Drop.029『 The SUN:U〈Ⅱ〉』【4】
そうして、すっかりと法雨に笑顔が戻ったところで、雷はそんな彼を優しく抱き寄せると、またひとつ――、柔らかに口付けた。
✦
それから――、しばらくと心地よい湯の温もりに存分に浸った二人は、せっかく温めた身体が冷えてしまう前にと、手早く寝支度をしては、暖めておいた寝室へと向かった。
そうして、法雨と雷は、共にその暖かな寝室へと足を踏み入れた――のだが、法雨はそこで、何故か難儀そうにして言った。
「ううん……。なんだか……、――お風呂に入ったら、少し目が冴えちゃったわね……」
それに穏やかに笑うと、ベッドを軽く整えていた雷は、ひとつ手を止め、未だドアの前に佇む法雨に歩み寄って言う。
「それも今だけだよ。――暗くして目さえ閉じてしまえばすぐに眠れるさ。――身体もかなり疲れてるはずだし、過信せずに寝てしまった方がいいよ」
すると法雨は、そんな雷の言葉にも、悩み鳴いて応じる。
「う~ん……」
雷は、その法雨に何故だか愛らしさを感じ、その頬を撫でては伺う様にして言う。
「おや。――君が駄々をこねるなんて、珍しい事もあるものだね」
そんな雷をしばし見上げるようにした法雨は、ぽつりと零す。
「“溜まってる”のよ……」
雷は、それに眉と耳を上げては、毛艶の良い尾をやんわり揺らがすと――、ひとつ間を置いてから問うた。
「“疲れ”が?」
法雨は、そんな雷の“悪戯”に、じゃれるようにして言う。
「もう。――意地悪ね」
そんな法雨が、言いながら色を含ませた視線を返すと、それを受け止めた雷は、手触りのよいレモン色を弄びながら言う。
「まぁ、“さっき”はちゃんと休ませてあげられなかったから。――君の身体にも、無理はさせたくないんだよ」
すると、そんな雷にゆっくりと瞬いた法雨は、視線を絡めたまま笑んでは、上目遣いに紡ぐ。
「ふふ。それなら安心して? ――アタシの身体も、“さっき”のだけじゃ癒され足りないって言ってるか、ら。――でも……、そんなコト言って……。――実は、雷さんがお疲れだったりするかしら……? ――いくら我儘なアタシでも、お疲れの雷さんにまで無理をさせたくはないわ。――だから、お疲れなら、そう言って? ――そうしたら、アタシも、アタシの身体も、きっと“良い子”に出来るから……」
そんな法雨に、やや目を細めた雷は、ふと視線のみを中空にやると、
「ううん……それがね……」
と思案するようにした。
だが、すぐに法雨に視線を戻すと、今度は悪戯っぽく笑み、
「俺も、疲れはまったく――なんだ。――困った事に」
と続けた。
法雨はそれに、ふふと楽しげに笑うと、次いで、するりと雷の腰に腕を回すなり、その身を寄せるようにして言った。
「それは違うわ。雷さん。――それを言うなら、“幸いなコトに”――よ」
そして、腰に回した手で、雷のワイシャツの背をつんと引くと、法雨は甘い声で強請る。




