Drop.027『 The LOVERS:U〈Ⅱ〉』【4】
「法雨さんは――、幼い頃からずっと、一生懸命だったんだね」
「……え?」
その言葉に、すっかり俯いていた法雨が顔を上げ、問う様にして雷の瞳を見返すと、雷は微笑んで紡ぐ。
「俺はまだ、法雨さんと知り合ってから長くはない身だけど、――そんな俺でも、法雨さんは常に一生懸命で努力家な人だと感じていたんだ。――でも、それもそのはずだ。――何せ君は、幼い頃からずっと、一生懸命で努力家だったんだから」
「――………………」
「そんな努力家な君の事だ。――例え、運命の人と幸せになるために、幾度となく重ねた努力が、幾度となく報われなくても、――それでも法雨さんは、その憧れを叶えるために、決して諦めず、――時には自分にすら厳しくしながら、ずっと、ずっと、――努力をし続けたんじゃないのかな」
法雨は、そうして紡がれた言葉に驚きながらも、胸が締まる様な感覚を覚え、思わず雷から目を反らすと、瞳を揺らがせてはひとつふたつと瞬きをした。
若き頃の法雨が、憧れを叶えるため、沢山の恋を重ねるようになってから、どのような日々を過ごしたかと云えば――、それはまさに、雷の言葉通りであった。
例え、幾度となく努力が実らずとも、その原因はすべて自分の努力不足のせいとした。
それゆえ、法雨は、努力が実らぬ度に、さらなる努力を重ねては、愛する母の様になるため――、愛する両親が授けてくれたこの命に恥じぬような人生を送るため――、誰よりも幸せになれるよう――、愛する家族の様に誰もが慕ってくれる人になれるよう――、幾度となく自身に厳しくあたりながら、ひたすらに努力をし続けた。
しかし、その一生懸命な努力の果てに運命から与えられたのは、――あの“最低最悪なオオカミとの出遭い”であった。
だからこそ、法雨は、その悪しきオオカミからの解放をもって――、永く永く抱き続けてきた、心からの憧れをも、記憶の彼方に捨てたのだ――。
だが、もしかすれば、幾度となく重ねようとも報われなかった努力も――、幾度となく重ねさせられた落胆も――、強い憧れをも捨てさせるほどに悍ましい経験も――、二度と味わいたくないと願うほどの酷く深い絶望も――、そのすべては、無駄ではなかったのかもしれない――。
無論、経験させられた残酷な道筋を思えば、運命に文句を言ってやりたい気持ちは決して揺るがぬが――、もしかすれば、そうして、憧れや恋や希望――、そのすべての光を一度捨てるに至る事もまた、法雨が望んだ未来に至るために必要な道筋であったのかもしれない――。
法雨が――、最愛のオオカミと出逢い――、
「俺はね、そんな君の酷く努力家なところを心配に想う時もあるけれど、でも、それと同時に、とても魅力的なところだとも想っているんだ。――君はきっと、そうして努力する度に、より魅力的に、より美しくなっていく人だろうからね。――その証拠に、君はもう既にこんなにも綺麗で魅力的だ。――本当に、沢山頑張ったんだね」
その運命のオオカミと――、幸せをになれるように――。
「もう……、駄目よ。雷さん。――今、そんな事言ったら……」
法雨を護るために在る――その愛しい手で、顔を上げるよう優しく促され、それに応じた法雨は、海色を見つめては、苦笑して紡ぐ。




