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第1話 リースという少女

この世界は魔法の才能によって決まる。

魔法は生活するにあたって欠かせないものであり、料理、洗濯、掃除なにをするにしても魔法が強く結びついている。

そんな世界だからこそ魔法を上手く使えないものは欠陥持ちとして扱われ皆から蔑まれる。


そして私もそんな欠陥持ちの一人である。


主に魔法を上手く扱えない原因には2種類存在する。そもそもとして魔法を扱う魔力が足りていないこと、そしてもうひとつは魔力の出力が低いことだ。


私の場合は後者である。ただこれに関して言えば魔力出力には個人差があり低いだけでは欠陥持ちではないのだけど。ただ私の魔力出力はありえないほど低いのだ。


魔法を発現させるのに他の人よりもより多くの時間を要する。皆が一瞬で発現させるようなものでも私が発現させようとすると10分以上魔力を込め続けてやっと発現する。私はそんな欠陥を抱えて産まれてきた。


といっても魔力量に関して言えばそんなに少なくはない。ただ魔法を上手く発現できた試しがなく連発できないことからどれくらいあるのかは全然分からないが。


それでも私は魔法が嫌いになれなかった。魔法は自分の手で火を起こす事ができる。なにも燃やすものなど必要なく炎を掌に発現させることができる。水や風、そして地を操ることだってできる。そんな奇跡とも等しいような行為を小さい頃からいつだって目の当たりにしてきた。


そして気がつけば私は魔法の虜になっていた。いつしか私もこんな風に魔法を発現させてみたい。魔法を発現させ自由にこの世界を生きてみたいとそう願っていた。


だけど蓋を開けてみればこの世は私の願いには答えてくれなかった。誰よりも恋焦がれた魔法は私には応えてくれなかった。でもだからといって私にとって魔法は諦めきれるようなものでは無かった。




ベットから出た私は歯を磨き、顔を洗って、寝巻きを脱いで黒を基調とした肩の露出しているドレスに袖を通し、自分の長い水色の髪を後頭部でゴムでまとめる。


これまでは魔法を発現すればするほど魔法が上達するのでは?と思い外で魔法を発現させて、特訓を行っていたのだが…

一向に状況が良くなる気がしなかった。がむしゃらに魔法を発現させるだけではダメだと思った私は対処法を考えようとしたのだが、魔法に対する知識が足りていないと気がついた。そして魔法についての知識を得るために1ヶ月くらい前からひたすら本を読んでいる…


のだが。


全然情報がない。ほぼ全くと言ってもいいほどに。魔法が人々に与えられてからもう1300年が経とうとしているのに術式に対する研究がなされていない。先人たちはこの1300年もの間何をしていたのだろうか。全くもって理解できない。と言っても昔の人が悪い訳では無いと思う。


それもこれもきっとあの魔導教会のせいだろう。魔導教会は術式や魔法使い達を管理している組織なのだが、魔法は神からの祝福だからといって術式を弄ることを禁じてしまった。せっかくの魔法への改良を神への冒涜だとかなんとかいってその研究成果を燃やしてしまったに違いない。ほんとうにあの神狂いの連中は!別に神は術式を弄っちゃいけないなんてことは言っていないのに。


そんなことを考えているとドアの向こうから声がした。


「リース、入るよー」


優しい声で私の名前を呼び、ドアをノックしている。


「どうぞ。」


そんな少女を自分の部屋に通すと私の部屋を見て怒り出した。


「あーー!また散らかしてる!昨日掃除したばっかりなのに!それ借りてきた本なんでしょ?床に置いたままにしちゃだめでしょ。」

「私は自分の部屋の何処に何があるかちゃんと把握してるの、逆に位置を変えられると困る。あとアリア、魔法の研究手伝って、疲れたから。」

「はいはい、朝ごはんを食べてからね。」

「分かった、私は研究を続けるから食べさせて。」

「もー、またなの?ご飯の時くらい研究をやめてよー!リースのやりたいことなのは分かるけど!流石にお行儀が悪いよ?」


アリアは狼の獣人であり私の唯一の友達で、私のことをよく世話してくれている。小さい頃から孤児院で育ってきた私は、周りから魔法を扱えない欠陥品として輪に入れて貰えることはなくいつも1人で過ごしていた。別に悲しいとか寂しいとかそういうことを思ったことは無い。だけどアリアは欠陥持ちの私に話しかけてくれるようなお節介である。そのせいで彼女は私同様孤児院の子達からは避けられている。


私も流石に彼女が私のせいで周りの子から避けられているのは耐えられず本人に優しくしなくて大丈夫だと伝えたのだけど。彼女には「別に私がしたくてしたことだからいいの!」と言われてしまった。


今ではこの生活に慣れているのか私の世話かそれ以外の時間は鍛錬をしている。魔法で全てが決まる世界なのに魔法ではなく剣の鍛錬を彼女はしていた。彼女も彼女で欠陥持ちほどではないが魔法の扱いに長けてるとは言えなかった。なぜなら獣人は魔力量は少なく、種族の平均から見ても彼女の魔力量は少ない。魔法を発現できる回数も1日に2回それも時間を空けてやっとだ。その代わり身体能力が凄く高い。だから彼女は魔法を諦め剣を振っている。私には魔法を諦めることは理解ができなかったけど、彼女がしたいことだと言うのだから私は止めなかった。


「ねぇ、りーーすぅ!私にはさっぱり分からないんだけど。術式を見比べるって言ってもぜーんぶおんなじに見えるよ?」

「何言ってるの全然違うでしょ?ほら右上の方、術式の形が少し違う。」


私は自分のノートに描かれている火属性の第一階級魔法と第二階級魔法の術式を指さして言った。この術式はアリアに何度も頼んで発現させたのを見て描いたものだ。完璧とまでは行かないが何度も何度もお願いして描いたのだから正確に描けているはず。だけどアリアの魔力量では第三階級魔法は扱えず術式が途中までしか発現しない。これでは正確とは言えない。完全でない術式と完全な術式では違いが生まれてしまう可能性だってある。だからとりあえず完全な発現に成功している第二階級までなのだ。それにしてもアリアは術式の出ている時間が一瞬すぎて描くのが大変だった。


第一階級魔法の右上にある三角形の模様、これが第二階級魔法ではこの模様が増えている。これは全属性で共通なのだろう。水、風、地属性の第一階級魔法と第二階級魔法でも同じ違いがあった。


「えー?うーん、私には良く分からないよ。ぜーーんぶ一緒に見えるし…」

「全部一緒だったら全部同じ魔法が発現するはず。でも同じ様に見えて少しづつ違うから。」

「確かにそうかも!はい、あーん」


そうやって話しながらもアリアは私の口にスープを運んでいる。今日の朝ご飯はオニオンスープらしい。1口サイズのベーコンととろとろな玉ねぎが美味しい。


「アリア、もう一口」

「はいはい、お昼は自分で食べてね。私お昼は外で鍛錬して外で食べるからね」

「む、仕方がない。次のご飯は夜までお預け。」

「ねぇリース?私と剣術の稽古がそんなにしたいならそう言ってくれればいいのに。」


うっ、こうなったアリアは怖い。第一私には剣を持てるような筋肉がついていない。ちょっと動いただけで息切れしてしまう。だというのにアリアは鬼か何かなのだろうか。


「アリアは私を殺す気?鬼、悪魔」

「いやいや!リースがちゃんとお昼ご飯を食べればいいだけだからね!?ただでさえ少食で体も凄く細いのに、食べなかったら倒れちゃうでしょ!」

「確かに体力はひつよ…」

「そうでしょ!しっかり体力を付けてリースも私と一緒に…」

「それはいや」

「そんなにキッパリ断らなくてもいいじゃない!」


私はそんな泣きついてくるアリアを横目に朝ごはんを食べ進める。


「私だって、リースといっしょに…」

「アリアどうかした?」

「んーん、なんでもない!ほら早く研究をしないと時間が無くなっちゃうよ!」

「それは困る。早く食べて」

「それは私のセリフなんだけど!?」


そんなやり取りをしながら私達は朝ごはんを食べ終えた。そしてまたノートを開き描かれた術式を凝視し分かったことを鉛筆で書いていく。アリアは私の横で真剣な目で私を見ているのだが、ずっと見ているだけで楽しいのだろうか。そんなことを考えているのアリアが口を開いた。


「ねぇ、リース?私も魔法剣士みたいに魔法を使いながら剣で戦ったりできないかな?」


魔法剣士、魔法を扱いながら剣術にも長けている存在。基本的にこの世界では強力な階級の魔法でねじ伏せた方が強いとされているが、近接戦闘を剣でこなすことにより魔力量が相手より劣っていても戦況をひっくり返すことができる存在。だけど剣と魔法の両方に意識を割かなければならない分、片方だけで戦闘を行うのと比べて遥かに難しい。それに…


「アリアの魔力量じゃ第二階級魔法を1回発現させるのが限界だから使いながら戦闘を継続するっていうのは厳しい。」


そんな私の言葉に見てわかるくらい落ち込むアリア。耳が垂れていて可愛いが流石に可哀想なのでフォローを入れておこう。


「でも使い所によってはその1回の魔法で相手を崩すことができる。相手がただの剣士だと思ってた相手から高度な魔法が飛んできたらびっくりするでしょ。」

「確かに?でも私は剣に炎を纏ってビューンって敵を一掃みたいな?そんなのをやってみたいんだよね!ねぇかっこよくない!?」

「確かに良いアイデアだし、凄く強そうだけどそんな術式はないよアリア。禁忌でも犯すつもり?」

「違う違う!ただの妄想だよ!ほらかっこいいなーって」

「そんな術式はないけれど、第一階級魔法を手ではなく剣に発現させることができれば可能かも。そのかわり維持できる時間と火力に関しては自分で調節しなきゃいけないから。全部打ち切っちゃうアリアでは無理。」

「そんな事言わないでよー。私だっていつも抑えなきゃ抑えなきゃーって思いながら発現させてるんだよ?でもなんか魔力が一気に流れ込んじゃって。」

「いつ聞いてもおかしな話、私も第一階級魔法でその火力はアリアでしか見たことがない。」


そんなことを言っているともう気づけばお昼になっていて、アリアの鍛錬の時間になっていた。アリアは自分の荷物も剣を持って立ち上がった。


「じゃあ私はそろそろ鍛錬の時間だから。研究は程々にね、あとちゃんとお昼ご飯は食べてね!シスターさんにきちんと言って持って来させるからね!」

「わかった、今日はしっかり食べる。」


私は言葉を誤ったらしい。アリアにめちゃくちゃ睨まれている。これ以上怒らせると後が怖いので仕方なく折れるとしよう。


「今日も食べます…」

「よろしい、じゃあ夜までには戻るから!」

「うん、行ってらっしゃい。」


そうしてアリアは部屋を出ていった。静かになった部屋で一人私はまた自身のノートと向き合い始めるのだった。


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