にしてもしょうがないのでこの話はここで終わり。







もし、まったく魔法を信じてない人に魔法を使ったらどうなるのか…

使う人のイメージと魔力で魔法は起きるという設定が一般的ですが、その魔力の存在も、イメージも全てを否定したら、魔法が存在しなというイメージが強すぎて魔法って効かなくなるんじゃないかなって…

魔力が触れた瞬間に、魔法は存在しないというイメージが上書きされたら無敵かなと思って思い付きで書きました。

グダグダ、ヤマ無しですが、悔いは無い。

最後までに一回でもフフッってなったら私の勝ちですm(__)m

そして、後書きまで読んで頂き有難うございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 所謂思考実験的なもんですが、チートにその魔力を使いこなす事が出来る何かが含まれて無いと、転移が現実だと実感した時点で“非科学的な事は存在しない”という絶対的な無意識の壁が崩れてしまい、…
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