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第1話 青空

「空飛ぶクジラを見に行こうよ!」

 突然、あかりにそう言われて、あっけにとられてしまったけれど今日は学校が終わったら校舎の裏にある原っぱへと、行くことになった。

 都心のすぐ近くだというのに僕らの高校の周囲には緑が多すぎる。

授業のことなんてこれっぽっちも頭に入らずに僕の一日はあっという間に終わっていった。

 台風の過ぎ去ったあと、澄み切った空は少し早めの秋の風を運んでくる。

 太陽が照りつけて、すごく気持ちが良かった。

 それにしても。

 あかりのやつ、また変なことを言い出すなあ、と僕は思った。

 校舎の裏を抜けて、山道をさかのぼり、林を越えたところで見晴らしのいい原っぱがある。

 あかりはそこにいた。

 そして空には、なんだか大きな黒い雲みたいなものが浮かんでいた。

「あっ、青だ!」

 あかりが振り返って僕の方を見た。

「ねえ、あれが見える??」

 そう言って僕の手を突然ギュッと握りしめてくる。

 「お、おい、なんだよいきなり」

 びっくりした僕は、あわててあかりにそう言った。

「ほら、よく見て」

 あかりにそううながされて、空の雲をもう一度見上げてみた。


 雲なんかじゃなかった。そこには、空色と黒色が混ざった、まだらで大きなクジラが浮かんでいた。

 ええええ、なんでクジラが空を飛んでいるんだよ!!

 青空に僕の絶叫が響き渡る。

 僕の声に呼応するかのように、その時クジラが大きな声で吠えた。

 まるであくびのようなのんきな声だ。


 昼下がりの午後の下最大限に困惑する僕の横で、あかりはニコニコ微笑んでいる。

 どうだ、と言わんばかりの顔をして。

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