復讐はしてはいけないことらしい。
復讐は悲劇しか生まない。
復讐は憎しみしか生まない。
復讐しても不幸になるだけだ。
復讐なんて意味がない。
だから復讐などするべきではない。
仕返しや報復という名目で人を傷つけて逮捕されたというニュースを見るたびに評論家が得意気にそう言っている。
世間的にも復讐はやってはいけないことだという風潮だ。
それも一つの答えだろう。
けれども毎日生活している中で腹の立つことや仕返ししてやりたいと思うことはあるはずだ。俺もあるけど時間も労力も結果に見合わないし我慢できる範疇だったから今まではやらなかった。
だけど――
『ごめんなさいお父さん、お母さん、お兄ちゃん、紫。今まで我慢してたけどもう限界です、耐えきれません。先立つ不孝をお許しください』
『――――色んなことをされたけど何より許せないのは全ての元凶であり、私のことを×××した式道歩。出来ることならあの人には私が味わった以上の苦痛を与えてやりたかった。絶対に許さない! けどもう無理です。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい』
遺品を整理している最中偶然見つけた妹の日記帳。ずっと書き続けたであろうそれはある時期を境に変化があった。
家族への謝罪とクラスメイトたちから受けた仕打ちと怨嗟の言葉。
所々涙で滲んでいるのと何度も書き直した跡。
「は、なんだよこれ? まさかいじめ……?」
学校側から聞いた話と全然違っていた。
学校側は老朽化したフェンスにもたれかかったせいで誤って転落した説明していた。いじめがあったなどと一言も言っていなかった。。
じゃあ学校側と朝霞の話のどちらを信じるとなると、決まっている。朝霞のほうだ。
「つまりアレか? これって学校ぐるみで隠蔽してるってことか?」
名門といわれている翡翠館がこんなことをするなんて。いや、むしろ名門だからなのかもしれない。
へぇー……
「まっ、翡翠館のスキャンダルはひとまず置いといて……」
最大の目標は朝霞が復讐したいと望みを抱いた相手。唯一名前を書いた相手。
式道歩。
復讐なんてしてはいけないと誰かが言ってた。
それも一つの答えなんだろう。別に否定するつもりはない。だけど当事者になったときにまだ同じことが言えるのか。そんな綺麗事を言い続けていられるか。
仕方ないと納得できるか?
感情を制御できるか?
俺は殴られたら殴り返したいし、奪われたら奪い返したい。
身内を死に追いやられたら、もちろん――