Lovely6..恋する理由。
恋する理由って何だろう。
今日も屋上の外テラスでたそがれ中。
今日はこの間歩が持っていた、ホワイトラズベリーラテの方をお供に。
クリスマス限定の柄が暖かくって可愛い。
「…矢田さん?もしかしてたそがれ中?」
歩…じゃない!
平山さんだ…っ!
私は慌てて襟元や髪の毛を直した。
良くなっているかは別として。
「お疲れさまです!もしかして何回か呼びました…か?」
「うん、3回くらいかな?でも良かった!もしかして嫌われてるのかと…(笑)」
平山さんは少し下を向きながら微笑んでいる。
彼の癖だ。
そんな彼の素敵な癖に女の子はみんな恋している。
「全然っ!そんなそんな!嫌ってなんてないです!ただ考えごとしていて…それで…っ」
慌てる私に優しく微笑みながら、平山さんはとなりに腰掛けた。
「ありがとう。ごめんね?考えごとの邪魔しちゃったかな。」
あ、まただ。
素敵な癖。
その素敵な癖に女の子はみんな…
「…平山さんは」
「うん?」
「平山さんは…恋する理由って何だと思いますか?」
私は右隣りにいる平山さんを真っ直ぐに見つめた。
「恋する理由?」
「実は最近ずっとそのことについて考えているんです。でもとっても難しくて…」
「恋する理由か〜…」
平山さんはそう言ったあと、右手を少し傾けてコーヒーを口にした。
クリスマス限定…
ではなく定番カラーのもの。
「それは難しいテーマだね。う〜ん…矢田部長!次回のMTまでに資料を集めてまとめておきます。」
少しおどけた平山さんは何だかとびっきり可愛らしい。
「よろしくお願いします。」
そのあと少し話をしてお互い午後の仕事へと戻った。
─その日の夜。
「エリー?携帯光ってるよ!電話かメールじゃない?」
ちょうどお風呂からあがってボディミルクをぬり終わったところ。
「誰だろ…?」
携帯画面に流れる文字にドキッとして思わずベッドに落としてしまった。
「誰からだったの?」
「…ひ、平山さん!何だろう…私何か仕事で失敗でもしたのかな…っ。どうしよう!」
拾いあげた携帯画面をなかなか見ることが出来ない。
胸の前で両手で握りしめたまま、私は部屋をくるくる歩き回った。
「いいからとりあえずメールの内容を確認しなさい〜!」
サボンのその言葉にようやく歩き回るのやめて、ベッドの上に腰を下ろした。
件名:MTの件について
本文:お疲れさまです!
今日話していたMTの件ですが、食事も兼ねて明日の仕事の後どうですか?
もし良かったら返信待っています。
平山
「MT…」
しばらくの間、ぼ〜っとしたまま携帯画面を見つめていた。
するとサボンは言った。
「それってもしかしてデートじゃない?うん…デートのお誘いだよ!きゃっ♪゛」
デ、デ、デート!!!??
この私がまさか平山さんに、まさかデートに誘われるだなんて…
クレイジーだ。
私は携帯電話を枕の下に隠した。
「何してるの?エリー?」
私も布団に包まって隠れてみる。
「いい。行かない。あとで断るメールする。うん。そうするもん!」
は〜ぁ…。
サボンは大きなため息をついた。
わざとらし〜く。
「どうして断るの?断る理由がどこかにあるの?行って来なよ!」
は〜ぁ…。
私もわざとらしく大きなため息をついてみせた。
「断る理由なんてないよ。でもデートする理由もないもん。」
サボンは少しの間黙ってから話し出した。
「エリー?それって"恋する理由"と一緒なんじゃない?」
「…え?」
「恋する理由もデートする理由も分からないけど…ううん!分からないからこそ、みんなしてみるんだと思うの。だってそうでしょ?恋する理由なんて分からなくても、"恋しない理由"なんてきっとどこにもないんだもの!ねっ♪゛」
サボンの言葉に不思議と深くうなづいていた。
私は布団に包まるのをやめて、枕を持ち上げた。
─ピコピコピコ。
「送信、っと♪゛」
「何て送ったの?教えて、エリー♪゛」
件名:MTの件。
本文:お疲れさまです。
MT兼お食事について了解しました。
明日楽しみにしています。
矢田
「内緒〜♪゛」
「え〜!エリーのいじわる〜!」
何だかとっても胸がドキドキする。
こんなに甘くて素敵な夜は久しぶりだ。