Lovely7..素敵な金曜日の夜Ⅰ。
「おはよう、エリー!」
金曜日の朝。
ううん、デートの朝。
「お、おはよ、う…?」
だめだ…。
緊張し過ぎてぎこちなくなってしまう。
今からこんなのじゃきっと一日もたないよ…。
そんな壊れかけたロボットみたいな私に、サボンは素敵な秘密を教えてくれた。
「エリー?金曜日はね、女性がみんなヴィーナスになれる日なんだよ♪゛」
「ヴィーナス?私も…なれるのかな?」
「もっちろん!さぁ、とびっきりのお洒落をしてデートに出掛けておいで♪゛行ってらっしゃい、エリー!」
「…うん!行って来ます、サボン♪゛」
デートの洋服はワンピースを選んだ。
足元にはお気に入りの素敵な靴を連れて。
だけど変じゃないかな…。
私なんかがこんな格好しても大丈夫なのかな。
そんなことを思いながら駅から会社までの道を歩いていると、後ろの方から声を掛けられた。
「おはようございます、矢田部長。」
「平山さん…っ!」
振り返ると朝から優しい微笑みの彼が立っていた。
「今日すっごくいい天気だよね!」
「そ、そうですね…っ!」
オー、マイ、ロボット。
これから早朝会議があるらしい。
平山さんは去り際に…
「何かいつもと雰囲気が違って…素敵だね。じゃあ…また夜に!」
あぁ。
後ろ姿まで格好良い。
素敵なのはまちがいなく、私ではなくてあなたです。
「…"素敵だね。また夜に!"って何何〜!?今のってもしかして〜きゃ〜♪゛」
「歩っ!な、何でもないよ!ほ、本当に…」
歩はにこにこしながら私の左腕に右腕をからめてくる。
「君は本当に嘘をつくのが下手っぴだね♪可愛いなぁ〜!エリーちゃんは♪」
私は耳まで真っ赤になりながらそっぽを向いた。
歩とは今日のお昼を一緒に食べる約束をした。
「たっぷり゛事情聴取゛させてもらうよ〜♪゛」
─お昼休み。
屋上の外テラスの席で歩と二人、ランチタイム中。
私の作った卵焼きを頬ばりながら歩が私をからかってくる。
「まずはじめに…平山さんはいま会議中だからここには来ないよ!」
「えっ?別に私はそんな…っ」
「さっきからテラスのドアの方、ず〜っと気にしてるみたいだったからさ!」
天使の微笑みが今日は何だか小悪魔の微笑みに見える…!
「んん…っ。」
私は咳払いをしてみせた。
歩は相変わらずにこにこしながら私を見つめている。
お昼休みの間ひたすら"事情聴取"というガールズトークが続いて、あっという間にベルが鳴り渡る。
お弁当箱を片付けながら歩は言った。
「恋のいいところは階段を上る足音たけで、あの人だってわかることだわ♪゛」
私もお弁当箱を袋にしまいながら答えた。
「ん?何それ?」
歩は微笑んでいる。
「ガブリエル・コレットだよ♪フランスの女性作家さん。」
「うん…?」
あ。
いつもの天使の微笑み!
「恋をしたんだね、エリー!素敵な恋になりますよ〜に♪゛」
歩。
最高に可愛らしい天使の微笑みだ。
「…ありがとう!」
テラスルームのドアを出る瞬間、歩はそっと耳打ちをした。
「帰りに渡したいものがあるの!今夜のデートの待ち合わせの前に使ってみてね。"とっておきの秘密"だよ♪゛」
18:00。
「退勤、っと。」
いつもとはまったく別の帰り際。
いつもとは全然ちがう気分。
だって私、これから平山さんとデートだもん!
待ち合わせ場所に行く前にパウダールームに入って、香水をふりかけた。
歩が渡してくれた"とっておきの甘〜い秘密"。
「…よしっ!」
スーツ姿は会社で見慣れているはずなのに、街中に立っている平山さんは最高に素敵で、思わず…っ!
「うわ…っ!」
「…っと!ずいぶんドラマチックな登場だね(笑)!大丈夫?」
足が"ぐにゃっ"て、
平山さんの胸に"ドンッ"て、
恥ずかしすぎて泣きそう…。
「ごめんなさい…大丈夫ですっ。本当にすみません!」
平山さんは相変わらず素敵な微笑みで、私は相変わらず変なロボット。
にこっとしながら平山さんは前を向いた。
「じゃあ…行こっか!」
「はい…!行きましょう。」