王子…?
「血月…どうしよう…」
「どうしたの?霧紗」
「この世界の王子が、この世界から逃げてしまったの…」
「嘘!」
「ほんと…だからね、血月にその王子を探して、連れて帰ってほしいの!」
「いいけど…どこの世界にいるかは…」
「人間界よ。血月、人間界に行ってみたかったみたいだから、丁度いいかと思って…」
「その仕事、喜んで受ける!」
「じゃあ、頼むね。」
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「おなかすいた…最近の「人間」ってあまり美味しくないから腹足しにもなんない…。」
人間界に来れたのは嬉しいけど…正直言って生活しづらい……
フワっ
風が吹くと同時に甘い香りが漂ってくる。
「…久しぶり…美味しそう。」
僕が放った言葉は、また吹いた風の音に紛れて誰も聞こえなかった。
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香りだけを頼りに美味しそうな人間の元へと行く。
その香りは、建物からする。
「この中か。広いな…」
音をたてないように中へ入って本格的に「人間」を探す。
「(ん?香りが近づいてはいるが、人の気配がしない…)」
「任務までなにすっかな。」
突然聞こえる声に驚いて、足音を立ててしまった。
「!! そこにいる奴、出てきなよ。」
ティアラをのせた子が戦闘体制に入って言う。
「(…あの王子はティアラなんて乗せてたっけ?…)」
「いつまで隠れるつもり?」
…殺気を放ってるな…おとなしく姿を現すべきか…
「僕をどうするつもりだ?」
「んー。敵っぽいから殺す?」
「なんで殺されなきゃいけないの?」
「だって、ここヴァリアーだぜ?一般人が気配まで消して来るようなとこじゃねーし」
「何それ?」
「ここが何処か知らねーの?」
「知らないし、関係無い。」
「じゃあ何で此処に来たんだよ。」
「そりゃあ、食事しに」
「はっ、アンタにあげる飯なんてないし♪」
「人間ごときの飯を貰おう、なんて思わないね。あんただけで十分。」
「おまえも人間じゃん」
「俺は吸血鬼なの。」
「!?」
「って訳で血を頂戴ね?」
そういってティアラをのせた子の首に噛みつこうとしたけど…
人の気配がする…見られてる?
「ねぇ、誰?さっきからそこで見てるんでしょ。」
「!!」
「早くしないとこの子、僕の餌になるよ?」
「…ミーは別に堕王子の事はどうでも良いんですけど、ボスが呼んでますんでー」
「へぇ、で、この子を助けに来た。と。」
「まあ結果的にそうなりますかねー」
「(クスッ でも、遅いかな?」
ガブッ
「!!…っ!痛いn」
「静かにしてくんない?折角生かしてあげようと思ったのに、殺すよ?(まあ、僕の種族の掟で殺すなんてできないけど。)」
「「…」」
「そう。それでいい。(大体これで黙ってくれるんだよね。)」
「美味しかった。生かしておくことにするよ。
でも、一つ聞いて良いかな?」
「……?」
「何で君はどの人間よりも美味しいの?」
「…は?」
「君の血はそこら辺の人間と違い、特別に美味しかった。…吸血鬼じゃないの…?」
ポンッ
「先輩って吸血鬼だったんですかー。あ、これは報告しないといけないD」
グサッ
「…先輩ー。痛いですー。」
「テメェは黙ってろ
で、ハッキリ言っとくが、俺は吸血鬼じゃねえ。普通に王子なんだよ。」
「…王子…?(やっぱりあの方?…でも「吸血鬼じゃない」って…)」
「そ。俺、王子♪」
「…(あの方法を試してみるか。)」
「どうした?」
「…何でもない。それより、記憶を消させてもらうね――」
今更なんですけどー、「血月」が主人公ちゃんです。ハイ。
言うの遅くてすみません(泣