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Lovely8..素敵な金曜日の夜Ⅱ。

「この間の映画、"素敵な靴に連れられて"おもしろかったよね〜。」






会話をしながらも平山さんはささっとサラダを取り分けてくれる。






「あっ、ありがとうございます!とってもおもしろかったですよね。」






…サラダがのどをとおらないっ!

慌ててお酒で流しこむ。






「でもちょっと意外です。平山さんがああいう映画観に行くなんて…」






「確かにそうかもね!実はさ…会社の子たちが話してるのを聞いたんだ。最高だったってさ。」






平山さんの顔がほんの少〜しだけ赤くなった、気がした。






「でも観に行って良かったよ!光栄にも矢田部長に会えたので。」






「も〜!からかわないでくださいよ〜。」






今度は私の顔が赤くなっている。

気のせいではなくて、確実に。






金曜日の夜のせいか店内にはお客さんがいっぱいで、こういう雰囲気のお店のせいか店内には恋人風なお客さんでたくさん溢れている。






私たちももしかして…

そんな風に見えているのだろうか。






そんなこと考えていたら余計に熱くなってきてしまった。






「矢田さん?大丈夫?」






「あ…っ、だ、大丈夫です!んん…っ。」






呼吸をととのえて、食事の再開だ。






それにしてもこのお店は雰囲気も素敵だし、出てくるお料理やお酒もどれもとっても美味しい!






チキンソテーを食べながらついつい口元がゆるんでしまう。






「ふふ。美味しい?」






「はい!とっても!幸せです〜。」






「そっかそっか。良かった。」






あ、いつもの癖。






「…?どうかした?」






「いや…その、平山さん、少し下を向いて微笑むのって癖ですよね。」






「…え!?そうかな…?」






「はい、そうです!よくやってます。」






「そっか。変…かな?」






平山さんは黒ビールにそっと口づけた。

その感じが妙にセクシーでたまらない。






「変じゃないです!変…じゃなくてむしろその、素敵…です。」






あぁ。

私って図々しく何を言っているのだろう。

恥ずかしい…。






「…?平山さん?」






ふと顔を上げると平山さんの頬が少しだけ赤くなっている。

気のせいではなくて今度は本当に赤い。






「んん…っ。えーっと…ありがとう。ん…あ、何か飲む?」






平山さんて…

何だかやっぱりとびっきり素敵で可愛らしい人!






それをきっかけに私の緊張もほぐれたのか、少しは人間らしい、"デート"を楽しむことができた。






4杯目のビールが運ばれてきて、平山さんは素敵な話をしてくれた。






「一番忙しい人間が、一番たくさんの時間を持ってるんだ。」






「一番忙しいのに?」






「そう。なぜなら忙しい人たちっていうのは、それだけやらなければならないことを抱えているから、その分有効的に時間を活用しているんだ。」






「なるほど…それじゃあ反対に暇な人っていうのは…」






「そう!一見してそういう人たちの方が時間をたくさん持っているように見えるんだけど、実はうまく活用出来ていない。彼らは単に時間を持て余してしまってるんだよ。」






「なるほど。何だかとっても深いですね。平山さんの持論ですか?素敵です!」







「いや!アメリカの心理学者だったかな?」






そう言って子どものように笑う平山さんは可愛くてたまらない。






気がついたら時計の針はもう9時半を回っていた。

びっくりだ!






「そろそろ行こっか。送ってくよ。」






「ありがとうございます。」






─シャララララン♪






お店のドアを出る瞬間、とっても素敵な音がした。

まるで私の心の中の恋するベルの()が聴こえてしまったのかと思うくらい!






帰り道。

平山さんはさりげなく車道側を歩いてくれている。

歩く速度も私に合わせてゆっくりと。






「その靴…」






「え…?」






「その靴すごく素敵だね!あの映画の日も確か履いてたよね?」






嬉しい!

私の足元に気が付いてくれるなんて。






「実はあの映画の日が初めてこの靴で出掛けた日だったんです。」






「そうなんだ。とっても似合ってるよ!」






「嬉しいです。ありがとうございますっ!!」







ベリー色の靴はより一層、ピンク色に染まっていく。

私の頬のように。






「…また誘ってもいいかな?今度は部長としてじゃなくて、矢田エリーさんとして。」






─ズッキュン!

ヴィーナスなはずなのにがっしり射止められてしまいました。






「はい…っ!もちろんです!ありがとうございますっ。」






あぁ。

なんて…






なんて素敵な金曜日の夜なのだろう。

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