武器のネタ①
今回は武器のネタです。ここでいう武器とは主人公が活躍する際、活用されるアイテムのことです。
なろうで何故『武器?』と思われる方もいるでしょう。なろうでは特別な能力チートや知識の内政チートなど主人公本人に付随する力で活躍する物語が主流です。結果、主人公にとって武器の価値が低くなりがち。
これは当然のことです。なぜならば能力チートや内政チートにとってはその特別な力と知識が武器なのですから。
例えば能力チートでどう考えても倒せない敵を破るのが売りなのに、超強力な武器がポンっと出たらどうでしょうか? チートが売りなのに(更にいうならチートの活用法ですね)、何をしてるんだということになります。
ですが能力チートには大きな欠点があります…………能力使わないと地味なんですよ。
具体的に能力チートが身体強化とか魔法だと、使わないシーンでは個性が見せ難いです。まあ、普段は無個性で使うときのギャップ狙いというのもありですが(これもまた王道)。
しかし武器とチートが関係していたら話は別です。身体強化のチートなら己の身長よりデカイ武器を背負っている。魔法のチートなら何本も杖(予備ですね)を隠し持っているなど。やり過ぎなぐらいがいいと個人的に思ってます。そして何よりチートを活かす武器を奪われた時の絶望感といったら…………おっと失礼しました。主人公を苦しめるのが大好きなもので。
というわけで武器の価値を捏造したところでネタいきましょう。
・名前(エクスカリバー、ロンギヌス、シャーリーン)
・種類(長剣、槍、銃)
・形状(鋭い切っ先、捻じ曲がった、細くて長い)
・大きさ(腕の長さほどの、身の丈の二倍、抱え込める)
・色(輝く鋼色、血を塗ったような赤、艶消しの黒)
・雰囲気(神々しい、呪われた、冷たく無慈悲な)
・材質(オリハルコン、ミスリル、強化プラスチック)
・性能(ビームが出る、成層圏を貫く、軍曹を撃てる)
ずらずらと並べましたがネタになりそうなのは……まずは名前ですね。他の要素はまたいつか。
古今東西の武器の名前を解析し”自作”を創るネタにします。己の命名センスの餌にするため。
『こんな名前の武器がある』ではなく『この武器はどうしてそんな名前がついたのか』を意識してます。取り上げる例は、実在に物語にゲームにとそこら中から引っ張ってますのでご注意を。
◎人名系
○製作者の名前:製作者――刀工と呼ばせていただこうか。刀工の名前がそのまま刀の名前になったパターンです。有名なのは刀工村正の作”村正”でしょう。村名=製作者名=作品名という気合の入れよう。
同じく日本の刀ですが”大典太”は、刀工『大典光世』作です。
このパターンだといろいろ面白いことができます。同じ製作者ならば、剣を打とうが槍を作ろうが銃だろうが……全部、同じ名前なのです。製作者の名前がヨサクなら、剣も槍も銃も名前が”ヨサク”になるのです。
ちなみに日本や中東では刀工の名がそのまま武器の銘になることが多いらしい。
○使用者の名前:デンマーク人の事情に登場する”ベズワルの剣”。主人公のベズワルが使う魔剣です。血を見るまで鞘に戻らない、鞘から抜くと鳴く、三度以上使うと破滅するなど物騒な呪いが何重にもかかった剣なのだが、それらの効果をガン無視して『使用者の名前』が名前になってる。
有名なロンギヌスの槍のロンギヌスも救世主を処刑したローマ兵の名前である。
骸骨の夢に出てくる”大鉈”は、逆に武器の種類から使用者が『大鉈』と呼称されている。
○元所有者の名前:ドイツのエッケの歌に語られる名剣”エッケザックス”は、エッケという巨人騎士が持っていた剣だ。しかしこの巨人はドイツの英雄に敗死して剣を奪われてしまう。元所有者の『エッケ』+ドイツ語でザクスは『剣』ということで”エッケザックス”。
日本でもヤマタノオロチの亡骸から出てきた”クサナギノ剣”はクサ=奇でありナギ=蛇、つまり『奇蛇の剣=ヤマタノオロチの剣』の意味だという説がある(他にもいろいろな説がある)。この場合も奪った相手の名前が銘になった形だ。
○大切な人の名:とある映画に登場する銃は『シャーリーン』と愛称をつけられました。使用者はその銃を恋人のように愛し一流の狙撃能力を発揮します。流石に武器を恋人にするのはいきすぎな気もしますが……いや、結構あるか。
亡くなった恋人の名をつけるパターンもありですね。『永久のマリア』とかいかがでしょうか? 『忘れざるアリス』『不離永劫のジュリエット』など……剣の柄に遺骨や遺髪を仕込んだりするのもよいかもしれませんね。
物語序盤で主人公を助けるために命を落とした犠牲者(異性)、なろう主人公に異世界の洗礼を浴びせかけ、その名を武器につける。序盤の悲劇を忘れさせないためのギミックに使う手も……
◎そのまんま系
○外見:ケルト神話の光輝く神剣”クラウソラス”、アイルランド語で『光の剣』と外見そのままの銘です。
ギリシャ神話のポセイドンの三叉槍”トリアイナ”も『三つの歯』。
ゲームのク○ノトリガーで登場する”にじ”という武器も虹色の貝殻から作られた『七色の波紋』を持つ刀。当時は単純だけど何か惹かれるものを感じたものです。
ゲームのモン○ターハンターの”燃ユル終焉ヲ謳ウ翼”という笛。装備すると背中に『燃え盛る翼』が生えたように見える。こちらも製作者の遊び心に唇が綻んだ。
佐々木小次郎の得物である”物干し竿”。『物干し竿のように長い』、日本も直球そのまんまの武器多し。
武器本体の外見ではないが、天下三槍の一つ”御手杵”は、鞘が『手杵(長い棒で中央がくぼんでいる)』のが由来。
○性能:”勝利の剣”は、振るえば勝つ剣、所有者は北欧神話のフレイ。問答無用のシンプルなネーミングである。
同じく北欧神話のトールの槌”ミョルニル”は古ノルド語で『粉砕するもの』。
ホビットの冒険に登場するあらゆるものを貫く剣は『貫き丸』。
ケルト神話の名剣”カラドボルグ”も意味は、『雷の激しい一撃』で振るうと山頂を三個ほど吹き飛ばす。
折れない剣なら『不折の剣』。竜を屠るなら『屠竜の剣』……性能パターンは非常に多い。
○外見&性能:”黄色の死”、名将カエサルの剣で『黄金の装飾』を施され、一太刀でも受けたら『死を免れない』といわれるほど鋭い。別名に”サフラン色の剣”というのもある(黄金色=サフランの色)。個人的に”サフラン色の死”のほうが好み。なんというか趣がある。
○地名:”プラハの魔法剣”は、『プラハの街で活躍した』剣だからプラハの魔法剣。なんでも街に滅びの危機が訪れると復活して敵を排除してくれるという伝説があるそうです。街の守護剣ですね。
◎その他
○逸話:日本三大槍”蜻蛉切”という槍は、『トンボがとまったら真っ二つに切れた』という逸話が名の由来です。性能とも言えますが少し捻っているので分けました。
”童子切”も酒天童子(有名な鬼ですね)を切った、『童子を切った』剣ということですね。こちらも性能といえますが性能のほうは、人の胴を六個輪切りにしたとかあるので逸話にしました(胴輪切りも逸話といえば逸話ですが)。
北欧神話の”グラム”。『いずれ息子が名剣グラムを打つ』と予言されていました。剣が生まれる前に予言という逸話で銘が決まっていたのです。まあ、予言した人が何で『グラム(古代ノルド語で怒り)』と銘をつけたのかは知りませんが……
再び日本三大槍の”日本号”、こちらは歌が由来だ。黒田節という民謡で『日の本一のこの槍を~』と謳われている。歌で謳われるほど見事な槍ということである。個人的にだがこのパターンは、物語で利用しやすいと思う。
『ナロウ男爵は王都の戦いにおいて、百倍の敵を前にして剣を振り上げ叫んだ『俺こそが! 俺達こそが最後の壁だ! 総員この剣の輝きに続け!!』とな』――以降、ナロウ男爵の剣は、”導きの剣”と呼ばれ~~……なんと主人公が名前をつけなくても、吟遊詩人や見物人が親切に名前をつけてくれるのだ。
○外国語への読み替え:イングランドの物語に出てくる名剣”クリセイオー”は、ギリシャ語で『黄金の剣』の意味だそうです。黄金に輝く金属アダマント製で黄金色だから黄金の剣……シンプルです。
イングランドの物語なのにギリシャ語なのは、ギリシャがローマ時代から欧州の神秘の源泉の一つだからでしょう。神秘的風味をつける為に読み替えたのです。もっとも作中の剣の使用者がゼウスのオマージュだからかもしれませんが。
さてネタとして、適当な銘でも一つ……『琥珀の剣』の銘を読み替えで考えてみましょう。『アンバーソード』……センスが感じられませんね。では『ギルスディス』はどうでしょう。ギリシャ語の『ギルウス(琥珀)』『グラディウス(剣)』からの命名ですが、知らなければ完全なオリジナルだと思われるかも知れません。
○表記揺れ:有名な聖剣”エクスカリバー”の本来の名が”カレトヴルッフ”ということをご存知でしょうか? 硬い(caled)切っ先(bwlch)でまんま『硬い切っ先の剣』。そんなシンプルネームがどうして”エクスカリバー”になったのやら。
実はイギリスのウェールズ地方(アーサー王伝説の原典の一つが生まれた場所です)からイングランド→フランスとアーサー王伝説が広がる間に他言語に翻訳され、更に意味を追加されたり削られたりしたようなのです。遂には日本で”約束された~”なんていう真名がつけられたと。
一つの武器が複数の名を持つという意味で面白いネタもとです。
○新規命名:”ブリューナク”はケルト神話の太陽神ルーの持つ神の槍……とこの間までいわれていました。しかしどうやら二十~三十年ほど前に日本で名付けられたようなのです。
注意すべきは太陽神ルーは神槍を持っているのです。しかし神話の中に名前が出てこない。で日本で親切にも格好いい名前をつけたと……案外、名前の元が分からない伝説の武器は後世の人間が己のセンスで名付けたのかもしれませんね。
以上、さまざまな命名の例でした。独自の命名案はできたでしょうか? 異世界ならば異世界なりの新しい命名案も生まれることでしょう。
私も”諸刃の白詰草”という名前を思いつきました。白詰草とはクローバーです。希望・誠実・愛情・幸運を象徴する四葉のクローバーのあれです。『柄に白詰草の装飾』をされ使用者に多くの祝福を与えてくれる剣。そして『諸刃』の意味は白詰草の花言葉の一つ『復讐』。剣で得た祝福は当然ながら数多の死を踏み台にしたのものなのですから……