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海軍③ 動力船のネタ

 さて海軍の動力船のネタです。尤も実質は装甲艦なのですが(汗)。


 装甲艦、甲鉄艦、東艦(固有名称)……これも様々な名で呼ばれていますが早い話が金属装甲で船全体を鎧った軍艦です。


 動力――蒸気機関を搭載した軍艦は装甲艦以前にもありました(汽船戦列艦や外輪式軍艦などなど)。

 しかしそれらは蒸気機関のために肝心の大砲の積載量が減ったり舷側に大砲が置けなくなったり――外輪式は砲が並ぶべき側面にその外輪がある――と時代を変えるほどのものではなかったので割愛。


 では戦列艦を撃ち破り海の玉座を手にした装甲艦とは?



・装甲艦(ironclad warship:装甲を纏った戦船、シンプルですね。好きですこの名称)


 時代:十九世紀~二十世紀

 主な地域:大西洋から太平洋までほぼ全世界

 使用者:欧米から亜細亜まで

 使用目的:海戦

 形状:喫水線下から舷側までを装甲で覆われてた細長い形状。重量増加による速度への悪影響を船型で補っている。

 材質:初期は木造船体に装甲を打ち付けたものと金属船体が混在。後期は金属船体。

 全長:最小78m~最大190m

 速度:後期28ノット(第二次世界大戦時)、初期13ノット(平時航行は帆走を併用)

 乗員:初期570名、後期650~900名

 排水量:初期5600トン 後期12000トン

 動力:初期は帆走と併用した蒸気、後期はディーゼル機関

 建造期間:発注から竣工まで二年(英国製装甲艦ウォーリア)、

 価格:360000ポンド(英国製装甲艦ウォーリア)、現代価格だと50億円相当

 戦闘方法:十門から三十門の大砲。砲弾よって非装甲の戦列艦に対して致命的破壊力を発揮する。逆に厚さ100mmを超える金属装甲は至近距離からの砲撃を弾いた。

 初期の装甲艦はお互いに砲撃が有効打にならず衝角戦術――懐かしのガレー船お得意のアレ――を使ったりしていた。


 注意:上記の中には索敵、連絡、沿岸防衛などを任務とする非主力艦は含んでいません。海戦でドンパチするような自己主張の強いガレー船や戦列艦の地位を奪った方々オンリーです。

 フリゲート、コルベット、ガンシップなど索敵、連絡、沿岸防衛などで活躍する船にも手を出しかけて『これ混沌としすぎ無理』と切り捨てました。

 ネタとしてもフリゲートはともかくコルベットやガンシップは作品で活躍させるには足が短いなど物語で活躍できる幅が狭いので今回はいいかな、と。

 南北戦争中の最初期の装甲艦なんかはネタになりそうなんですがね。



 一言で言うとズバリ――”超・兵・器”!!



 安っぽく聞こえるかもしれませんが既存の兵器は、装甲艦の登場により全て玩具となりました。

 例えば前々回のガレー船と前回戦列艦は、一応戦いにはなりました(勝敗は別にして)。


 しかしこの装甲艦は違います。戦いになりません。


 厚さ100mm超――親指の根元から人差し指の先端までの長さに等しい厚みの鉄に鎧われた装甲艦は、当時最新の後装式大砲であっても貫くことが不可能。

 まあ、”大砲で沈められない船”がコンセプトなんですから当然。


 装甲艦が生まれたのは大砲、その進化が原因です。


 当時の大砲は、射程距離や命中精度も向上し何より弾自体に爆薬を詰めた”炸裂弾”、弾の中に鉄片や小さな弾を詰めた”榴散弾”により著しく破壊力を増していました。

 それはたった一発の砲弾が戦列艦を沈めかねないほど。

 何千本もの木材と数年単位の建造期間と建造費そして訓練された数百人の水兵が一発で海の藻屑になりかねない時代が来てしまったのです。

 そこで世界の海軍関係者は思いつく、


 『そうだ! 炸裂弾や榴散弾が命中しても耐えれる金属装甲つければいいじゃん』


 単純明快な答えを。

 で船体を覆うだけの莫大な鉄の入手、重くなる船体の航行方法、建造費の増加などなど頭が痛くなる諸問題をクリアして生まれたのが装甲艦なのです。

 

 そしてガレオン船がガレー船を駆逐したようにこの装甲艦は戦列艦を駆逐していきます。


 蒸気機関と推進軸――スクリューの実用化、装甲で覆われた船体、非装甲艦を一方的に撃沈できる大砲を前に、戦列艦は海に浮かべて見掛けを楽しむ実物大ボトルシップ(ボトルなし)と化す。

 これ以後、敵の装甲を貫ける大砲を、相手の砲に耐えれる装甲を、とより強く硬くを求めた軍艦建造競争が加速。

 装甲艦から進化した前弩級戦艦、弩級戦艦、超弩級戦艦、そして世界最大の超々弩級戦艦として知られる大和もこの”より強く硬く”の系譜です。


 海軍の歴史は空母や航空機、誘導兵器と続きますが……なろうでメインのファンタジー世界で登場させるならこの装甲艦がギリ限界でしょう。

 集団同士の戦争なら話は別ですが、この装甲艦が必要な強大な敵――怪獣や邪神?――が普通に闊歩する世界では恐らく人類はそこまで文明を発展できません。

 考えてください、非装甲の艦隊や街を一方的に滅ぼせる敵がうろつく中、大規模農業による人口増加に産業革命とかやってられません勇者でも召喚するしかないです(いや本当に)。



 ネタ①:さてこの装甲艦。メルヘンな創作世界に登場させるなら一工夫を。

 大砲の進歩が装甲艦の誕生原因なんですが……魔法と特殊能力が溢れる創作世界では大砲に匹敵もしくは凌駕する破壊力がごろごろしています。

 何度も例に出しますが爆発する火焔球を放つ魔法があれば――帆を焼かれたり船体への引火延焼などなど――戦列艦はあっさり潰せます。

 そんなデンジャラスフィールドでは軍船も違った進化をするでしょう。


 例えば……帆には耐熱性の高い火蜥蜴の革、船体は爆裂魔法に耐える竜の鱗で装甲し、航行は船の底に張り付いてる大型モンスターが代行、攻撃は舷側に並んだ魔術師が様々な呪いを放ち相手も神の加護や呪い返しで応戦。


 対立する国の文化や風習、人材力によって千差万別な”装甲艦”が生まれるかと。

 異世界を創作するならばその世界独自の装甲艦(ちょうへいき)も創造してみてはいかが?



 ネタ②:いや、それでも鉄と鋼の装甲艦を登場させたい! という方は御注意を。

 まず地球産装甲艦ですが建造するなら建造理由は兎も角として…………多分造れる国は超軍事大国だけです。


 理由は鉄の消費量。


 えー最初期の装甲艦ですら五千トン(排水量トンですが重量トン近似として扱います)。これキログラムに変換すると五百万キログラムになります。

 十七世紀の溶鉱炉一個の年間鉄生産量が七百トン、キログラム変換で七十万キログラム。


 装甲艦のトン数の全てが鉄ではないにしても溶鉱炉七個が一年間フル稼働した分の鉄が消費されます。更にはそれだけの鉄の原料――鉱石を算出する鉱山も必要。ああ、木炭・石炭も大量に消費しますね。

 参考までに十七世紀初期の英国の”年間”鉄生産量が五千トン程度。尚、当時の英国はスペイン無敵艦隊を破った新たな海洋覇権国家でした。


 また、


 フルプレートアーマー(全身甲冑)の重量が三十五キログラム。

 十七世紀の野戦用24ポンド砲が三千キログラム。

 一般的な火縄銃で四~五キログラム。


 ……各種兵器の重量を羅列しますと分かっていただけるでしょう。

 そうです装甲艦一隻造る鉄は莫大で、最大級の大砲千門以上、銃なら百万丁、騎士十万人分の武装ととんでもない量になります。


 余程の超軍事大国でなければ造れません装甲艦(書いといてなんですが浪漫が無いですね)。

 超古代文明の発掘兵器とかで登場させるなり、鉱山と溶鉱炉を無尽蔵にもってるとかご配慮を(そこからイメージを膨らませるのもあり)。



 補足というか超蛇足:国力のネタで人口と兵制から兵力が大体分かるような話をしましたが海軍力に関しては鉄の生産量を見ると限度が見えてきます。

 戦争中の国でも艦艇に回す(回せる)鉄生産量はほんの数%程度、商業船など全部足しても10%ほどです。

 つまり鉱山の数や溶鉱炉の方式を決めれば大雑把な年間鉄生産量=軍艦の建造限界を設定できるでしょう(木造船の場合大砲の数と重量)。

 なんか戦略ゲームのパロメーター決めてる気分ですが海戦でどれぐらいの船を登場させるか基準になれば幸いです。


 

 繰り返しますが便利な魔法とか道具がある世界――嵐に遭わない船、風が無くても走る帆船、燃えない加護、空飛ぶ船、遠距離通話――だと海軍海戦は根本から変わります。しかしまあ創作のヒントになれば幸い。

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