Drop.029『 The SUN:U〈Ⅱ〉』【3】
「ねぇ、雷さん。本当に? 本当に“大丈夫”なの? それは、アタシの事を想って、我慢して言ってくれてるんじゃないの?」
――と、云うのも、雷と想いを通わせてから一年以上と経つにも関わらず、法雨は、雷と喧嘩らしい事をする機会が寸秒たりともなかったのだ。
それゆえ、法雨は――、雷が法雨のために我慢を重ねてくれているのではないかと案じる事が度々と増えていたのであった。
そして、そのような経緯があり、此度も、法雨は雷の本心を探ったわけなのだが――、当の雷は、やはり一滴の我儘すらも零してはくれなかった。
法雨は、その事もあり、酷く不安げに雷を見つめては返答を待つ――が、対する雷は、やはり穏やかに笑むと、その頬を優しく撫でては言う。
「本当さ。――それに、君はいつだって、俺に我慢なんてさせてくれないだろう。――だから、安心して大丈夫だよ」
そして、そう言いながら、法雨とそっと額を合わせると、雷は続ける。
「俺はね、君が、その時に居たい場所で、その時にしたい事を、思う存分楽しんでいる姿が好きなんだ。――だから、今の在り方が幸せなのなら、それを変える必要はないよ。――それに、現に俺は、特別な日だけじゃなく、毎日、そんな素敵な君の姿をこの目で見ながら過ごせているし、イヴも、クリスマスも、こうして君と一緒に居られてるんだ。――だから、今のままで、俺は十分満たされてるよ。――有難う」
そんな雷が紡ぎ終えると、法雨は、頬に添えられた彼の手に自身の手を重ねて言う。
「それなら……いいのだけれど……。――でも、本当に、――こんな我儘に過ごしているのに、変わらずに愛してもらえるなんて……。幸せすぎて、いつか罰が当たりそうだわ……」
雷は――、そんな法雨が苦笑すると、ふ、と笑み、その綻びに軽く口付けては、触れ合わせたまま紡ぐ。
「罰なんか当たらないさ。――君はこれまで、数えきれないほどの人々に喜びを与えてきたし、――そんな君に救われたと言うほどの人も少なくないだろう。――だから君が、“今”を幸せだと感じているなら、それは、君の過去の行いに対する報酬みたいなものだ。――だから、安心して受け取っていいんだよ。――……と、言っても、――清算分としては、まだ足りていないだろうけどね」
法雨は、そんな雷の言葉にようやっと肩の力を抜くと、そっと口付け返しては、くすぐったそうに笑う。
「ふふ。じゃあ、そうだとしたら、――まだ当たってもない罰に怯えてる場合じゃないわね」
雷は、その法雨に、片眉を上げながら悪戯っぽく言う。
「そうとも。神様からの報酬なんだから、取り逃そうものなら、それこそ罰が当たるかもしれないよ」
法雨は、それにわざとらしく驚いては言った。
「まぁ、大変。――じゃあ、天に向けて大きな酒樽でも用意しておこうかしら」
そして――、そんな法雨の言葉を機に、ひとつ間を置いた二人は、それからしばし、楽しげに笑い合った。




