Drop.021『 The EMPRESS:R〈Ⅲ〉』【3】
「………………」
「………………」
「………………。――あれ?」
その、やや縦に延ばされた“大”の字の型で登場した――怒りのずぶ濡れオオカミに対し、雷と法雨は、黙したまま視線を注いだ。
尾っぽまで水浸しオオカミは、その二人の視線に気付くと、縦長“大”のまま、眼前の光景を理解しきれぬ様子で言った。
「あ……、えっと……、――た……、ただいま、戻りました……」
そうして、その帰還の儀により、全員の思考が働き始めると、雷は言った。
「あ、あぁ。――おかえり。京君」
そして、なんともぎこちない儀礼が済んだところで、雷は、滝行帰りの京に労いのタオルを贈るべく、ソファから立ち上がっては言った。
「あぁ、とりあえず、濡れてる物はそこで全部脱いでしまいなさい。――今、タオルを持ってくるから」
京は、そんな雷に、慌てながら応じる。
「あっ、は、はい! ――手間かけてすいません! ――ありがとうございます!!」
そして、そう言うなり、京は、自身が纏っていたものをばさりばさりと大雑把に脱ぎ始めた――のだが、その様子に、思わず法雨の一喝が飛ぶ。
「ちょっと、京!! ――アンタ、脱ぐのはいいけど、もうちょっと丁寧に脱ぎなさい!! あと、そこで尻尾を振り回さないッ!! ――周りに飛ぶでしょう!!」
「あ、やべ……」
雷は、そんな法雨に“強き母”の如し頼り甲斐を感じながら、無言でその場を任せると、事務所の奥へと向かった。
京への苦笑と共に、その胸に、自身への苦笑を、密かに抱きながら――。
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