騎士のネタ
騎士とはなんだろう? ぱっと思いつく条件は、
・君主に仕える職業軍人
・騎士道に従う戦士
・馬に乗って戦う人
・貴族
こんなとこだろうか。
では君主に仕えてない騎士は、騎士ではないのだろうか?
君主に仕えてない騎士はいる。君主そのものだ。基本、王も含めて貴族は騎士である。つまり土地・装備・馬・戦闘技能があれば騎士とみなすことはできるだろう。そもそも騎士の始まりは馬に乗った戦士なのだから。
面白い例としては、宗教騎士団が独自に領地を運営してるというものもある、この場合は騎士団の団長が君主と言えるかもしれない。
なお君主も領地もない騎士の場合は、そうなった経緯はどうであれ継続的に金銭を得なければ馬も装備も維持できず自称騎士となることだろう。自営業騎士か正規雇用騎士か……騎士の世界も世知辛い。
・騎士採用試験:とある王様が騎士団の新設を決定した。腕に覚えのある傭兵・無職騎士・パートのおばちゃんが集う。雇用されれば定期収入だと猛る彼らに示された試験内容とは……? (ドラゴン退治でも、トーナメントでも、それこそ美味しい戦場料理コンテストでも無理難題や面白い試験内容を)
騎士道は?
これも騎士が戦場の主役から遠のき宗教的側面から美談として語られるようになって変わったが……元々は戦場の不文律である。『馬は高いからお互い狙わないようにしよう』『殺されるの嫌だし身代金払うからトドメはお互い無しね』と一定の地域で醸成されたのだ。終いには『弩は、全身甲冑撃ち抜くから戦争で使用は禁止しよう』なんて話もあったりする。
・異文化との戦い:異なる文化を持つ敵との戦い。騎士達が学んできた騎士道と違う戦場が待ち受ける。(捕虜にしたら自害されたなどは、自殺を忌避する文化圏に対して不気味で異常な敵であるとインパクトを与えることだろう)
馬に乗って戦う。
古代から馬とは高級品だ。現代でいえば自家用車といえる当然貧乏人には持てないし維持できない。つまり騎士の技能があって君主に仕えてても馬や装備が無い騎士なんかもいるわけだ。この場合、叙勲(『あんた騎士だよ』って肩を剣で叩いてもらうあれ)してもらえず準騎士なんて扱いで仕えることになる。
そもそも馬に乗って戦うというのは、
馬に乗ることで高い位置から戦場を見ることができ兵の指揮ができる。
重い装備をつけて徒歩移動しなくてすみ戦う体力を温存できる。
戦場で目立てるので雇い主に覚えてもらい易い。
上から武器を振るうことで武器の威力が増す。
優れた移動力で戦場の有利な位置を確保できる。
などなど戦いを優位に進めるために馬に乗ってる訳である。そして馬を維持調教するには特権階級(職業軍人や領主)にでないと難しい。上にも書いたが馬に乗った戦士が騎士の元となったことから考えるに有利に戦う条件を満たせる戦士が騎士であるとも言える。
・馬がないので××に乗りました:馬を持てないから代わりの騎馬(?)をという話。(戦闘が有利になるなら馬にこだわる必要は無い大山羊・羊・巨大二足歩行鳥類……食事や繁殖、調教方法などを考えれば深みも増すだろう)
騎士は貴族……なのだが平民でも騎士になれる。
正しくは騎士になることで貴族になる。戦場で武勲を挙げた農民・傭兵などが君主に正規雇用され騎士になるのだ。後は、子供に騎士を継がせれば代々続く貴族様のできあがり。
・立身出世の王道:ド直球、徴兵された農民兵が王様救って騎士になるもよし、騎士の子供が騎士になる過程を描くもよし。(逆に騎士の三男(長男が親の後を継いで、次男はその予備)などは、騎士にならずに聖職者になるなどの場合もある。そこから長男次男が急死して呼び戻された三男がなりたくもない騎士に無理やり……案外いけるか)
追記:騎士学校について
現実の騎士になる過程は、七、八歳から先輩騎士の小姓になる(武器鎧の手入れ方法、馬の世話)。
十四、五歳で従騎士に(剣、槍の馬上戦闘の訓練、部隊指揮の勉強)。二十歳前後で叙勲され騎士となり先輩騎士と同じ雇用主に仕える……だいたいこんなところだ。つまりはマンツーマン(まぁ、一人の騎士が二人、三人同時に育てることもある)。そんなわけで新米騎士一人育てるのに十年以上掛かる。一人の騎士が生涯で育てることができる騎士は十人を超えることはないだろう。寧ろ二、三人育てたら多いほうと考えて良い。
では騎士学校とはなんだろうか? 騎士の学校というのは分かる、問題はなぜ必要なのかだ。学校なんか作らなくても騎士にマンツーマンで育てさせればいいのに。
そもそも騎士(職業軍人)を育てる学校なんてポンポンつくれるだろうか? 極論すれば効率のいい殺人手法を教える学校なのだから。当然、学校を運営する組織は、国家もしくは準国家級の勢力でなければいけない。
騎士学校が存在するということはあることを意味する…………騎士を大量育成する必要がある(またはあった)ということだ。魔族の襲来でも超大国同士の戦争でも兎に角、騎士が足りない状況なのだ。十年もかけてマンツーマンなんてやってられない。『五年で騎士一人当たり四十人新人騎士育てろ!!』という感じの改革である。他にも均一な質を持った騎士を育てるという利点もある(飛びぬけた騎士一人より、そこそこ優秀な騎士四十人のほうが価値がある場合)。
これは現実の軍仕官学校などを参考にすると分かりやすい。銃火器の発達(死傷率UP)や総力戦(兵隊の数UP)と従来の”貴族だけが士官を勤める”だけでは足りなくなる。結果平民でも士官(尉官、佐官、将官)になれるよう教育する学校が必要とされた。
そして騎士の大量育成なんかする状況では、戦闘の効率化が求められる。貴族や平民なんて区別する暇もなく更にいうなら騎士に求められる技能――徒歩での武器戦闘、馬上での戦闘、砲術、気象観測、集団戦闘指揮、戦術・作戦・戦略立案、通信、輜重(補給)――様々な能力を短時間で全部学べるだろうか? その必要があるだろうか? 結果、専門化が進み騎士は、前線指揮、砲術操作、後方支援、作戦立案など担当ごとに分かれていくことになる。
騎士学校とは、古き良き騎士の習慣と効率重視の総力戦の狭間にある過渡的存在だと思えてしまう。もし総力戦への対応ができなければ一騎当千の騎士(メルヘンの世界ならありゆるだろう)の超精鋭兵を育てる教育機関や箔付け・儀礼的な意味での騎士学校になるかもしれない(金を出して在籍すれば騎士になれる)。
学校とは、効率良く次世代を育成する組織でありそれが存在する理由がある。異世界を想像する際、騎士学校が存在する背景を描写すれば、その世界がどのような戦史を持ちその国がどういう立場なのか無理なく読者に伝えることができるだろう。
騎士学校の秘密:王家が全面的支援の下、騎士学校を設立した。『学費無料! 卒業した貴族子弟は全て騎士として王家が雇用予定!』と甘い誘い文句。その目的は何か? 地方貴族の国家への帰属意識を高めるためか? それとも次男三男を取り込んで反抗的な貴族の当主と入れ替える? 単純に人質なんてことも……(と見せかけて単純な軍備拡張&戦術情報の秘匿が真相、その国独自の戦闘法を教えてほいほい他国とかで就職されたら非常に困る)
追記二:騎士の指揮する人数
馬に乗り戦場を駆ける騎士だが単独で戦う訳では無い。彼らは戦場における指揮官でもあり標的でもある。戦場を単騎駆けとか自殺行為なのだ。
見習いの従騎士がいるならつれているだろうし従者もいる(そもそも全身甲冑とか一人じゃ着れない)。一族から息子や弟に甥など男手を引き連れるものだ。
なんだかんだで騎士一人いれば十人~数十人の歩兵を指揮して戦うことになる(従者のいない流浪の騎士なんていうのも逆に趣があるかも?)。
・従騎士(見習い騎士)・新米騎士:正騎士の下で十人以下の小部隊を指揮する。補佐にベテランの準騎士(身分問題・装備が揃えられない等で叙勲されない騎士)をつければバーディものになるかも。
・正騎士(戦闘を経験している騎士):騎士数名を含む数十~百人を指揮する。
・大騎士・筆頭騎士・騎士長(何人か騎士を育てたりしているベテラン):騎士十名以上、百~数百人を指揮する。戦術レベルの最大値。
個人で詳細な指揮をできる範囲を十人前後、大雑把で百名と考えれば騎士が指揮しての活躍描写はここら辺までだろう。これ以上となると将軍とか大貴族としての側面からの表……作戦レベルでの運用になる。