Lovely11..甘〜い日曜日Ⅱ。
夕陽がガラスのビルに映って何だかすごく綺麗だ。
街を行く人たちがみんな嬉しそうで、クリスマスのために着飾った街並みはキラキラしている。
まるで本当に月9のラブストーリー。
愛しい彼の迎えを待つ私は、素敵なヒロイン?
なんちゃって…!
きゃ〜っ!
平山さんの迎えを待つ私は会社の近くのロータリーに一人きり立っている。
どうしてもにやけてしまう。
今日が休日で本当によかった!
─バタンっ!
「…矢田さんっ!」
「あっ!平山さん…っ!お疲れさまです。」
ダークグレーのニットに深緑色のパンツ姿。
私服もお洒落だなぁ。
「お疲れさま。…大丈夫?(笑)何か楽しいことでも考えてたの?」
「え…っ!?私何か変、でしたか…?!」
いつもみたいに優しく微笑む平山さん。
「にこにこ…いや、にやにやしてたかな。ちょっと怪しい子っぽかった!」
「もぉ〜!恥ずかしい〜…忘れてくださいっ!」
「あはは〜!うん、忘れた!よし、行こう!」
平山さんは止めてある車の方へ歩いて行く。
今日って車なんだ!
助手席…
私なんかが平山さんの助手席に座ってしまってもいいのかな。
そんなことを考えながら下を向いてもじもじしていると…
「どうぞ♪エリーさん。」
平山さんが助手席のドアを開けて手招きをしてくれている。
まるでお姫様みたい!
…ってそんなことよりも、名前…!
今エリーって!!!
「ありがとうございますっ。失礼します…」
…!!?
「トイ〜!」
後ろの席の可愛いわんちゃんBOXからちょこんとトイが顔を出している。
「家の近くにドッグカフェがあるらしくてさ!ふつうに人間が食べても美味しい料理のお店らしいから…行ってみない?」
「はい〜!わぁ〜!楽しみだなぁ♪」
そのお店に着くまでの少しの間だけ、素敵なドライブデートの時間。
運転中の平山さんの横顔…
素敵だなぁ。
格好良いなぁ。
「んん…っ。そんなにがっつり見つめられると運転しづらい、です(笑)」
「…!ご、ごめんなさいっ。」
「い〜え。」
もう…
また素敵な癖だ。
ずるい、ずるい、ずるい!
私は景色の方に視線を移した。
だけど右側が熱い。
きっと右半分だけ赤く照っている、絶対に。
急に黙りこんだ私に優しい問いかけが降ってくる。
「矢田さんは自分の名前って好き?」
思わず体ごと右に向けてしまった!
私と平山さんの初めての会話は私の"名前"だったんだ。
新入社員として入社して一ヶ月くらい経った頃…
──一年半前の春。
「矢田エリー、さん?」
「え?あっ…!」
落としてしまった社員証を拾ってくれたのが、平山さんだったのだ。
「はい、これ。」
「あ、ありがとうございます!」
「い〜え。」
この人…
素敵な微笑み方だなぁ。
「素敵な名前だね。」
「え?名前…?」
「"矢田エリー"とっても可愛らしい!」
──
「昔は嫌いでした!でも今は…」
「今は?」
「嫌い…ではないです。」
平山さんが口にする"エリー"はいつだって最高に甘くて素敵に聞こえてしまうんだもの。
「そっか。良かった!俺は好きだよ。すごく可愛らしい名前で素敵だと思う。」
「ありがとうございます。」
その後ドッグカフェに着いて、トイと平山さんと私で食事を楽しんだ。
なんて素敵な空間なのだろう!
帰り道。
桜木町の馬車道やレンガ道を少しだけ散歩した。
平山さんはリードを右手に持ってゆっくり歩いている。
ライトアップされた横浜の景色がたまらなくロマンティックだ。
平山さんはいつもみたく少し下を向きながら、優しく微笑んだ。
今日は何だかいつもよりも甘〜い微笑み。
平山さんは自然に、そっと、左手を差しだした。
「…っ。」
"エリー、恥ずかしがらずにそのまま右手を差しだしなさい!"
一瞬サボンの声が聞こえた、ような気がした。
「…っ!」
私はきゅっと平山さんの左手を握りしめた。
温かい。
暖かい。
ぎゅ〜っと、平山さんも、私の右手を握り返してくれた。
甘くて素敵な空間。
甘い甘〜い、そんな素敵な日曜日。