Drop.024『 The STAR:U〈Ⅲ〉』【4】
今の法雨に、音を紡ぐことはまだ難しかったのだ。
だが、それでも法雨は、なんとしてでも、彼へ返事を贈りたかった。
そんな法雨は、一向に鎮まらない火照りのせいか、滲み始める視界の中に雷を捉え直し、ひとつ短く深呼吸をすると――、言葉でも、音でもない返事を、雷に贈った。
そうして――、不意に贈られた“返事”に少しばかり目を見開いた雷は、咄嗟に、右の手を床につき自身の身を支えると、残った左の腕では、法雨の身体を支え――、言った。
「……ほら……、やっぱり……。――法雨さんの方が心臓に悪いですよ……」
そんな雷の声を、これまでで最も近い距離で聴きながらしばし俯いた法雨は、初めて触れ合わせた口元をそっと隠すようにして、弱々しく言った。
「だって……、――声が出なかったから……」
雷は、そんな法雨に、また愛おしげに笑うと、そっと額を合わせるようにして言った。
「また、そんな可愛いらしい事を……」
法雨は、それに、すっかりと赤らんだ顔を上げ、熱で潤んだ瞳で雷を見つめると、懇願する様にして言った。
「これじゃ、駄目ですか……? ――今、雷さんへの気持ちを、言葉にしたら……、――アタシ……、多分……、失神します……」
雷は、その言葉にしばし眉を上げ、その大ぶりな漆黒の尾をはたりとさせると、楽しげに笑って言った。
「ははは。――それは、無理をさせてはいけませんね。――分かりました。――大丈夫です。――今ので、十分伝わりましたから」
「……よ、良かったです……」
そして、そんな雷に恩赦の“認印”を頂戴した法雨は、安堵した様子でそう言うと、その身をゆっくりと預けるようにしながら、雷の肩口に顔を埋めた。
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