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Lovely14..女の子じゃなくなる夜Ⅱ。

あぁ…

私…

とっても幸せ。






大好きな平山さんの暖かい腕の中で、幸せすぎてこのままとろけてしまいそう…






「…矢田さん!?大丈夫…っ?」






お酒と夜景と恋する魔力にやられて、私はそのまま気を失ってしまった。






ぼんやりと映る平山さんの心配そうな表情と、微かに聞こえる私を呼ぶ甘くて低い平山さんの声…






──






「……っ??!」





目を覚ますと見知らぬ部屋のベッドの上だった。






スーツのジャケットを脱いで青いシャツ姿の平山さんが、ソファーに深く腰かけている。






目覚めた私に気付いたのか平山さんの耳がぴくっと動いた。






…ちょっと可愛い。






「あ…起きた?気分はどう?」






平山さんが私を見つめている。






平山さんの家…

平山さんの部屋…

平山さんのベッドの上…!






私はようやくこの衝撃の展開を理解した。







「私…とんでもない失礼なことを…ごめんなさいっ!」






平山さんはいつにもましてにこにこしている。






「あのさ…それはふつう、男の方が女の子に言うセリフなんじゃない?」






「え…っ?え…っと、」






平山さんはカップに入った温かいコーヒーを私の手に持たせてくれた。






「部屋に連れ込んだりしてどういうつもり…!?とかって、言うんじゃない?こういう状況(とき)、女の子って。」






「はぁ〜…そうですよね。たぶん。」






平山さんの優しいトーンに安心したのか少し落ちついてきて、私はコーヒーに口づけた。






「温かい…っ。」






平山さんは優しく微笑んだあと、またソファーに戻って腰かけた。






…後ろ姿もたまらなく、好き。






平山さんの広い背中にぼんやりと見とれながら、私の口から熱い想いがこぼれ落ちてく…






「…私は…連れ込んでもらえて、とても幸せです。」






ソファーの背に手を掛けて、平山さんは驚いた表情で振り向いた。






「今夜は…とっておきの勝負の夜だったんです。だから私…」






「…勝負って、何の?」






「私との、です…」






すると平山さんはおもむろに立ち上がった。






「それで…勝負はついたの?」






「…まだ。これからです。だって夜はまだ始まったばかりでしょ…?」






「んん…っ。」






口元に手をやって平山さんは軽く咳払いをした。






「…。何だか今日の矢田さんはずいぶんと大胆だね!参ったなぁ…」






平山さんが照れてる…?






「平山さん…エリーから"矢田さん"に戻ってる。」






私は髪の毛に指を絡めながら彼に要求した。






相変わらず平山さんは照れた表情で立っている。

頭をぽりぽりしながら…






「はい。気をつけます…ふぅ〜…」






平山さんは何故だか急に深呼吸をしてみせた。






「平山さん…?」






あ…私の大好きな癖。






「…何だか調子が狂うな。」






そう言って頬を赤らめて微笑む平山さんを見ていたら、もうたまらなくなって…






「今夜は…今夜は帰りたくないっ!…です。」






「……。」





「……っ。」






「…耳まで真っ赤っか!」





まるで熟れたりんごみたいだと、私を見つめて平山さんは笑った。






「もぉ〜!笑いすぎです…っ!平山さん〜!」






…いじわるっ。






「んん…」






しばらく二人で笑い合ったあと平山さんは私のいるベッドのところまでやって来て、静かに腰を下ろした。






「平山さん…」






「新でいいよ…」






優しくそっと、私の髪に指を絡めてくる。






「平山さ…新の指…好きっ。」






細くて長い綺麗な指。







「俺はエリーの髪が好きだな…柔らかくて気持ち良い。」






髪の間からちょこんとのぞく耳に、平山さんの指がふっと触れる。






熱く照った耳に少し冷たい彼の指があたって、たまらなく気持ちいい…っ。







「エリー…愛してる。」








そうして私はこの夜、"女の子"からとびっきりの彼の"女"になった。

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