Lovely2..ラブリーサンデー。
サボテンの口ぐせ。
「エリー。女の子はね、誰でもみんなお姫様なんだよ。」
なわけないっす。
でも彼女は曲げない。
けっこう、いやかなりの頑固者。
「エリーだってお姫様なんだから♪」
「私なんてただの女の子だよ。」
「そうだよ。ただの女の子だからお姫様なの。」
※彼女の名前は以下サボンとする。
「可愛いでしょ♪そう呼んでね。」
と一日目からの彼女からのお願い。
サボンが家に来て初めての朝。
──
「いい?まず朝起きたらカーテンを思いっきり開く!そして朝日をいっぱい浴びるの♪」
「なんで…?」
「エリー、想像してみて。もしもあの太陽からとっても可愛くなれるキラキラが降り注いでいたらどうする?」
「…?」
「朝慌ただしくただ出掛けて行く人と、キラキラシャワーをい〜っぱい浴びて出掛けて行った人、どっちが可愛くいられると思う?」
「…。」
首をかしげすぎて、倒れそうになってしまった。
「とにかく、ほら!カーテンを開けてキラキラシャワーを浴びてみて♪」
「いいよ私は…だいたいそんなので可愛くなれるんならみんなやってるって…」
そう言ってめんどくさがりながらも私はカーテンを開いた。
「ん…まぶし─っ!」
わ〜ぁ、きれい!
日曜日の朝の太陽は、思っていたよりもキラキラしている。
青い空も晴れわたっていて、何かいい感じだ。
「さっ♪シャワーも浴びたことだし、エリー。私にもお水ちょうだい♪」
「え、あぁ、うん。」
─シュッ、シュッ!
「ん〜、気持ちいい!ありがとうエリー♪」
「…どういたしまして。」
──
太陽のキラキラシャワーを浴びたあと、私は何故か出掛けることになった。
「ねぇ、サボテ…いやサボン。お休みっていうのは、何にもしないで休むからお休みなわけで…だからさ、」
正直せっかくの日曜日は何もせずにだらだらと過ごしていたい。
でもサボンはかなりのがんこちゃんだ。
「だめだめだめ〜!今日はせっかくのお休みなんだよ。可愛く過ごせる大チャンスの日だよ。とりあえずお気に入りの洋服を着て、めいっぱい可愛くしてお出掛けしておいでよ♪きっとすっごく楽しいよ☆」
私はしふしぶ家を出た。
「それにしても本当にいい天気だな〜。」
日曜日に出掛けるなんて、(しかも何の予定もないのに。)本当に久しぶりだ。
あ、犬。
可愛い。犬まで可愛らしい洋服を着てる。
いや着させられてるだけか。
あ、この庭に咲いてる花可愛いな。
なんていう花だろう。
あ、あの赤ちゃんあくびしてる。
パパも一緒につられてるし。
幸せそうだなぁ。
「あっ!そうだ…私サボンからのメモ」
私は慌ててポケットの中に右手を入れてみた。
サボンは出掛ける前にいくつかメモするようにと言って話してくれた。
最っ高にラブリーな一日にするためにどれも必要なことらしい。
Lovely1.周りをよ〜く観察して歩く。
(×下を向かないこと。)
とりあえず1は大丈夫そうだ。今のところ。
Lovely2.可愛いものを三つは買うこと。
(×ただ見ていて満足はだめだよ!)
でもどうせ私には似合わないし…ってきっとこれがダメなのだろう。
「いらっしゃいませ〜。何かお探しですか?」
思わずお洒落そうな下着屋さんに入ってはみたものの…
耐えられないっ!
綺麗な店員さんが最高の微笑みで見つめてくる。
Lovely3.恥ずかしがらずに手をのばしてみる。
…よしっ!
「えっと…えっ…と、こういう可愛い感じのものが欲しいなっと思って…」
「可愛い…のですか。」
あぁ、一刻も早く帰りたい…。
恥ずかしすぎる…。
やっぱり見ているだけにすれば良かっ…
すると店員さんが奥の方からピンク色の下着の上下セットを手に持ってきてくれた。
「お客様にはこちらなどがお似合いになるかと思いますよ♪」
「…!いや、やっぱり私、」
Lovely4.たまには他人の意見に思いきって乗ってみる!
「…似合い…ますかね。」
「はい!お客様の白いお肌にぴったりだと思いますよ♪ご試着してみますか?」
「は、はい!」
私…こういう可愛いものも似合うのかな。
何かちょっと嬉しいな♪
それからその後に寄ったお店でバスセットとアロマランプも買ってみた。
両手に紙袋を持って歩くなんて…
何だかちょっとヒロインみたいだ。
お給料、普段使っていなくって良かった。
一生懸命働いたお金で自分へのご褒美を買う。
単純かもしれないけどすごく素敵なことなんだって、初めてそう思った。
だって私、何かいまとっても楽しい♪
─ガチャ♪
「ただいま〜!サボン、ただいまっ♪」
「おかえり、エリー♪楽しかった?」
「うん!まぁ…ね♪」
「よかった!」
帰って来てから眠りにつくまでの間ずっと、私はサボンに今日あったことをひたすら話していた。
おやすみの言葉と一緒にサボンは言った。
「最高にラブリーな日曜日になってよかったね。これで今夜は微笑みながら眠れるね♪」
「え?微笑みながら…?」
「うん!眠る瞬間は素敵なことを想い出して眠るの。そうしたら夜中優しい表情で眠れるから、必然的に朝も素敵な表情〜♪」
「なるほど…」
確か何かの記事で昔読んだことがある。
眠る時に嫌なことや難しいことを考えて眠ると、そのまま眉間にしわや怖い顔になってしまうって。
私がよく無表情だとか覇気がないなんて言われる理由が少し理解った気がした。
「エリー、おやすみなさい♪」
出窓のサボンに月の光りがあたって何だか少しロマンティック。
私はベッドに横になりサボンを見つめた。
「うん。おやすみ、サボン。」
そうして瞳を閉じてそっと眠りについた。
優しく微笑みながら…