Drop.025『 The STAR:U〈Ⅳ〉』【3】
「いえね。――せっかく、雷さんみたいな素敵な方とのコトでしたのに、――アタシったら、今回も結局、告白の当日にベッドに入ってしまったなぁって」
「あぁ……」
そのしなやかな尾をシーツの上で上機嫌に泳がせ、小ぶりな耳をはたりはたりと跳ねさせた法雨が苦笑して言うと、反対に、大ぶりな尖り耳を下げた雷は、懺悔の色を滲ませた声で言った。
「情けないです……」
そうして、結局は、重ねに重ねた自制の念など微塵も役に立たなかった――不甲斐ない自身の理性に気落ちしてしまったらしい雷に、法雨は慌てて言う。
「ヤ、ヤダ。――違いますったら。――別にアタシは、落ち込んでるとか、雷さんを責めてるわけじゃないんですよ。――だから、そんな気負わないでくださいな。――それに、その……、――ベッドにお誘いしたのはアタシみたいなものですし、――むしろ、あの時、ちゃんと“段階”を踏みましょうなんて言われていたら……、――それこそ、自分のはしたなさを恥じて、酷く落ち込んでしまったと思いますから……」
雷は、そう慰めを与えてくれる法雨に苦笑すると、そのレモン色の艶やかな髪をまたひとつ撫でては言った。
「そうでしたら、良いのですが……。――本当は、法雨さんのお気持ちをお聞かせ頂いて、それがどのようなお返事でも、それに礼さえお伝え出来れば十分と、思っていたはずなのですが……。――一度法雨さんをこの腕の中に入れてしまっては、耐え切れるはずもありませんでした……」
そうして、素直に心情を吐露した雷に、法雨は嬉しそうに笑む。
「ふふ。――それは、アタシにとっては、とっても嬉しい褒め言葉ですわ。――雷さんは、ちょっと理性的過ぎますからね」
「ははは。――それも、昨夜までの印象となりそうですが」
そして、そう言った雷が苦笑すると、法雨は、
「大丈夫ですよ。――雷さんの理性は、きっと、“恋をしてしまった相手にだけ”弱くなるんだと思いますから」
と満足げに言い、また楽しげに笑った。
「ははは。なるほど。そうですね。――そうなのかもしれません」
そんな励ましに穏やかに笑った雷は、法雨の頬を優しく撫でながら、一音一音を丁寧に刻むようにして、その愛しい彼の名を呼んだ。
「法雨さん」
法雨は、優しく添えられた――その頼りがいのある大きな手に頬を寄せる様にし、雷を見つめると、幸せに満ちた声で応じた。
「はい……」
雷は、そんな法雨を愛おしげに見つめながら、続ける。
「これからは、何があっても、俺が貴方の事を護ります。――ですから、どうか……、――貴方が、俺の気持ちを嬉しく思ってくださる間は、――どうか……、――俺の傍に居てください」
そんな雷の言葉に、酷く幸せそうに眉根を寄せた法雨は、雷の手に自身の手を添えると、心からの笑顔で言った。
「はい。――もちろんです。――どうか、――ずっと、ずっと……、――雷さんのお傍に居させてくださいね」
そうして――、法雨から幸せが紡がれると、それに微笑んだ雷は、その逞しい腕で法雨を包み込むように優しく抱きしめ、言った。
「えぇ……。――法雨さんが望んでくださるなら、――いつまででも」
最愛の人も、その忘れがたい朝をも――、その身で護り抜き、ひとつの傷もつかぬように――、優しく――、強く――。
Next → Drop.026『 The LOVERS:U〈Ⅰ〉』




