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Lovely9..幸せなランチタイム。

「ん〜!素敵な朝だよ〜サボンっ!おはよう♪」






開いたカーテンからキラキラのベールがこぼれ入ってくる。






「おはよう♪朝からずいぶんご機嫌だね〜、エリー。」






「そんなことないよ〜!も〜サボン♪」






いや。

世界中のどこからどう見ても今朝の私はご機嫌上々だ。






朝会社へ向かう足どりもるんるんで、もしかしたらこのまま空を飛んでしまえるんじゃないかな!






「な〜んてね♪」






「な〜に一人でにこにこしてるのかな〜?エリーさん♪」






「歩っ!おはよ♪」






「おはよう♪早く素敵な金曜日の話聞かせて聞かせて〜!」






二人できゃっ、きゃっ言いながら歩道を歩く。

何だか女子高生みたいな気分!






「あ!おはようございます。平山さん。」






「え…!?」






歩の言葉に驚いて振り向くと…






「おはよう!朝から女の子は元気だね〜。」






「平山さんっ!おはようございます!」






朝から出会えるなんて幸せだなぁ。






「おはよう、矢田さん。じゃあお二人さん、ガールズトークに花咲かせ過ぎて遅刻しないように、ね!」






平山さんはそう告げると颯爽と歩いて行ってしまった。






「さすが微笑みの貴公子だね。朝から爽やか〜!」





歩は、ねっ♪とにこにこしながら私の方を向いた。






今日も一日、仕事がんばろうっと。






─お昼休み。






歩は今日は急な仕事で忙しいみたい。

私は一人屋上のテラスへとやって来た。






ベンチに座り作ってきたお弁当を開く。

初めて歩とランチをした時から確実に進歩している私のお弁当の中身。






今日はなかなか可愛らしく出来上がった。






お弁当作りのいいところって、決してエコなだけじゃなくって、朝の時間を有効的に使えること。






平山さんの教えてくれた忙しい人の時間の話じゃないけど、私は今まで時間のない忙しい朝にお弁当作りなんてもったいないと思っていたのだ。






だけど実際に毎朝作ってみて思ったことは、朝の時間がいっぱい、必然的にできることもたくさん!






余裕を持って起きるからメイクや洋服選びにもたっぷり時間を使えるし、可愛いお弁当もこうして作れるし、何だか朝からとっても素敵!






「いっただきま〜す♪」






プチトマトを口に入れようとしたその瞬間…






「待てっ!」






「…っ!平山さんっ!」






「あははっ!ごめん、ごめん。どうぞゆっくり召し上がれ。」






恥ずかしい…!

大きく口を開けたところを真っ正面から見られてしまった。






平山さんは私のとなりを指差して"ここ、いい?"という風な仕草をしてみせた。






「ど、どうぞっ!」






私はランチ用の袋を反対側にどかせて席を空けた。






平山さんはコンビニで買ってきたパンとコーヒーの入った袋を膝の上に乗せた。






でもなぜか真っ直ぐに前を向いたまま食べようとはしない。






「……」






「あの…よかったらお弁当(これ)食べますか?」






まるで嬉しそうにしっぽを振る子犬のように、くるっとこっちを向く平山さん。






「いいの!?いや〜美味しそうだな〜って思ってたんだよね♪」






「ふふ♪どうぞ。味は自信ないですけど…たくさん食べてください!」






卵焼きを頬ばりながらも微笑んでいる。

さすが貴公子?






「ん…美味しいね!俺出し巻き大好きなんだよね〜。…んまっ♪」






「ふふ。幸せそうですね。よかったらこっちもどうぞ。」






私は水筒を差しだした。






「ありがと。お茶?」






ふたを開けてカップ代わりに注ぐ。






「いえ、スープです。なんちゃってポトフ?みたいな。体が温まりますよ♪」






「最高だね、矢田さん!いや〜幸せだなぁ。」






こっちのセリフです。

平山さん。






こんなに幸せなランチタイムってあるのだろうか。

まるで夢の世界!






ピロリロリ〜♪






平山さんは携帯画面を見つめた。

画面の上でなめらかに動く平山さんの指に思わず見とれてしまう。






「姪っ子がさ海外旅行に行くらしくてさ。」






画面を見つめたまま平山さんは私に話しかけてくる。






「姪っ子さん?」






「うん…それでこの子!しばらく俺の家で預かることになったんだ。」






そう言って平山さんは子犬の写真を見せてくれた。






「可愛いですね〜!トイプードルですか?小さいぬいぐるみみたい♪」






「うん。まだわりと赤ちゃんみたい。まぁ一週間だけなんだけどね!」






それから平山さんは家族について少し話してくれた。






「うちの兄弟ってちょっと年が離れててさ。兄貴がいま38歳なんだ。だから姪っ子との年の方が近いの。」






「へ〜ぇ!」






嬉しすぎて身を乗りだして聞き入ってしまう。

平山さんもどことなく嬉しそうに話をしてくれているような気がする。






「姪はまだ20歳なんだけど、婚前旅行だって兄貴が切なそうに電話でぼやいてたよ。」






「姪っ子さん結婚するんですか!?」






ポトフを飲みながら平山さんはいつもみたいに下を向いて微笑んだ。






「どうなんだろうね?まぁ、まだ若いから分からないけど、彼は年上でなかなか素敵な人みたいだから兄貴たちも心配はしてないらしい。」






「なるほど。楽しい旅行になるといいですよね!あ、わんちゃんの名前って何ていうんですか?」






「"トイ"だってさ。姪いわくおもちゃ箱みたいなキラキラするイメージでつけたらしいけど、彼には単にトイプードルの頭を取っただけだって言われるってぶつぶつ電話越しに話してたよ。」






話しに夢中になっていたらお昼休みの終わりを告げるベルが鳴り響く。






平山さんは水筒のふたを閉めながら私の方を見つめた。






「明日トイの散歩行こうかと思ってるんだけど良かったら矢田さんも一緒にどう?」






「行きたいですっ!でも明日、休日出勤なんです…」






「そうなんだ。残念だなぁ。」






「本当に残念です…。」






せっかくのデートのお誘いだったのに。







「また誘うよ。とりあえず午後もお互い頑張ろう!」






「…はい。それじゃあまた。」

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