Lovely5..素敵な靴に連れられて。
恋する理由って何だろう?
お昼休みに屋上の外テラスに腰掛けて、そんなことを想いながら空を仰いだ。
クリスマス限定のジンジャーチャイラテを右手に。
「グッドアフタヌ〜ン、エリー♪もしかしてたそがれ中〜?」
「歩っ!びっくりした〜。」
歩も同じお店のクリスマス限定、ホワイトラズベリーラテを手にしている。
「あ〜♪私迷ってこっちにしたんだぁ!そっち美味しい?」
歩は私のとなりに腰をおろした。
「一口飲んでもいいよ。」
クリスマス色のカップを手に歩は幸せそうに微笑んでいる。
まるで真冬のCMみたいだ。
そんな幸せそうな歩に私は問いかけてみることにした。
「ねぇ…歩。恋する理由って何なんだろう?何だと思う?」
真剣過ぎる私の想いが伝わったのか、歩は真っ直ぐに私を見つめ返した。
「う〜ん…難しいね。何なんだろう?」
「…やっぱり分からないよね〜。」
歩は急に私の腕をつかんでキラキラした瞳で問いかけてくる。
「エリー、もしかして好きな人でも出来た?恋してるのかい?」
思わずチャイラテを口からこぼしてしまいそうになった。
「そういうんじゃないよ〜!そういうのじゃなくて、本当に。」
「ふ〜ん。まぁいいけど♪でも迷った時には一つ方法があるよ。知りたい?」
突然の歩のラブリークイズに釘付けになってしまう。
「…とっても知りたいっ!」
今度は私が歩の腕をつかんでキラキラした瞳でせがんでいた。
「それはね〜…」
──
18:00。
「退勤、っと。」
仕事の帰りに寄り道をするなんて、ちょっと前の私では考えられなかった。
会社の駅の近くにあるデパート。
ガラスのケースの中には素敵な靴が飾られている。
ベリー色の、りぼんの付いた可愛らしいパンプス。
黄金の7センチヒール。
ずっと憧れていたけど、いつも見つめているだけだった。
だけどついに…
「買っちゃった…♪゛」
靴の箱の入った大きな袋を肩から掛けて、私は足早に家へと帰った。
「おかえり、エリー♪」
「ただいま、サボン〜!」
今日考えたこと、歩と話したこと、ずっと憧れていた靴をゲットしたこと、いろいろなことをサボンに話した。
"素敵な靴をはくと素敵な場所へ連れて行ってくれる♪"
今日のお昼休みに歩が教えてくれたラブリークイズの答えだ。
「うんうん。とっても素敵じゃない!その靴エリーにすごく似合ってるよ♪素敵なその靴がエリーを素敵な場所へ連れて行ってくれるといいね!」
サボンの言葉に胸が弾んだ。
明日は水曜日。
お休みだしこの靴を履いてどこかに出掛けてみることにしよう。
そうだ!
久しぶりに映画でも観に行ってみようかな。
─水曜日の朝。
キラキラシャワーをたっぷり浴びて、とびっきりのお洒落をして家を出た。
お気に入りのベリー色の靴と一緒にね♪
それにしても映画館に来るなんて久々過ぎてきょろきょろしてしまう。
人多いな…
平日なのに。
「…矢田さん?」
映画館の人ごみの中から少し低い声が聞こえてきた。
いま誰か私の名前を呼んだ…?
「やっぱり!矢田さんだ。横顔が何か似てるなって思って。」
振り向いた先に立っていたのは、同じ会社の平山さんだった。
私より4年先輩の平山新さん。
「平山さん!びっくりです。平山さんも映画観に来たんですか?」
「うん、そうだよ。僕もびっくり!」
こんな偶然あるものなんだなぁ。
いや、きっとサボンや歩なら…
偶然じゃない!
必然…いや運命〜!なんてキラキラするのだろうか。
平山さんは社内でも少し有名で隠れファンもいたりする。
少しくせっ毛の黒い髪にあごに生やしたひげはいやらしくなくてちょっぴりセクシー、ダークグレーのスーツを格好良く着こなしてしまう素敵男子だ。
初めて私服を見たけどこっちの平山さんもとっても素敵だなぁ。
「もしかして矢田さんが観るのって"素敵な靴に連れられて"だったりする?」
平山さんはさっき買ったであろうチケットを見つめながら微笑っている。
「…はいっ!そうです。もしかして平山さんも?」
「はい…そうです(笑)」
──
「それはね〜…素敵な靴をはくことだよ♪」
「素敵な靴?」
「うん♪"素敵な靴をはくと素敵な場所へ連れて行ってくれる"んだってさ!だからお気に入りの靴を履いて出掛けてみたらきっと、"素敵な何か"が見つかるかもしれないよ!」